●この物語は、ROL第3クール開始を記念して創作されたSSです ●この物語の時間軸は、各SS作家の作品とは異なるパラレルワールドとご理解下さい。 ●この物語の元ネタは、PT[そこいらの旅人」のPT掲示板での会話や戦闘結果を、 天凪優夜が勝手に脚色し、SS風味に仕上げたものです。 ●よって各キャラの発言が、そのまま文章に反映されています。 ●時々、ネタの鮮度に若干の時間差がありますが、製品上の問題はありません。 ●尚、原材料に遺伝子組み換え食品は使用されておりません。 その41 優夜さんを追って、判りました。 いいえ。判ったとうより、確信した。もしくは、悟ったと言うべきなのかもしれません。 あの人がどうしようもないくらい、確信犯&愉快犯だって事を………! 行く先々の町で、優夜さんが立ち寄った痕跡が残されていました。 宿の帳簿はもちろん、訊ねた町の人の記憶の中や、果ては壁の落書きの中にまで………。 まるで自分を探してくれと、言わんばかりに! あの人にとって今回の騒ぎも、ちょっとした「鬼ごっこ」程度にしか思っていないんです! ですから、でエタファに到着した時も、優夜さんの居場所は簡単に判りました。 ルルカ「見つけましたよ優夜さん!」 優夜 「うおっ!? キューレヘルト!? ラルカかっ!?」 ラルカ「お兄ちゃん、見つけた」 わざとらしい驚いた表情で、優夜さんはソコに居ました。 ルルカ「ラルカ! バラバラに砕け散っても構いませんから、その人を捕まえて下さい!」 ラルカ「………いいの?」 ルルカ「構いません! 後でくっつければ元に戻ります!」 優夜 「いや、それはちょっと、過大評価すぎかも………」 なにやら優夜さんの顔が蒼ざめていましたが、きっと演技です。 わたしには判ります。ええ、それはもう、判ってますとも! ラルカ「ん……。判った」 優夜 「ウギャァァァ!」 この後、キューレの腕に捕まった優夜さんは、口から泡を吹いて気を失いました。 ……取りあえず、捕獲成功なので、良しとします。 その42 取りあえず、優夜さんを「無事」に確保しました。 優夜が「無事」かどうかは、また別の問題ですけど。 もとより優夜さんが「無事」である必要は、どこにもありません。 まぁ、お仕置きができるくらいに「無事」でいてくれたなら、それで充分です。 ラルカ「でも、お兄ちゃん、まだベッドの上………」 ルルカ「……………ちょっとだけ、やり過ぎちゃったかもしれませんね」 ラルカ「キューレの手の中で、何かがボキボキ鳴っていた」 ルルカ「……………そういえば泡も噴いていましたね。ちょっとだけ赤の混じった、ピンク色の泡を」 ラルカ「お医者さん、呼ぶ?」 ルルカ「お金が勿体無いから、必要ないです」 ラルカ「………」 ルルカ「……………」 ラルカ「……………………」 ルルカ「まぁ、赤チンでも塗っておけば大丈夫でしょう」 ラルカ「………ん」 と、いうわけで、明日には「そこいらの旅人」に合流します。 ちなみにキューレは工房に入れて、代わりに全財産を使ってグラオグランツを購入しました。 これでもう、変なイタズラはできませんね。 なにはともあれ、これにて一件落着です。 その43 PTに合流するや否や、優夜さんは笑顔でベルティさんへと駆け出しました。 確かあばら骨が数本、ちょっとヒドイ事になっているはずなんですけど………。 優夜 「やっは〜、ベルティ〜。オレが居なくて淋しくなかったぁ?」 さすがに微妙に脂汗が浮かんでいましたけど、全く、その精神力を別の方向に活かせないんでしょうか? ………活かせないんでしょうね、きっと。 ベル 「ああ優夜、待ってたのよ〜♪」 シュレ「おお、マジですか!?」 と、笑顔で迎えるベルティさんに、一瞬びっくりしましたが………。 ベルティ「新必殺技! 食らえ、アイアンクローじゃ〜!!!」 シュレット「あ〜あ、やっぱりこうなるんだ・・・」 ええ、本当に、シュレットさんの言うとおりです。 桜花 「でも、二人とも笑ってますね」 ラルカ「仲良しさん。仲良しさん」 レグ「ようやく捕まえたか……」 ブラ「やれやれ……ルルカ殿、本当にご苦労であった」 レグ「罰としてしばらく前線にでも立たせるか」 そちらの方は、お任せします。 