●この物語は、ROL第3クール開始を記念して創作されたSSです
●この物語の時間軸は、各SS作家の作品とは異なるパラレルワールドとご理解下さい。
●この物語の元ネタは、PT[そこいらの旅人」のPT掲示板での会話や戦闘結果を、
 天凪優夜が勝手に脚色し、SS風味に仕上げたものです。
●よって各キャラの発言が、そのまま文章に反映されています。
●時々、ネタの鮮度に若干の時間差がありますが、製品上の問題はありません。
●尚、原材料に遺伝子組み換え食品は使用されておりません。

その61

温泉宿での骨休めも無事(?)終えて、今日から気持ちも新たに旅人家業を再開です。
と、言いたかったのですが………やってくれましたね、優夜さん。
何をやってくれたかと言いますと、新しい奏甲です。
不思議な事に、昨日まで『グラオグランツ』だった優夜さんの絶対奏甲が、一夜明けたら新型に代わっているじゃありませんか。
これには流石に、唖然としました。
どうやら昨夜、わたしが酔い潰れている間に、乗換え手続きを済ませていたようです。

それもよりにもよって「デカイ」「高い」「動かない」の三拍子が揃った『ゼーレンヴァンデルグ』に。

ルルカ「………で、取り敢えず聞きますが、どういう理由でゼーレンなんですか?」
優夜 「こらこら、ルルカくん。どうしてキミは、自分の英雄さまをまず疑って掛かろうとするのかな?」
ルルカ「それはご自分の胸に、手を当てて訊ねて下さい。で、どうしてゼーレンなんですか?」
優夜 「それはもちろん、ルルカと一緒に戦いたいからだよ?」

周知の通り、ゼーレンの追加装甲部分には、歌姫を乗せる事が出来る唱座が備え付けてあります。
本来この機能は、絶体絶命に陥った時、せめて自分の歌姫だけでも脱出させようという英雄精神が生み出した産物なんですけど………。

ルルカ「つまり、わたしを戦場に置き去りにしたり、オトリに使う魂胆ですね」
優夜 「や〜照れるなぁ〜。歌姫にここまで、判ってもらえるなんて」
ルルカ「照れる前に恥じて下さい! っていうか、どこの世界に自分の歌姫をオトリに使う英雄さまがいるんですか!」
優夜 「キミの、目の、前に」

バキッ!

取り敢えず、一発殴っておきました。
激しく頭と胃が痛いです。
それに引き換え、お隣で新装備を試している桜花さんの真面目な事と言ったら………。

ベル 「桜花〜。もう奏甲テストは疲れたでしょ〜。休憩しようよ〜」
桜花 「まだです、やっと望みの物が手に入ったのですから、身体の一部のように扱えるまでは………」
ベル 「ええ〜、疲れたよ〜」

桜花さんはずっと望んでいた武器………奏甲用の『カタナ』を手に入れたので、その使いこなしに夢中なようです。
しかも、二刀流です。
二本のカタナを構えるローザは、とっても凛々しく、見ていてため息がもれそうです。

それに引き換え、わたしの英雄さまは………ハァ〜〜〜。

ブラ 「ルルカ殿、大丈夫だ。見捨てていかぬよう、レグにちゃんと見張らせる」
レグ 「と、いうわけだそうだ」
ブラ 「むしろ、私も乗りたい……ツインコクピット」

その62

ルリルラを出発したわたし達は、ベグヴェーム、ツィナイグングを経て、シュピルディムに到着しました。
噂に訊いた武の国、シュピルドーゼの都です。
インゼクテン・バルトを西ににらみ、絶対奏甲が戦うことのできる都市設計が盛り込まれた戦闘機能都市は、立派の一言に尽きます。

さて、シュピルディムでわたし達を待っていたのは、絶対奏甲同士のトーナメント大会でした。
本当は人助けがお仕事のわたし達ですが、たまにはこんなのもいいかも知れません。
腕に覚えのある英雄さん同士が、その実力を競い合う………。
「そこいらの旅人」にはレグニスさんをはじめ、桜花さんやキョウスケさんといった実力者揃いです。
きっと上位に食い込む事がきるに違いありません。
まぁ、不安要素がないわけでもありませんが、こういう戦いならきっと優夜さんだって、真面目に戦ってくれると思います。
だって活躍したら、それだけ注目を浴びるんですから。


