第一部	『一人旅』 第六話 『今日……』

春日雷華は絶対奏甲、シャルラッハロートVに乗って次の町へと向かっていた。
誰かの奏甲に乗せてもらっているのではなく、雷華が奏甲を動かしているのだ。
これには、先日の『お魚事件(風華命名)』が深く関係していた……

お魚事件にから数日たって、雷華は病院のベットで目覚め、事件の全貌を知った。
雷華が暴走した後、雷華により工房が全壊し町唯一の工房はその日消滅したというのだ。
工房長がその話を終えたあと、給料の代わりと言って震えながら渡してくれたのが、奏甲
を譲ると言うことが書かれた書類であった。何故、工房を壊した張本人にそのような物を
渡したのか?
答えは単純『殺されたくないから』雷華の暴走っぷりはそれほどまでに怖かったらしい。

と、いうような経緯で奏甲を手に入れることになったが、いかんせん歌姫の居ない彼には
ほとんど無意味。仕方なく、歌姫無しでもわずかな間、戦闘起動可能であるシャルVを
貰ったのだった。
移動が楽になったのは言うまでもなく。予定より早く、目的の町まで来ることができた。
それほど遠い町でもなかったので、奏甲は問題なく動ける。安心した雷華が、工房を捜
そうと辺りを見渡そうとしたその時……
ギシャァァァァァァァァァァァ!!
辺りに奇声蟲の声が響き渡った。
「な!?またですか!?」
雷華は驚く。
「初めての奏甲による戦闘ですか……。やるしかないですね」
気を取り直し。奏甲で撃退しようと奇声蟲の居る方へ雷華は奏甲を歩かせた。

そして、雷華はその奇声蟲の数を見て
「この数なら、私だけでも何とかなりそうですね……」
奇声蟲は、『衛兵種4匹』『貴族種1匹』の群れだったからだ。
「本当は刀のほうがよかったのですが……無い物ねだりをしても、しょうがありませんね」
そう言うと、シャルVのダビングシステムを起動させ、奏甲を戦闘起動にして腰にマウ
ントされていた、2本のショートソードを抜き去り両手に1本ずつ持って構える。
「それでは、先ずは頭を叩かせてもらいます!!」
そう言うが早いか、貴族種の前に居る衛兵種の間を素早くすり抜け。貴族種に肉薄し
両目をそれぞれのショートソードで突き視力を奪う。直後に、貴族種の攻撃により飛ん
できた前足を、その攻撃の勢いを利用して切り払う。すかさず、前足がなくなったこと
でできた隙間に入り首の外殻の隙間を突き切り裂く。あっさりと首が落ちた。わずか
数分で貴族種を落とした。しかし、雷華は気になっていた、攻撃の最中で何度か何かが
はじける音が聞こえたのだ。
「いったい何の音だったのでしょう……?」
ギィィィィィ!!
貴族種を倒されたことで混乱せずに残りの衛兵種が一気に向かってくる。
「な!?何故!?」
雷華は驚きよく見てみると、貴族種の中で一匹のみが後方に居る。
「まさか!?どう見ても衛兵種なのに他の衛兵種を統率している!?」
そうこうしている内に3匹の衛兵種がシャルVに迫ってくる。
「やるしかないですね」
そう言って再び両手のショートソードを構えようとしたその時、シャルVの両腕がすさ
まじい爆発音と共に壊れて動かなくなる。
「さっきの戦闘でもうだめになってしまったのですか!?」
更に、追い討ちをかける様に奏甲の動きが鈍くなる。
「ダビングシステムまで!?まだ、時間はあるはずですよ!?」
あっと言う間に格部分が壊れ始めた。
「こうなったら、外に出て……」
雷華が急いでハッチを空けようとしたその時
ドゴォォォォ!!
開く準備を始めたハッチに衛兵種が体当たりをする。そのため、遂にハッチも動かなく
なる。唯一使えるのはセンサーだけとなってしまう。
ギィィィィィ!!
再び、奇声蟲の声が聞こえる。
すると、コックピットに攻撃をせずにまるでもてあそぶかのように、奏甲の両手両足を
もぎ取っていく。
「なかなか、面白いことをしますね……。エモノの前で舌なめずりは禁物ですよ?……
とは言っても、この狭さでは刀は振れませんし……まずいですね」
ガギィィィィ
遂に両手足全てがもぎ取られ残すは胴体と頭部のみとなったシャルVを奇声蟲が囲んで
いく。
「いよいよ、最後ですか……?」
雷華の背中を冷たい汗が流れ、奇声蟲が一斉に襲い掛かろうとしたその時
ズガガガガガガガガ
突如銃声が鳴り響き視界から奇声蟲が消え去り、変わりに2体の奏甲が現れる。
1体は……
「1体は、マシンガンを構えてる……ブ、ブラオヴァッサァ!?ここは陸地なのに……」
雷華は微妙に振るえながら更に観察する。どうやら、そのブラオはよく見ると浮いて移
動をしている。
「すごい。確かにあれならば陸は問題ないですが……一体どうやって?」
そして、もう1体の方はシャルラッハロートWだが、よく見てみると
「ところどころ改造してある?」
そして、そのシャルWの肩の宝玉らしき物が輝きそれがシャルWの持っている剣に集中し
巨大な剣となり、それで奇声蟲は全てなぎ払われてしまう。
「凄い……ブラオで追い詰めて、あの剣で一閃するなんて……。もしかしたら!!」
そう雷華は言って、あの本を取り出す。すると、予想通り、カスタム機のページにあの
シャルWが新しく追加されている。そのページを読んでみると
「HoA……凄い。アークの増幅を繰り返して強大な力に変えるなんて……。こんな装置
もあったんですね……」
そうして雷華が驚いていると、2体の奏甲が近づいてくる。
雷華は読んでいた本をリュックにしまい
「何とか助かったみたいですね……」
そう言って、安心した。

