この世界に来てどのくらいの時が流れたのだろうか……。わけの分からぬまま、連れて行
かれたところで絶対奏甲なる物を初めて見て、その後それに乗って戦った……友人達の敵
と。あれから、いろいろなところを旅してきた。武の国シュピルドーゼの首府シュピルデ
ィム、礼節の国トロンメルの首都エタファ、ボサネオ、砂漠そして商人の国ファゴッツの
首都ファゴッツランド、いろいろな地を回ってきたがあいつとは出会えなかった。見つか
らないことに焦りを覚えつつ。俺、驟雨とパートナー歌姫のアイリスは雪の舞う歌術の国
ヴァッサァマインの首都フェァマインへと向かうことになった。

幻想戦記Ru/Li/Lu/Ra二次創作小説
見えない何かを捜すために… 『チャービル 花言葉:真心』

「って、さみーぞ!!おかしいだろ!?さっきまでのうだる暑さから一変して涼しいを通
り越したぞ!!」
「仕方ないよシュウ。ほらあっちを見てみなよ。山が雪化粧してるじゃない」
怒鳴る驟雨ことシュウにアイリスが言う。
「答えになってない!!」
「ほら、そろそろフェァマインが見えてくるよ〜」
「無視ですか!!?」
なにやら騒がしい2人はフェァマインに入ってからもそのようなかみ合わない言い合いを
していた。当然ながら多くの人の注目を集めたのは言うまでも無い。

「しかし、よかったな」
工房に奏甲を預けて宿を探すための移動中にそう呟くシュウにアイリスは訊ねる。
「よかったって何が?」
「……あのな、ここは白銀の歌姫の出身地なんだろ?そのおかげで、つい最近までここら
は戦場だったらしいじゃないか」
「あぁ、そういうことね。物知りだねシュウは」
呆れて答えたシュウにアイリスはにこにこと言う。
「おい。ア〜イ〜リ〜ス〜。お前それでも正式な歌姫か!!」
凄く怒りをこめてシュウはアイリスの頬をつねり言う。それもそのはず、何気にアイリス
はちゃんとした試験をクリアした正式な歌姫だった。おまけに、位階は7位の『瑠璃』の
称号である。
「いひゃい、いひゃいよ、ひゅう〜〜」
「(コイツこれでも歌術だけは凄いからな……けど、これでエリートと呼ばれる位階持ちか
よ……)」
頬をつねられている為まともにしゃべれないアイリスを見やり、シュウが呆れるやらなん
やらですごく疲れた気がして、いい加減放してやろうかと思った時。
「ひゅう?ひょんなにじっひょみて……もひぃかひぃて、わひゃひぃにひょれた?」
(訳:シュウ?そんなにじっと見て……もしかして私に惚れた?)
「…………」
わなわなと震えるシュウは
「そ、ん、な、こ、と、を、い、う、の、は……この口かぁぁぁぁぁ!!」
更におこる。
「いひゃい、いひゃいってびゃ〜〜」
「って、こんなことしてる場合かぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう言い放ちアイリスの頬はなして頭を抱えるシュウにアイリスは
「こんなことって……シュウが……」
「分かった、俺が悪かった。だから、さっさと宿探していつも通り分かれて聞き込み行く
ぞ」
「え〜〜、たまには一緒に回ろうよ〜」
「二手に分かれたほうが効率的だろうが……」
「いっしょに回ったほうが楽しいじゃない〜」
「遊びが目的じゃねーし」
「たまには息抜きしなきゃ♪」
「はいはい。そんな余裕はありません」
「ぶ〜〜〜〜〜」
話の末いじけるアイリスにシュウは
「ほら、置いてくぞ」
そう言い放ちさっさと先に進んでしまった。
「ちょ、ちょっとまってよ〜〜〜」

―数時間後
1人で街中を歩くシュウの姿があった。
「(はぁ、なんでたかが宿一軒探すのにあんなに疲れにゃならんのだ……)」
そんなことを考えながら、適当な店で友人の敵である人物の聞き込みを始める。
「なぁ、このへんで『ミヤギ・ケンイチ』っていう男を見なかったかな?」
そう、店のおばちゃんに尋ねると
「う〜ん、あたしの知ってる限りじゃ聞かないねぇ」
「そうか……、ありがとう。それじゃ……」
そう言って望むことが聞けなかったシュウが去ろうとするのを見て店のおばちゃんが
「ちょいと、待ちなよそこの英雄さん」
声をかけられたシュウは、立ち止まって、おばちゃんを見やる。
「今、ここフェァマインでは『クリスマスの贈り物』が流行ってるんだ。どうだい?あん
たの歌姫にも1つ♪」
「はぁ?ここにもクリスマスなんて物があったのか??」
「いや」
そう、シュウの質問に即答して更におばちゃんは続ける。
「何でも『どこかの英雄さんがポロリとこぼした言葉がきっかけで、その英雄さんの歌姫
にプレゼントをした。それがクリスマスプレゼントと言うものだ』ってな感じで広まって
るそうだよ?」
「広めてるの、絶対あんただろ……」
「……。で、何を買う?この指輪なんかお勧めだねぇ」
「おい、こら。無視するな」
「護り石がついてればなおさら……」
「(ぐあ!?何で俺の周りには恒も人の話を聞かない奴が多いんだよ!!)」
図星を指されたのかシュウの言葉を無視して、おばちゃんは売り物の説明を始め、シュウ
は頭を抱えることになった。