キツ〜イお仕置きを、しちゃって下さいね。 その44 ズェーデリヒハーフェン。 今日は新型奏甲の実力試しも兼ねて、この町の灯台に棲み付いているという奇声蟲の駆除に出掛けました。 どうやら光に誘われて集っちゃったみたいです。難儀な話ですね。 まるでトラブルに集る優夜さんみたいです。 何はともあれ、このままですと船の航行に支障が出るので、放っておくわけにはいきません。 優夜 「まるでシロアリ退治の気分だねぇ〜」 ラルカ「シロアリさん?」 優夜 「夢のスイートホームを食べちゃう、怖いムシさん」 ラルカ「お菓子の家?」 優夜 「ん〜〜〜。そんなにメルフェンなムシさんじゃあ、ないんだけどなぁ〜」 ついでにこの人も退治しちゃいたいと思ったわたしは、ちょっとだけ歌姫失格かもしれません。 で、わたし達が近づくと奇声蟲もコチラに気付いたようで、<ノイズ>を出しながら襲い掛かってきました。 驚いた事に、衛兵種だけの群だとばかり思っていたら、貴族種まで混ざっていたようです。 もっとも、今のこのパーティーの強さなら、貴族種が何匹いようと物の数ではありません。 レグさん、桜花さん、キョウスケさんの大活躍で、あっという間に灯台の奇声蟲は駆除されました。 え? 優夜さんですか? そんな人の名前は、無視しちゃって下さい。 さて、無事に町へと戻ったわたしは、とっても気になる噂話を耳にしました。 なんとハルフェアの王都『ルリルラ』で、待望のアイテム「ハリセン」が売り出されたという話です。 レグ 「針千……?」 ブラ 「ちがう、ハリセンだ」 レグ 「武器なのか? いったいどんな……」 ブラ 「お前が期待するような性能は、ないと思うぞ……」 まぁ、確かにレグニスさん向けの武器ではありませんね。 アレは……そう。わたしのような、か弱い乙女にこそ、相応しい武器なのですから。 ルルカ「ルリルラに『ハリセン』が置いてあるって、本当ですか!?」 優夜 「ん〜? でも奏甲用のデッカイやつらしいぞ?」 ルルカ「構いません! その時は、どーぞキューレかローザに乗り換えて下さい!」 優夜 「……ひょっとして、殴る気?」 優夜さんも、不思議な事を訊ねます。 ……それ以外に、どんな使い道があるというのでしょうねぇ? その45 昨日、少し武器の話をしたせいでしょうか? ブラ 「そういえば、各御仁はどのような得物を得意としておられるのかな?」 夕食時に、ブラーマさんが唐突にそんな事を訊ねてきました。 レグ 「俺はナイフだがな……一応言うが、銃やその他の刃物が使えないわけじゃない」 ブラ 「それはわかっている。むしろお前は武器そのものがいらんのではないか?」 それはちょっと酷いお言葉のような反面、頼もしさと誇らしさがブラーマさんの微笑みからは滲み出ていました。 本当に、ブラーマさんはレグニスさんの事を信頼しているんですね。 レグ 「さあな。ところでブラーマ、そういうお前の得意武器はなんだ?」 ブラ 「うっ……それは……黙秘させてもらう」 そういえば、ブラーマさんが戦っている姿は、まだ見た事がありませんね。 何をそんなに隠そうとしているかは判りませんが……今度こっそり、教えて貰いましょう。 キョウ「武器……、ふふふ。ついにこいつを出す時が来たか!」 と、叫びながらキュスケさんが取り出したのは、2mもの大きさをした、バナナ型の鈍器………。 ミル 「……なにそれ?」 キョウ「こいつは、かのエルオール様の好物であるバナナを模した、 かのハガネ・ソウリュウ隊長がエルオール様直々に授かった剣「斬艦バナナ」のレプリカ! 銘はずばり、「二式斬艦バナナ」なりっ!」 ミル 「うわ〜、すっごいバカ」 シュレ「武器ねえ〜、桜花は何でも刀や弓だし……」 桜花 「他に薙刀も使えます」 シュレ「ナギナタ? どんな武器なの?」 桜花 「こちらで言うと形状はヤリが一番近いですね」 シュレ「ふうん、僕はアークハンマーかな……」 ベル 「私には聞かないのね……」 シュレ「あんたはどうせ飛び蹴りでしょう」 ベル 「甘いわ!