―ある日私は夢を見た。何もない真っ白な部屋に真っ白なベットそして真っ白なシーツに
包まれて、ベットに横たわる全身に包帯を巻かれた人の夢だった。あそこは……あそこは
どこだったのだろう?そして、あれは誰だったのだろう?―

第一部	『一人旅』 第七話 『歌姫 ―Maiden― 』

この世界、アーカイアには『歌姫』と呼ばれる人達がいる。その人達は、歌を操り、幻
糸を織る。特殊な歌唱を行ない、その声は首につけた声帯を介して地上に放たれ、そして
奇跡を現出させることができる。ちなみに私、『春日 葵』も歌姫ということを言っておく。
こんな、現世の人のような名前だが、私はアーカイア人だ。何でも、私の曾曾曾おばあち
ゃんが歌姫大戦でのパートナーであった『機奏英雄』からその『みよじ』なる物を貰って
代々受け継がれている……らしい。口伝として伝えられていたことだから、本当かどうか
はわからないところだ……。
私の住んでいるところの紹介もしておこう。私は、リーズパスの渓谷にある村に住んで
いる。特に何もない平和な所。しいて言うなら、『絶対奏甲』それもかなり特別な物を秘匿
しているくらいだ(それだけで、十分平和じゃないし何もなくないじゃないかと思うかも
しれないが実際、つい最近まで結構平和だった)。さて唐突だが私には、友人が2人いる。
1人は物凄く頭が良くて家事もそつなくこなすけど運動音痴な娘で、名前は『シルキー・ブ
ラウニー』。もう1人は、勉強、料理、炊事、洗濯、そして歌術と何でもできる娘で私と友
人の間では尊敬する人、シルキーといえども彼女にはかなわない、名前は『ギルティネ・
カラワトニガ』。私とシルキーはギル姉と呼んでいる。私が唯一彼女達に勝てるのは格闘術
くらいだ。凄く女の子らしくない……。
まぁ、この際私が女の子らしくないのはどうでもいい(本当は全然どうでもよくないけ
ど…)。私達3人はとても仲がよかった。だけど、その日すべてが壊れた。ある日に突然、
奇声蟲がボサネオ島に現れた。奇声蟲はここ100年以上まったく現れなかった生物だ。し
かし、対抗策はある。黄金の歌姫、母姫様はそれに伴い英雄召喚を行いそれによって、伝
説となっていた『機奏英雄』が召喚された訳なのだが、当然私達の村にも英雄は来た(と
はいっても召喚されてきたその他の人たちに比べてかなり遅い召喚だったが……)。召喚さ
れてきた英雄は2人いて、それぞれシルキーとギル姉のパートナーだった。シルキーの英
雄は実に変わっていて面白く問題がなかったのだが、ギル姉の英雄は別の意味で変わって
いた無口な上に暗かったし何を考えているのかまったく読めなかった。彼らが召喚されて
約二週間後事態は急変する。白銀の姉姫様が『機奏英雄はいずれ奇声蟲となる。』と仰った
ため世界はいくつもの勢力ができ、戦争が始まった。私達の村もその言葉により、被害が
出ることとなる。ギル姉の英雄がギル姉と私達の村が秘匿していた絶対奏甲を持ち出して
どこかに消えてしまったのだ。持ち出された絶対奏甲は決して出してはいけないものであ
ったため、シルキーと彼女の英雄は残る2つの絶対奏甲の1つを託され彼らを追撃するた
め旅立ってしまった。私は英雄がいないため旅立つことが出来なかった。
 彼女達が旅立ってからしばらくたった頃、私はアーカイアを旅する青年の夢を見るよう
になった奏甲もなく歌姫もいない彼はたった2本のカタナという物で奇声蟲を倒してしまう。
滅茶苦茶強い人だった。私はこの人が自分の英雄ではないかと思うようになった。彼
は次第に私のいる所へと近づいてきている。近くの村に寄るようだから、長老に許可を貰
って私は彼を迎えに行くことにした。そのときは、ようやく自分の英雄に会えると凄くわ
くわくしていた。それが、あんなことになるなんて……
                               
つづく


あとがき
初めましての方もお久しぶりですの方もこんにちはAkiraです。
さて、前回の第六話が9月6日に掲載でしたから………うわぁ、実に約三ヶ月も出してな
かったんですねぇ。びっくりデス。まぁ、いろいろと忙しかったのです、はい。
それはさておき、今回は中休みのような話となっていて、初の一人称作品です。前回予告
していた通り、春日雷華の歌姫(予定)の春日葵が登場のうえ、彼女の一人称で書いてみ
ましたが…、なれない書き方、更に約三ヶ月のブランクゆえ、短い話ですが変だったらご
めんなさい。また、今回の話は今後の展開に大きく絡んでくる話でもあります。さっき中
休みと言ったのに矛盾している気がしなくはないですが……(−_−;)
何はともあれ、次の第八話にて第一部は終了となる予定です。葵が言っていた『あんなこ
と』は次回で明らかに……なります。もっとも、葵が語っていたことの大半は第二部以降
で明らかになるはず……たぶん、きっと……。それはともかく、次はちゃんと雷華が話の
中心にいます。いる予定です。ええ、いますともへんなことがなければ………。
とか何とか言いながら……それではまた次回のあとがきでお会いしましょう。
今回は前回と比べてあとがきが短かったと思う今日この頃なAkiraでした……。

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