「助けていただき、本当にありがとうございました」
奏甲のコックピットハッチをこじ開けてもらい出てきた雷華は、ぼろぼろに壊れもう二
度と動くことのないであろうシャルVの脇に立ち、そう言って深く頭を下げる。
「いや、気にするな。ところでおまえの歌姫は大丈夫なのか?」
20歳くらいの男性が雷華に尋ねてくる。
「私は歌姫がいないので……」
「ふむ……ここではなんだから。ちゃんとした場所でゆっくり話そう。いい店があるんだ
連れて行ってやる」
雷華の答えを聞いて男性は言った。

「お、温泉喫茶キャロル?」
雷華は着いた途端に思わず疑問の声をあげた。
「温泉を掘り当てたらしくてな。まぁ、中に入って話をしよう」
そう言って雷華を中に連れて行こうとしたとき
「あら、お客さん?」
和服に身を包んだ女性が馬に乗って現れる
「さっきの奇声蟲騒ぎで知り合ったんだ。これから、話を聞くために来て貰った」
男性が答える。
「それじゃあ、私もご一緒します」
そうして、総勢6名と1匹が顔を合わせた。
皆がそれぞれ席に着き雷華が切り出す。
「私の名前は、春日 雷華といいます。先ほどは助けていただき、ありがとうございま
した」
それに男性を初めとして答える。
「俺の名前は、カイゼル=ラウロッシュだ。さっきのことは礼には及ばん」
「ら、雷華さんですね。は、はじめまして。私は、サレナ=ブルームーンといいます。
カイゼル様の歌姫です」
「雷華様ですか。わたくしは、ネレイス=イニシエイトといいます。」
「雷お〜ん…ん〜いまいち…レオポンにしよう!よろしく〜!私はキャロル=グラン
バームだよ。ここのお店は私の両親がやってるんだよ」
「雷華さんね。私の名前は、蒼月 百合菜。そしてこっちの馬がルピナスよ。よろしく」
「ヒヒン!ブルッ♪」
それぞれの自己紹介が終わり、雷華は言う
「えっと……『レオポン』と言うことに関しては諦めます」
その雷華の言葉を聞いた後でカイゼルが聞く。
「で、何で歌姫がいないんだ?」
「はい、まだ会えていないんです。ですから、今は歌姫探しの旅をしている途中なんです」
その雷華の答えを聞いてカイゼルは
「歌姫捜しか……難儀なことをしているな。俺には、最初からコイツがいるからなぁ」
「コイツとはなんですか!もう!知りません!……はっ!?ええと……」
カイゼルの答えにサレナは人前で怒ったはいいが、痴話喧嘩を雷華に見られて物凄く慌て
いる。それを見て、百合菜は
「もうっ、バカな娘ね。雷華さんゆっくりしていくといいわ。私は特に何もしてあげら
れないけどね」
「はい。ありがとうございます」
雷華はその言葉に答えていると
「ヒヒン!ブルブルッ」
ルピナスが雷華の匂いを嗅いでいる。
「え?ちょっと、どうしたんですか?」
「きっと、武士殿を食べようとぉぉぉぉぉぉぉ」
突然出てきた風華をあっさりと星にしてルピナスは雷華のことを興味深そうに観察し続