ルルカ「と、いうワケで優夜さん。今日こそ腕の見せ所です」
優夜 「はい、右腕」

間髪入れずに差し出された古典的ボケに、わたしの思考は真っ白に染まりました。

レグ 「そういえば、奏甲バトルで桜花や優夜と戦ったことがあったな」
ブラ 「そういえばあったな……って待てレグ、もしやこのまま勝ち進めば、またあの決勝用特設ステージで歌うはめになるのか?」
レグ 「だろうな。なにか問題でもあるのか?」
ブラ 「ルルカ殿ではないが、私もさすがに二度もあれをやるのは……」

……そうでした。
この人には以前、そいういう前科があったんですよね………。
あの一件を忘れてしまうなんて、わたしらしくありません。
っていうか、色々ありすぎて、一々全部の事件を覚えきれないだけかも知れませんが………それそれで、ちょっと嫌かも。

ルルカ「ラルカ。壺を買ってきて下さい。優夜さんの身長くらいで、土に埋めるのにピッタリの壺を」
ラルカ「ん………」
優夜 「ひょっとしてそのツボで、オレをヌカ漬けにするつもりとか?」
ルルカ「いいえ。負けたらヘビとかミミズとかナメクジとかムカデとかと一緒に埋めて、誰が一番強いのかを確かめてみたいだけです」

確かそうする事によって、埋めた人を肉体改造するという秘術だとかなんとか………。
いえ、別に優夜さんに筋骨隆々とした英雄さまになって欲しいわけじゃありませんよ?
ただ、まぁ、せめてミミズやナメクジよりも、強い英雄さまであって欲しいだけです。

優夜 「むぅ………。するとライバルはダンゴムシか」

頼みますから、本当に………。

その63

前日から続いた『奏甲大会』ですが、今日はいよいよ本選です。
ある程度予想はしていましたけど、予選は圧倒的な強さで勝ち進んできました。

優夜 「ん〜〜〜。しっかし、そろいもそろって雑魚ばっかりだねぇ〜」

というか、レグニスさんやキョウスケさんが強すぎるんです。
桜花さんが、その二刀流を試す機会すらないんですから。

ベル 「ヒマだねぇ〜。桜花」
桜花 「取り敢えず、ここまでは強敵らしい強敵は、見受けられません」
シュレ「まぁ、ボクとしては整備が楽で済むからいいけどね」
ベル 「わたしはもっと目立ちたいー!」

優夜 「ハッハッハッ。ま、オレが居る以上、優勝は確実かな」

ベル&シュレ&ルルカ『お前が言うなぁ!』

まだ一度も対戦相手と剣を交えてないくせに、優夜さんは余裕綽々です。
三機の奏甲の遙か後方で、偉そうに座り込んでいるゼーレンは、ある意味注目の的ともいえます。
もっとも、優夜さんに戦うつもりが全くない事は観客にも判るんでよね。
だからブーイングの嵐です。

まぁ、そんなブーイングなんて、優夜さんにとっては子守唄みたいなものなんでしょうけど………。

レグ 「ふむ……。ところでだ、ブラーマ。今日の本選からは、アークブレードを使おうかと思う」
ブラ 「ほう? お前がナイフ以外の武器を使うとは珍しいな、レグ」
レグ 「ようやく『改修』が終わったことだしな」
優夜 「改修? なんの?」

レグニスさんが見せてくれたのは、綺麗に削られた『アークナイフ』でした。
削ったんですよね、コレ………。
毎晩毎晩、アークブレードを、この長さにまで………。

レグ 「なかなかに頑丈でな。作り直すのに苦労したぞ」
ブラ 「意外とこだわるな、レグよ……」

そして、いよいよ本選が始まりました。

優夜 「さて、誰が名誉に名を残すかな? この天凪優夜に討ち取られ、優勝を決められてしまった不幸な挑戦者という、最高の名誉を!」

優夜さん、優夜さん。
せめてそういう台詞は、せめて最前列に立ってから言いましょうね?
少なくとも最後列でゴロリと横になって、欠伸する格好までしながら宣言する台詞じゃありませんって。