私はこの口で戦ってるのよ!」 桜花 「なるほど、歌姫であればあながち間違いではないですね」 シュレ「いや……たぶん口先三寸のその舌の事だよ。きっと」 ルルカ「武器、ですか? わたしは『幻糸ハリセン』と『石を詰めたスリッパ』と、 武器ではありませんけど『お盆アタック」が得意です」 優夜 「………しょぼ(ボソ)」 ルルカ「何か言いましたか!?」 優夜 「ちなみにオレは、得意な武器ってのはないな〜。 剣でも銃でも満遍なく使える、マルチファイターって奴?」 ルルカ「つまり、何を装備しても一緒、って事ですね……」 優夜 「そうそう。いや〜、さすがに判ってるね、ルルカは」 ルルカ「照れないで下さい……。皮肉なんですから」 ラルカ「……ラルカ、黒薔薇が得意」 ルルカ「それはダメッ!」 要するに、得意な武器は十人十色という事でしょうか? でも、役割を分担できるのならいいでのすが、どうやら単純に。得意な武器がバラバラなだけみたいですね。 それでもここまで無敵を誇っているこのPTって、本当にスゴイと思います。 その46 ツィナイグング。 ズェーデリヒハーフェン、シュピルディム、ハルフェアへの渡航の交差点となっている小さな港町です。 さすがに港町なだけあって、潮風がとっても心地いい場所でした。 で、こういう場所に来ると、必ず騒ぎ出す人が居るわけで………。 優夜 「海だぁ!」 ラルカ「……海」 優夜さんとラルカは、とてもはしゃいでいました。 海なら先日のズェーデリヒハーフェンでも体験したわけですが、やはり海水浴場もあるような場所だと、少し違います。 蒼く澄んだ水面に、白く輝く眩しい陽射し。 好きな方には好きなんでしょうけど、わたしにはちょっと………。 ミル 「あ、ほら! 海だって海! ねーねー、一緒にいこ」 キョウ「ほらそこー、ガキみたいに騒ぐなー」 ティセ「……って、また、コレ、着るんですか?(赤面)」 そんなに海って、楽しい場所なんでしょうか? 優夜 「って事で、海水浴!」 ルルカ「ダメですっ!」 優夜 「………なんで?」 ラルカ「……泳ぐのダメ?」 ルルカ「遊ぶ前に、まずは人助けです。この街でも、困っている方々がいるんですよ?」 そうなんです。 町についた途端、奇妙な事件が町の住人を困らせているという話を耳にしました。 なんでも町の郊外で、酷いノイズを撒き散らしながら悪事を働く絶対奏甲がいるそうです。 目撃者の証言によりますと、それは薄汚れた灰色のキューレヘルトだとか……。 わたし達は、早速その退治を引き受けました。 ブラ 「海か……もしかしたら……ああとかこうとかそんなことに………!」 レグ 「……ブラーマ?」 コニー「きゃう〜?」 ブラ 「いやまて、それにはやはり心の準備が………って、聞いてたのか!」 レグ 「海よりも人助けが先だそうだ」 ブラ 「そ、そうか……残ね……いや、当然だ!」 ……どうして皆さん、そんなに海が好きなんでしょうか? その47 今日はノイズを撒き散らすキューレヘルトを退治する為に、町の校外に赴きました。 ブラ 「情報によれば、賊のキューレヘルトの襲撃には周期があるらしい」 レグ 「つまり、待ち伏せが有効という事だ」 コニー「だぁ〜〜〜」 と、コニーちゃんの承認を得て、わたし達はキューレヘルトが現れる瞬間を待ち伏せます。 そして二時間後、ブラーマさんの情報通り、奇妙なノイズを撒き散らすキューレヘルトが現れました。 ところが………。 ブラ 「………?」 ベル 「え? これってどういうこと?」 ルルカ「歌姫が居ない……!?」 ミル 「どうやって動いているのよ、コイツ!?」 わたし達は織歌を紡ぎながら、動揺と困惑を隠せませんでした。 何故ならそのキューレヘルトからは、織歌を紡ぐ歌姫の存在が全く感じられなかったからです。 普通、織歌が歌われていれば、なにかしら<ケーブル>で判ります。 それなのに現れたキューレヘルトは支援の歌がないまま、戦闘起動モードで襲いかかってきたのです! 優夜 「根性か? 根性で動かしているのか?」 レグ 「ほう。それは面白い」 キョウ「こらぁ、レグ! ソイツのホラを真に受けているんじゃねぇ!」 