けていた。それを見て雷華は
「お、お見事……」
「雷華様〜。ご飯の支度ができたのでどうぞこちらへ〜」
そうネレイスが言ってくるのを聞いて答えようとした時
ギシャァァァァァァァァァァァ!!
また、奇声蟲の声が聞こえてきた。
「またか!今日は満員御礼だな!!」
そうカイゼルが言うのを聞いて雷華が言う
「さすがに、それは遠慮がしたいですね……。せっかくの料理が冷める前に片付けてしま
いましょう」
それを聞いてキャロルが言う
「でも、レオポン奏甲がないよ?」
「大丈夫です」
そう答えるが早いか雷華は奇声蟲のいる方へと走っていった。

カイゼル達が急いで奏甲に乗って奇声蟲の出た所にやってきたときはもうすでに、雷華に
よって10匹いた奇声蟲は全滅していた。
「凄い……これだけの奇声蟲を一人で……」
サレナは驚いて言い
「あいつに奏甲は必要ないんじゃないのか?」
「そのようですね……」
「レオポン凄いね〜」
カイゼル、ネレイス、キャロルも口々に言う。
「さぁ、食事をしに戻りましょう」
雷華は疲れた顔一つ見せずに言った

その後の食事で『蟲アイス』なる変わった形のものを雷華は食べさせられたのは言うまでも無い

つづく


あとがき
書き忘れがあったため結局間に合いませんでした……(涙
こんにちは、Akiraです。
カイゼルさん、例によって例のごとく不満、苦情その他なんでも承ります。もし、ここは
違うんじゃないかというところなどがあれば、仰ってください。
それと、この話を止めて欲しいと思われましたら、遠慮なく仰ってください。即抹消い
たします。
で、この後は修正前と変わりません。

Akira:「さすがに9月5日までに完成させますと言っておいてできないのはまずいですからね」
雷華:「課題をちゃんとやっておかないからこうなるんですよ……」
葵:「微妙にキャラが被ってるわね」
Akira:「キャラが被ってるとか言っちゃだめですよ」
葵:「そんなことより。私の出番は何時なのよ!」
Akira:「え?」
葵:「まさか、考えてなかったんじゃ……」
Akira:「なにを仰いますか、ちゃんと考えてますよ」
葵:「問答無用!!」
Akira:「ぐはぁ!!」
雷華:「葵さん、ダメですよ。作者が倒れたらまた出れなくなりますよ」
葵:「大丈夫。書かせるから」
Akira:「と、いう…わ…けで。…次回…は雷華…の歌姫…が登場……しますよ〜」

と言う感じが今回のあとがきです。……情けない作者ですね…。
課題で忙しいのは本当ですよ!
それでは、また次回のあとがきでお会いしましょう。Akiraでした。

まさか、書き忘れがあるとは……。おかげで、予定期日を守れませんでした。
何にせよ、改めて次回のあとがきでお会いしましょう。Akiraでした……。

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