幻奏戦記 Ru/Li/Lu/Ra
〜るりにじ二周年記念“一枚絵でSSを書こう!”〜



僕がまだ小さな頃、お父さんに見せてもらった物がある。

それは一枚の写真。


昔々、お父さんとお母さんが出逢ったころに撮ったその写真は、いまでも僕の家に飾られている。




お父さんは日本人で、僕も日本人。
だけど僕の目は少しだけ青い。僕の髪は少しだけ茶色い。

それはお母さんの色。


お母さんは金色の髪に青い目の綺麗な人。
名前も違うから、きっと外国の人。


お母さんは歌がうまい。
町内会で何かがあると、みんなお母さんに歌ってと言う。
僕もお父さんも、お母さんの歌は大好き。


そう言えば、僕の家には不思議なものが沢山ある。

傷だらけの革のよろい、刃こぼれした大きなつるぎ、ぼろぼろのマント。
まるでゲームに出てくるみたいな物ばかり。

これは全部、お父さんの物。


僕がこの鎧を着れるぐらいに大きくなったら、その時はちゃんと着せてやる。と、お父さんは言っていた。
その時にマントも剣も持たせてやる、と。


変なものと言えば、お母さんも変なものを持っている。

すりきれた黒いチョーカー、くたびれた軍服みたいな服、お父さんのよりも細いつるぎ。
やっぱりゲームに出てくるような物だけど、お父さんのもお母さんのも、全部本物。






そうだ、君にも特別に見せてあげる。
僕のお母さんと、その友達が写ってる写真。
写真を撮ったのは、カメラ好きのお父さん。







右側がお母さんで、左側がお母さんの友達。
後ろにいるのは良くわからないけど、お父さんの大事なものの一つだったもの。

お母さんたちが着ているのは、昔いた軍隊の服。
うん。僕のお母さんは元・軍人さんなんだ。


え?
それじゃあ、僕のお父さんは従軍カメラマンだったのかって?

違うよ。
君にだから特別に教えてあげる。




僕のお父さんは“英雄”だったんだ。




僕もよく知らない。
だけど、この写真に写ってるロボットみたいなのを使って、悪い怪物を倒してたんだって。
怪物がいなくなった後は、戦争を起こそうとする人たちをこらしめていた、って。

なんで軍人なのに戦争を止めさせようとしたのかって?
うん。僕も不思議だった。
お父さんに聞いたんだけど、良い軍人と悪い軍人がいたみたい。
良い軍人の人は戦争を起こさないようにしたくて、悪い軍人の人は戦争がしたかったんだって。


この写真を撮ったのはいつかって?
うーん……僕も良くわからないんだ。
でも、僕が産まれる前に撮った写真なんだって。
まだお父さんとお母さんが結婚する前の写真。




え、君も変な写真を持ってるの?
見せて見せて!



























――――そう、わたしは識っている。

かの地よりかの地へと歸った者が居る。
かの地よりかの地へと赴いた者も居る。

帰還は不可能だと。誰もがそう言い、誰もがそう思った。
験す事無く、疑う事無く、抗う事無く。

術は常に在る。故に挑み戦う者は勝利する。


わたしは識っている。
この写真の事を。

ああ、あの少女は想いを遂げたのか。
現世へと歸り、己が半身と添い遂げたのか。

ならば良い。
この少年はやがて、母の故郷へと赴くだろう。
父の剣を携え、父の鎧を纏って。




わたしはふわりと笑うと、目の前の少年に写真を差し出した。

四角く切り取られた風景の中には――――――。