なんだかんだで、シュウはその手に小さな袋を持っていた。
結局、1000Gの指輪を買たのだ……。
「(あぁ、なんで俺こんなの買っちまったんだろ……ええい、買ったからにはちゃんとプレ
ゼントしなくては!!しかし……何て言って渡すんだ……)」
そんなことをもやもや考えながら、部屋に入ろうとドアを開くと
「おっ帰り〜〜〜!!」
と、目の前にいきなりアイリスが出てきて、シュウは慌てて、袋を着ていたコートのポケ
ットに押し込む
「(って、何隠してんだ俺はぁぁぁ!!)」
そんな心の叫びを上げるシュウにアイリスが訊ねてくる。
「ねぇ、シュウ。『クルシミマス』って何?」
「は?」
わけの分からぬ質問に疑問の声をシュウはあげる。
「だから、クルシミマス」
「……おいおい、それって、『クリスマス』のことか?何てベタなボケを……」
そう呆れながらも聞き返すシュウの言葉にアイリスは
「そう!それ!……で、それっていったい何?」
「(ぐっ……ここは普通にクリスマスの話をして、プレゼントを渡すべきなのか……!?し、
しかしここは……)」
とか、シュウは悶々と悩んだ挙句
「あ、赤いサンタクロースっていうのが来る日?」
と疑問系で誤魔化しの言葉を言うと
「なるほど……じゃあ、今日がクリスマス?」
「は?なぜ?」
「え?だって、サンタクロース」
とアイリスはシュウの後ろを指さし言う。
シュウが不思議に思って後ろを見やると……
「いけませんねぇ……。いけませんよ、英雄殿。英雄とあろう者が嘘をつくなどもってのほか!!ゆえに!!貴方は奏甲に乗り込みあちらの方々とバトルなさい!!」
どこからともなく流れる『赤鼻のトナカイ』の曲と共に言う、実寸大のサンタクロース、もちろんトナカイの引くそりに乗っているものの、トナカイの頭から顔を出す、謎のエメ
ラルドグリーンの髪で銀の瞳のいかにも変な人を見てシュウは
「あ〜、何かメッチャクチャ嫌な予感が……言ってることも無茶苦茶だし……」
ごく当たり前にそう呟いた。