っていうか、猛烈に恥ずかしいです………。


結局、「そこいらの旅人」は予選の勢いそのままに、本選でも対戦者を蹴散らし優勝を決めちゃいました。
もちろん、その間に優夜さんが援護らしい援護をした事は、ただの一回だってありません。
大会関係者の方が、呆れた顔で言ってました。
あんな機奏英雄、見た事がない………って。
そんなの当然です。
優夜さんみたいな人が沢山いたら、この世界は破滅ですから。

優夜 「ふ……。結局、オレが出るまでの敵はいなかったって事か」
ルルカ「寝言は寝てから言って下さい」
ラルカ「ユウショウ。ユウショウ」
優夜 「おーし。今日は祝杯だぁー! 遊ぶぞ、ラルカー!」
ラルカ「おーーー」

ラルカを肩車して、優夜さんは街の繁華街に出掛けていきました。
もちろん、わたしもその後を追いました。
周囲から突き刺さる白い視線に、泣きたい気分になりながら………。

………優夜さんの、バカ。

その64

奏甲大会を終えたわたし達は北に向かい、ノルデハフェンシュタットに到着しました。
南にシュピルドーゼを、東に幻糸鉱山を望むこの街は、アーカイア東岸4大貿易港の一つと冠されている港町です。
ザンドカイズ、ファゴッツランドとの間には定期航路が走っていて、盛んに貿易をおこなっているそうです。

その街で今、夜盗が出没しているというじゃありませんか!

ルルカ「人助けです! 出番ですよ、優夜さん!」
優夜 「え〜〜〜。またぁ〜〜〜?」

噂を訊き、宿に飛んで帰ったわたしを待っていたのは、優夜さんのヤル気のない声でした。
全く。よりにもよって『また』とは何でか。
仮にも優夜さんは英雄さん。人助けが職業の人なんですよ?

ラルカ「お兄ちゃん、英雄さん?」

って、ラルカに訊ねられたら、わたしはどんな顔をして答えたらいいんでしょうか?

優夜 「人助けねぇ〜。………あっ! いっそのオレ達が夜盗に転職するってのは、ダメ?」

……目眩がしました。
それはもう、立っているのが難しいくらいの、もの凄い目眩が。

レグ 「優夜が夜盗に転職か………」

と、そこへにレグニスさんとブラーマさんがやって来ました。
話を聞いていたらしく、穴があったら入りたいくらい恥ずかしくて………(涙)。

ブラ 「むしろ夜盗のほうがいやがるような気がするのだが……」

そういう問題でも、ないと思うのですが?

レグ 「その時は、俺が心置きなく斬ってやる」

ああ、なんて頼もしい言葉なんでしょうか。
思わずお願いしたくなりましたが、いけませんよね?
こういう事は、わたしがキチンと、責任を取らないといけませんから。

ルルカ「判ってますね? 本当〜〜〜にやったら、その時は………」
優夜 「………なんか、微妙に目がマジっぽくありませんか?」

……………。

だって、マジですから。

その65

町を襲ってくる夜盗の絶対奏甲。今日の依頼は、その夜盗を退治する事です。
それにしても、絶対奏甲を使って悪事を働くなんて、ヒドイ話しですよね。
絶対奏甲は奇声蟲を退治する事で、人々の安全と平和を守る為の武器だったハズなのに………。

優夜 「ま、どんなに優れた道具でも、結局は使う人間次第って事だよ」
ルルカ「………」

例えありふれた言葉とはいえ、驚きです。
優夜さんが、こんな真面目な言葉を口にするなんて………。
日頃から「もっと英雄らしく!」と言い続けてきた甲斐があります。

優夜 「と、いうわけで、オレのゼーレン弾切れだから、当てにしないように」
ルルカ「……………」
優夜 「いやぁ〜。機体を買うのに全財産つぎ込んだら弾薬代がなくなるなんて、困った困った」

