「なぁー、この武器どうするかな?」
 一人の少年が一緒にいる少女に訊ねる。
 「そんなこといわれても…」
 少女は困った顔で答える。
 「仕方ない、持っておくか…何かに使うかもしれないしな。」
 そう少年が言いふと横を見ると、ちょっと離れたところに絶対奏甲3体に囲まれ、剣
を突きつけられている外套を着てフードを被っている人物が見える。
 「なんだあれ?襲われてんのか?」
 少年はその状況を見て言う。
 「助けに行こうよ!」
 少女が少年に頼んだ。
 「はいはい、わかったよ。助けに行けばいいんだろ?」
 面倒くさそうにそう言うと、少年は自分の絶対奏甲に乗り込み走っていった。


第一部	『一人旅』 第三話 前編 『ハルフェア脱出…』

 「…ふぅ…、…何で…こん…なこと…になる…んでしょう…か。」
 そうため息をつきながら青年、春日 雷華はぼやいた、息も絶え絶えに…。
 「うるさいぞ!!てめーは俺らのエモノなんだよ!おとなしくしていやがれ!!」
 雷華を囲む絶対装甲の一つから声が発せられる。そう、『エモノ』とは「春日 雷華」
のことである。なぜこんなことになったのか?
雷華は回想した。

〜十分前〜
「ふっ、まさか食料がそこを尽きて行き倒れになるなんて誰が予想したんでしょう…」
雷華は倒れながらそうつぶやいた。倒れるのも仕方ない、最後に食事をしたのが二日前なのだから…。そこへ突如現れた三つの影の一つから声が発せられる。
「はっはっはっはっはー!!貴様の持ち物すべて渡してもらおうか!!」
そう声高々に言ったのは、三つのシャルUの中でもひたすら目立つシャーモンピンクの
機体からであるえらそうな口ぶりからしてリーダー格らしい。
そうして彼はどでかい剣を突きつけられたのである。
雷華も反撃したいのだが、空腹のためもはや一歩も動けないのである。
〜回想終了〜
 
 回想も終わり雷華が死を覚悟したとき…
 突如、鋭い金属音と共に盗賊のシャルUの内の一機が破壊された。
 「一対三は平等じゃないだろ?」
 破壊されたシャルUの影から漆黒のシャルVが現れて言い放つ。
 「な!?貴様何モンだ!!」
 シャーモンピンクの機体が言う。
 「お前らのような"バカ"に名乗る名はねぇよ。」
 きっぱりと漆黒のシャルVが更に言い放ち、二機目を撃破した。
 「なっ!?」
 驚くシャーモンピンクのシャルU。
 「後はお前だけだ。少しは楽しませろ、よ!」
 一気に漆黒のシャルVはカタナを切りつけながら言い放ち…あっさりと、本当にあっ
さりと一撃の下でシャーモンピンクのシャルUを破壊してしまった。
「え!?うそだろ?!おい!!シャ−モンピンクのカラーは見掛け倒しかよ!!ふざ
けんなー!!」
漆黒のシャルVはそうしばらく絶叫した。

〜一時間後〜

「ふぅ〜、助かりました。食事までいただいて申し訳ありません。」
頭を下げながら雷華が言う。
「いえ、どういたしまして。」
そう、少女は答えた直後、少女の隣にいた、少年が言う。
「情けない人だね。空腹で倒れていたら囲まれてただなんて…。」
「うっ、それを言われるときついですね。いろいろあったんですよ…。」
そう言いながら遠くを見つめる雷華に少年が聞く。
「ところで名前はなんていうんだ?」
「雷華、春日 雷華といいます。あなた方の名前は?」
雷華にそう聞かれ、少年の方が答える。
「俺は、ショウグ・S・ブラットっていう。でもってこっちが…」
そう少年、ショウグが答えて隣の少女を指差すと少女が
「私は、ムーンストーンといいます。」
と言った。
「ところでどこに行くつもりなんだ?」
「ルリルラに行こうと考えていますけど?」
「そうか、なら俺の絶対奏甲に乗せてってやろうか?」
「え?良いんですか?」
「良いもくそも無いだろ、ここから歩きで行ったら丸一日かかるぞ?」
「そうですよ。今から奏甲で行けば日が沈む前にはつけますよ。」
そういってくる二人に雷華は感謝しながら
「そうですか…、ではお言葉に甘えさせていただきます」

そうして何とかルリルラに着くことは出来たのだが…
「大変よ〜!!町の近くまで奇声蟲の群れが来てるわ〜!!」
 そう言いながら町人が走っていく。
 「な!?急ぎましょう、ショウグさん!早く退治しないと町が危険です!!」
 そう言うが早いか雷華が駆けていく。
 「わかってる!っておい、そんな慌てんなよ!!ムーンストーンは安全なとこにいて
  支援を頼む!」
 「わかった、気をつけてね!!」
 ショウグはそうムーンストーンと言葉を交わしてから雷華を慌てて奏甲で追いかける。
 「おい、雷華さん!生身でどうやって戦うんだよ!!」
「私なら大丈夫です!!それより、ショウグさんは町に入れないように退治してくだ
さい!!」
雷華はそう言うと奇声蟲の群れを回りこんで後ろの方に向かっていく。
 「あほか!!そんなことしたら…、くっ!仕方ない……ここから一歩も町には入れて
やんねーぞ!!」
ショウグは蟲の攻撃を撥ね返して叫んだ。
一方群れの裏に回りこんだ雷華は、一匹一匹を流れるような動作で確実に倒していった。

「……マジかよ……」
「凄いです……」
この二人が驚くのも無理はなかった奇声蟲の群れが来てから、わずか30分後には群れ
は全滅していた……おまけにその半数の10匹近くは雷華一人で倒していたからである。
その雷華は平然な顔をして言う。
「さて、宿をとりに行きましょうか。一緒に行きますよね?」
「あ、ああ……。その前に奏甲を置いてきたいんだがいいか?」
「そうですね……。それでは、さっさと置いてきましょう。ここは、温泉町なんですよね?私は、温泉好きなんですよね。」
 雷華は本当にうれしそうに言う。
「そういえばこの後、雷華さんはベグヴェームまで行くのか?」
雷華の話を聞いて苦笑しながらショウグが聞いた。
「ええ、そのつもりですよ。」
「そうか……、ならベグヴェームまで一緒に行こうか?どうせ俺たちも行くつもり
だったし。」
 「それはありがたいですね。それではお願いします。」
 そういって雷華は頭を下げた。
 「奏甲を使っていけば二日の道のりだから、歩くよりはましですよ。」
 ムーンストーンが言った。
辺りはすっかり暗くなっていた……。
その数時間後、温泉で気絶している雷華が目撃された。
そう、雷華は失念していたのである。温泉が今までのなごりから、『混浴』であることを…。雷華は女性が苦手であるということを……。
                           
第三話 中編につづく


やっちゃいましたー!!!Σ(−o−;)
上手くまとめられず、前・中・後編の三連に……。
おまけに、簓さんから借りているキャラも出てきてません。(泣
ですが転んでもただでは起きません…中編ではトラブルメーカーっぽいものを出したいと思います。
さて次回は学園編第二話か、一人旅の第三話中編をお送りする予定です。
さりげなく自分を追い込んでいるAkiraでした。

戻る