《我らクリスマス騎士団、クリスマスをバカにするやつぁぁぁぁぁ。我らが許しても……我らが許さぁぁぁぁん!!》

タイミングを計っていたのか、ちょうどいいタイミングで外から高らかに聞こえる声。慌
てて宿から出て、声の主を見たシュウはアイリスに言う。
「あいつら、何者にせよ……アホな奴だな……」
「そだね……。あの人達、赤い絶対奏甲に乗ってるから、サンタクロース騎士団だよ!!」
アイリスはクリスマス騎士団を名乗る者達を指差して言う。
「突っ込む所はそこじゃねえだろ!?」
「さぁ!!貴方様方も奏甲に乗り込み戦闘の準備を!!」
「お前はお前で、話を強引に進めようとすんな!!」
あっち、こっちにツッコミをいれるシュウを当然のごとく無視し、
先ほどの着ぐるみ男が今度はタキシード姿で、そこに無いはずのシュウの『ビリオーン・
ブリッツ』を指差し高らかと叫ぶ。どこからともなく流れてくる、ファンファーレのオマ
ケつきで…
「って、何でここに俺のビリオーンが!!」
「シュウ!!早く乗らないと!!あの騎士団がこっちに来てるよ!!」
既に、ツインコクピットに改造されたビリオーンに先に乗り込んだアイリスがシュウに言う。
「ああもう!何がどうなって……くそ!ええい!!ままよ!!」
シュウもそう叫びビリオーンに乗り込みすぐさま戦闘態勢に移る。そこを待ってましたと
ばかりに、あのタキシードの人物が今度は左目に眼帯を付けて現れ、言い始める。
「それでは皆さん!!お待たせしました!!絶対奏甲ファイトォォ!レディィィ!!……」
「風華!!貴方は何をしてるんですかぁぁぁぁぁ!!」
突然現れた謎の青年の攻撃を、風華と呼ばれたタキシードを着た人物は軽々とかわして言う。
「武士殿。邪魔しないでください」
「あ、貴方と言う人は……」
「あ、危ない!!」
武士殿と呼ばれた青年が風華に文句を言っている最中にいつの間にか近づいていた騎士団の1人が、その青年に武器を振り下ろす。
ガギィィィン
次の瞬間、崩れ去っていたのは青年で無く、絶対奏甲のほうであった。
「な!?何したんだあの人!!」
「すごーい!!生身で絶対奏甲倒しちゃったよー!!」
シュウとアイリスは当然ながら口々に驚く。すると、そこに新たに漆黒のシャルVが現れる。
「雷華さん!!大丈夫か!?」
「ええ、ショウグさんこの程度なら問題ありませんよ」
雷華と呼ばれた青年は、シャルVに向かって言う。
「よし、じゃあ後は任しといてくれ!残りはこちらでやる」
そう、シャルVのパイロットショウグが言うのを聞いてシュウは
「ちょっとまて、俺にもやらせろ!!」
とシャルVに言いカタナを抜刀してクリスマス騎士団に突っ込む。
「アイリス頼む!!」
「(了解〜!!)」
アイリスはシュウに、そう返事をして歌術を紡ぐ。
「よし!!」
とたん、ビリオーンはスピードを増し、瞬時に騎士団の奏甲の1機に肉薄する。
そして、相手に攻撃させないうちに奏甲の足の関節をカタナで攻撃し、すぐさま次の敵へ
と向かっていった。その背後では攻撃された、奏甲が音を立てて崩れ落ちていた。
「うわぁ、すげー奴。あっと言う間に1機落としちまいやがった」
「凄いですね……あの英雄もさることながら、瞬時に必要な歌術を歌い上げる歌姫もなか
なかやります」
ショウグと雷華が口々に賛辞を述べる。
「やばい、このままじゃ、俺の取り分が無くなっちまう!!」
と言って、背中にかけていたライトボウを取り出して矢をつがえ、騎士団の奏甲の1機のを狙い、素早く3連射する。射られた奏甲は頭部と両足の関節をやられて完全に沈黙した。
数分後、たった2機の絶対奏甲に敗北したクリスマス騎士団の姿があった。
「おかげで助かった……ってあれ?」
シュウが戦闘を終えて助けてくれた、2人に礼を言おうと辺りを見渡したが、風華も含めてそこにはもう誰もいなかった。
「いないね〜。まさか、あの人たち幽霊だったりして……」
アイリスはのんきにそんなことまで言い始める。
「あのなぁ〜……まぁ、言いか。いずれまた会えるだろ。さてとさっさと工房に奏甲置い
てきて休もうぜ」
呆れたシュウはそう言って絶対奏甲を工房へと向かわせる。
「ところで、結局『クリスマス』って何?」
「(うっ……忘れてなかったか……仕方ないここは諦めて正直に話すか……今回もアイリ
スの歌術に助けられたしな)」
「クリスマスはな……。やっぱり止めた……」
「え〜、なんで〜」
「ええい、これやるから!!聞くな!!」
耐え切れなくなったシュウはアイリスに例の袋を放る。
「え?えっと……開けていい?」
「いい」
アイリスの質問にぶっきらぼうに答えるシュウを見て
「じゃ、開けるね……うわぁ♪指輪、しかも私の護り石付きのだ♪ありがとう!!」
「くっ!!仕方なくだからな」
「うん、うん、わかってる。わかってる。……やっぱりあのおばさんが言ってたのは本当
だったな〜♪」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、なにも♪」
アイリスはそう答えシュウに抱きつく
「って、おい離れろ!!」
「へへへ、シュウ♪」
「おい!!お前人の話し聞いてんのか!?」
「(あの、お店のおばちゃんが言っていた事信じてもいいよね)」
アイリスがおばちゃんから聞いたこと、それは『クリスマスってのはね、その人にとって
大切な人にプレゼントを贈る日なんだよ』ということであった。
「あたしからも、はい!」
「ん?何だよ一体……」
そう言って、アイリスが渡したのはシュウがアイリスに渡したのと同じ護り石をはめられ
た指輪だった。
「げ!!も、もしかして、お前……」
「さ〜て、さっさと奏甲置いて宿でゆっくり休もう!!」
「アイリス!!お前、知ってたな!!」
「ほ〜ら、早く行こう♪」
顔を真っ赤にしてシュウが吼え、アイリスは満面の笑みを浮かべシュウを急かした。
そんな中、町には静かに雪が降り始めた………。

雪に埋もれ始めたクリスマス騎士団の絶対奏甲の残骸から、数人の英雄達が出てくる。
「へっくしゅん!!」
「リーダー……俺達の報酬はどうなったんでしょう…」
リーダーに1人の英雄が尋ねる。
「ぐ……し、知るか!!」
「どうすんですか!!歌姫にプレゼントを買いたいからって、こんなへんな依頼受けて…結局報奨金くれる奴逃げちゃいましたよ……」
また別の男が言う。
「うるさい!!」
「オマケに絶対奏甲は買い換えなきゃ駄目なくらいにボロボロに……」
また別の英雄が片隅で泣きながら呟く
「俺が知るかよ〜〜〜」
リーダーは…………泣いていた……。
雪はだいぶ積もっていた……。



あとがき
あまり加筆修正はされてません
こんにちはAkiraです。
微妙なところの表現が変わってはいるんですけれどね……
もうちょっと変えたい気はするんですが……それがわからないんですよね……
う〜ん、自分の駄目っぷりを自覚させられることになった気がします。
何はともあれ、ツッコミどころがある物語ですが楽しんでいただければ幸いです。
この物語りが続くかどうかはわかりませんが……
そんなこんなで
Akiraでした。

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