桜花 「いずれにしても、成すべき事は同じです」 土煙を上げて突撃してくるキューレヘルトを迎え撃つ、三機の絶対奏甲。 まずはレグニスさん、キョウスケさんが左右から攻撃を仕掛け、上空から桜花さんがロングボウを射掛けます。 ちなみにもう一機、グラオグランツという性能的には申し分ない奏甲も居るには居るのですが……… 優夜 「負けるな〜〜〜。どっちも頑張れ〜〜〜」 ラルカ「………どっちも?」 いきなりサボって静観モードです。 いや、もう、突っ込む気力も沸きません。 まぁ、実際のところ優夜さんが何をしていようが、このパーティーの強さには問題ありませんけど。 それを証明するように戦闘開始早々、キューレヘルトの頭部に桜花さんのロングボウがあっさりと命中しました。 時間にして、三分少々。待ち伏せ時間の、およそ40分ノ1ですね。 キューレヘルトは糸が切れた人形のように一瞬停止し、最初はゆっくりと傾き、そしてバタンと倒れました。 と、長くなりましたので、今日はここまで。 続きはまた明日です。 その48 優夜 「さぁ〜て、どんな娘が乗っているのか、確認確認♪」 擱座したキューレヘルトが動かない事をいいことに、優夜さんが早速、近づいていきます。 全く、こういう時だけ行動力を発揮するんですから。 優夜 「お〜〜〜。これはなかなか、結構な美人さんだ」 キョウ「おっ、本当だ」 ベル 「……ふん、まぁ、わたしほどじゃないけどね」 シュレ「言うと思った」 レグ 「よくわからん。それは戦術的に、重要な要素なのか」 ブラ 「ある意味、女の戦いでは重要な武器だがな…………」 桜花 「……あの、それよりも早く、助けて上げるべきなのでは?」 奏座で気を失っていた女性は、まぁ、確かに美人さんでした。 それなりの長身に、ストレートの長い髪。 ちょっと大人びた顔立ちは、多分、十代も後半か二十歳より少し上といったところでしょうか。 首には黒い石をあしらった歌姫の首飾りをつけているので、まず間違いなくアーカイア人の歌姫さんです。 ただ、その石は戦闘の衝撃が原因でしょうか、粉々に砕けていました。 そしてこの人を支援する歌姫がいるべき唱座は無人で、一抱えほどの大きさの箱が絶対奏甲と接続されているだけでした。 ………ちょっと、ミステリーですね。 しばらく経つと、彼女は目を覚ましました。 彼女の名前はフラウさん。 お話しによると、評議会の使いを名乗る方から渡された首飾りをつけてからの出来事は、ほとんど覚えていないとの事でした。 ただ、絶対奏甲で暴れていたという微かな記憶だけが、脳裏の隅に浮かび上がるだけで………。 取り敢えず、フラウさんは解放して、キューレヘルトだけを回収する事にしました。 悪いのフラウさんではなく、フラウさんに妙な首飾りを手渡した、評議会を名乗る謎の人物ですから。 それにしても………シュヴァルツローザ以外にも、歌姫単独で戦闘起動ができる絶対奏甲があるなんて………。 しかも、それが評議会に関係する機関の手によって作られていたなんで、なんだか哀しいです。 桜花 「どこにでも酷い事をする人がいるものですね」 シュレ「でも、奏甲だけを持っていこうって機転がきくね、誰が言ったの?」 桜花 「私ではないですよ」 ベル 「もちろん私でもないわよ」 優夜 「それはモチロン、このオレだ!」 ルルカ「……さては、売るつもりですね」 優夜 「惜しい。もう売った」 ルルカ「早ッ!」 優夜 「と、いうワケで。このお金で、みんなで海でバカンスだぁ!」 ラルカ「バカンス、バカンス」 レグ 「手の込んだ仕掛けのわりにはたいした強さじゃなかったな」 ブラ 「何事も、無茶をすればどこかに無理が生じるものだ」 レグ 「で、次は海か……」 ブラ 「そうだな………(水着も新調したし、今度こそ……!)」 なにはともあれ、一件落着。 せっかく鹵獲した奏甲を、バカンスの資金にしてまおうという優夜さんの発想には呆れましたけどね………。 でも、皆さんやラルカも楽しみにしているみたいですし、タマには大目にみましょう。 その49 今日は「そこいらの旅人」はお休みです。 