軽やかな声で「困った」を連発する優夜さん。
頭イタイです。
弾切れを起した火力支援型奏甲の存在意義って、一体………。

ベル 「大丈夫よ、ルルカ。夜盗退治なんて、桜花が居れば楽勝〜楽勝〜♪」
シュレ「でも、やっぱり気を付けないと危ないよ」
桜花 「それもそうですが、己の心に負けた人達に遅れはとりません」
ベル 「ディモールト素晴らしい! おねぇ〜さん、その逞しぃ〜言葉を待っていたのだ!」

ベルティさん、キャラ変わっています………。

まぁ、実際のところ、ベルティさんと桜花さんの言う通り、夜盗はわたし達の敵ではありませんでした。
あっという間に取り押さえ、お縄にしちゃいました。
優夜 「楽勝〜楽勝〜♪」
レグ 「手ごたえのない敵だったな……」

ポツリと呟くレグニスさん。
夜盗退治を終えた後、わたし達は遅い夕食をとることにしました。
それはいいんですけど、どうして何もしていない優夜さんが、一番エラソウなのでしょうか。

ルルカ「全く。ほとんど何もしていないんですから、少しは恥じて下さい」
優夜 「まぁまぁ、そういう堅い事は抜きにして、祝杯祝杯♪」
ブラ 「手ごたえないのは〜私のほうだぁ〜〜」

と、いきなりブラーマさんが真っ赤な顔をして天井に叫び出しました。
何事だろうと思っていたら、その顔が微妙に………いえ、とっても赤いです。

ブラ 「だいたいだなぁ、レグ〜。私がいつも〜どんなに苦労を〜」
レグ 「誰だ、ブラーマに酒を飲ませたのは………」
ルルカ「ああっ! さては優夜さんですね! ブラーマさんにお酒を飲ませたのは!」

優夜さんは悪びれる事なく、むしろご満悦そうでした。
本当に、騒動を起すタメだけに生れてきたような人です。
もっとも、このPTには優夜さん以外にも、騒動が大好きな人がいるわけで………。

ブラ 「レ〜グゥ〜、ぎゅ〜ってしてくれ〜」
レグ 「……誰だ、さらにブラーマに飲ませた奴は………」
ベル 「キャァ〜〜〜♪ ギュ〜だって、ギュ〜。ブラーマも、ダ・イ・タ・ン♪」
レグ 「………今度はお前か」
ブラ 「ふにゃ〜〜」

レグニスさんは憮然とした面持ちで言いました。
でも、ブラーマさんはレグニスさんに支えられ、なんだかとっても嬉しそうでした。

ルルカ「……………」
優夜 「そんな顔をしても、ダメのダメダメ」
ルルカ「わ、わたしは何も言ってないじゃないですか!」

とか言いながら、自分の顔が真っ赤になるのを自覚するわたしでした。
はぁ〜〜〜。自己嫌悪。

その66

優夜 「ところでラルカは、ハイキングは好きかな?」
ラルカ「ハイキング?」

なんの事を言っているだろうと思っていたら、今日は幻糸鉱山に向かうのだそうです。
ラルカは不思議そうに小首を傾げると、はにかんだ笑みを浮かべていいました。

ラルカ「大好き。みんなでみんなでお弁当〜♪」
ルルカ「じゃあ、さっそく今からお弁当を作りましょうね♪ ……って、優夜さん!」
優夜 「ん? オヤツなら三百円までだぞ?」
ルルカ「そうじゃなくって、幻糸鉱山にハイキングコースはありません!」

幻糸鉱山といえば、シュピルドーゼの要所にひとつです。
その坑道ともなると、シュピルドーゼ支配者層とそれを活かす技術をもつ黄金の工房との間で、共同の秘所となっています。
本来なら、近くを通る事すら赦してくれないような場所なのですが………。

この鉱山に最近、巨大な魔物が巣食っているそうなのです。
幻とか勘違いではなく、既に何人もの人が襲われて、負傷者も出ているとか。
わたし達の目的は、原因の調査と魔物の排除。
とてもハイキングを楽しめるような状況ではないと思うのですが………。