皆さんで海水浴場に出掛け、一時のバカンスを楽しみました。 ラルカ「海……。冷たくて、気持ちいい……」 ラルカもとっても楽しそうです。 ちなみにわたしは、あんまり楽しくありませんでした。 と、言いますか、わたしって海は苦手なんです! だからずっとパラソルの下で大人しくしている予定だったのに、優夜さんは………! ………。 まぁ、この事はいずれまた、どこかでお話しようと思いますが、今はその元気もありません。 いえ、むしと生きている事が、奇跡のように思えるくらいですから。 ブラ 「どうだ、レグ?」 レグ 「何がどうだというんだ?」 ブラ 「……い、今の私の姿についてだ」 レグ 「そういうことか、そうだな………」 ブラ 「………(ドキドキ)」 レグ 「露出が多いな。気をつけないと日焼けをするぞ」 ブラ 「結局こうか……。だが、まぁいい。ルルカ殿にもらった、このサンオイルを塗ってくれ!」 レグ 「了解した」 ブラ 「くれぐれも、優夜どのに見つからぬように頼むぞ」 レグ 「・・・? なんでだ」 確かに優夜さんに見つかったら、どうからかわれるか判ったものではありませんからね。 でも、残念な事に、この後しっかりと優夜さんには見つかってしまったようです。 ご愁傷さまでした。 その50 バカンスを終えたわたし達の耳に、奇妙な事件の話しが舞い込んできました。 この町の漁船の底に、何者かが穴をあけるという事件です。 こんな事をして犯人にどんな徳があるのかは判りませんけど、穴の大きさ、作業の困難さから考えて、 犯行に絶対奏甲が使われている事はまず間違いありません。 そこでわたし達は、絶対奏甲が現れる深夜の浜辺で監視をする事にしました。 警戒されると意味がないので、灯りは一切つけていません。 二つの月と、絶対奏甲の夜間能力だけが全てです。 優夜 「いや〜。しかし夜の海って不気味だねぇ〜。本当に幽霊でも出そうな雰囲気」 ラルカ「………オバケさん?」 ルルカ「うぅ〜〜〜。わざわざ声に出して言わないで下さい!」 わたしだってちょっぴり、怖いかなぁ〜って思っていたんですから。 レグ 「来たぞ。無駄話はそこまでだ」 ブラ 「あれは……ヴラオヴァッサァか!? 皆気を付けろ。海に引きずり込まれたら、まず勝ち目はないぞ!」 キョウ「ようするに、海に潜る前に片付けろって事だろ? だったら楽勝!」 桜花 「油断は禁物ですが………参ります!」 と、皆で一斉に、ヴラオヴァッサァに攻撃を仕掛けました。 作戦も何もありません。海に逃げられないように取り囲んで、後はカゴメカゴメです。 確かに水中では無類の強さを誇るヴラオヴァッサァでですけど、陸に上がったら途端にザコなんですよねぇ〜。 まさに言葉どおり、まな板の上のお魚さんです。 優夜 「よし! 取り押さえたぞ!」 ルルカ「わっ、すごいです! 優夜さんがマジメに活躍してますよ………って、何かカチカチ鳴っていませんか?」 レグ 「っ! 全員、離れろっ!」 優夜 「………へ? なんで?」 レグニスさんの鋭い声に、ヴラオヴァッサァに組み付いた優夜さんを除く全機が、一斉に散開した直後でした。 ヴラオヴァッサァから眩しい閃光が迸り、轟音が夜の浜辺に轟いたのです。 半分、予想はしていたとはいえ、期待を裏切らない人です、優夜さんは。 ………激しくマイナス方向の期待ですけど。 桜花 「自爆した………?」 レグ 「やはりな。危機一髪だった」 シュレ「あの〜〜〜。一人、逃げ遅れた………っていうか、抱きついていた人が居たと思うんだけど?」 ベル 「どうせ死んでないんだから、放っておけばいいんじゃないの?」 桜花 「ベルティ……。せめて上辺だけでも、心配している素振りを見せたらどうですか?」 キョウ「やれやれ。終わった終わった。さっさと帰って寝ようぜ」 ブラ 「うむ。今夜は久し振りに静かな夜になりそうだな」 皆さん、何気に薄情です………。 まぁ確かに、皆さんの予想は決してハズレではありません。 燃え上がる炎に照らされた漆黒の海に、ブクブクと沈んでいく白い絶対奏甲を眺めながら、わたしは深いため息を吐き出しました。 |