ラルカ「………ハイキング、しないの?」

うううぅぅ〜〜〜。
ラルカに哀しそうな眼差しをされたら、まるでわたしが悪者みたいじゃないですか。

優夜 「道なき道を、ハイキング!」
ルルカ「それは既に、ハイキングではありません」

クギを刺しつつ、結局わたしはラルカと一緒にお弁当を作る事にしたのでした。

ちなみにブラーマさんとレグさんは………。

ブラ 「うう……頭が痛い………」
レグ 「飲みすぎたな。それはそれとして、今日は鉱山の探索だそうだ」
ブラ 「優夜どのに進められるままに酒を飲んで……レグに説教して……だめだ、そこから先を覚えていない。何があったんだ?」
レグ 「………」
ブラ 「………レグ?」
レグ 「……………」
ブラ 「わ、私はいったい何をしたんだ………」

と、いうわけで、いざ幻糸鉱山に出発です!

その67

ちいさい明かりを頼りに、わたし達は巨大な坑道の中を奥へ奥へと進んで行きます。
幸い、ここの坑道は優夜さんのゼーレンでも通れるくらい広いので、助かります。
多分、ここの坑道は奏甲を使って掘ったんでしょうね。その方がラクチンですから。

ブラ 「ふむ………。奥に進むにつれて、壁や天井の表面に、純度の高い幻糸の結晶が見えるな」
優夜 「売ったら高い?」
ルルカ「そういう事は言わないで下さい」
レグ 「それよりも妙な気配を感じるのだが………どうやらお出ましのようだな」

鉱山の最深部へと到達した途端、ソレは巨大な姿を現しました。
黒曜石のように昏く、不気味な光沢を帯びた漆黒の巨大な奇声蟲が………。
その巨大さといったら、確実に並みの貴族種の倍以上はあります。

そんな化物を相手に、皆さんの奏甲が勇ましくも一斉に飛び掛りました。

レグ 「戦闘開始………」
桜花 「参ります……!」
キョウ「どっからでもかかってきやがれ!」
優夜 「アルマジロモード、全開!」

ラルカ「? アルマジロさん?」

………。

たった一機、両手に楯を構えて丸くなっているゼーレンを除けば、の話しですけれど。
そもそも両手両肩に『楯しか』装備していないゼーレンって、どんな意味があるんでしょうか?
全くをもって、謎です。
それでも、戦力的には全く問題ないのが、このPTの頼もしいところですね。
坑道の中という狭く限定された空間とあって、多少手こずる場面もありましたが、最終的にはレグニスさんの一撃で決まりです。

レグ 「殲滅完了………」

静かな声色で、レグニスさんが呟きました。

桜花 「月々日々につよりたまえ、そは明日の我が身と思わん」

そして桜花さんも………意味は判りませんけど、凛とした声がカッコイイです。

優夜 「アルマジロモード解除! 無傷が勝利!」

……………(ブチンッ!)。
なにか今、もの凄く危険な音が自分の中から聞こえたような気がしました。
今のわたしなら、分厚い本だって引き千切れそうな気がします。

キョウ「ところでこの奇声蟲、なんでこんなところに棲んでたんだ?」
シュレ「………あ。ねぇねぇ、コレ見てよコレ」
ベル 「…………なに、ソレ?」

シュレットさんが見つけたのは、これまでに見た事のないような、純度の高い幻糸の結晶でした。
この結晶に、奇声蟲が引き寄せられたのでしょうか?
一介の旅人でしかないわたし達には、詳しい事はわかりません。
取り敢えず結晶を採掘して、帰路へつく事にしました。

優夜 「と、いうわけで、家に帰るまでがピクニックだ!」
ラルカ「出したゴミは、持ち帰る……」
優夜 「ピクニックの基本だ。後、捕まえたカマキリはお菓子の箱に入れること」
ラルカ「うん。箱に入れる………」
ルルカ「入れなくていいです!」

全く、変な事ばっかり教える英雄さまなんですから!
本当に頭がイタイです。


ベル 「そういえば、戦闘が終わったあとなんて言ってたの」
桜花 「あれはですね、正確に言うと『月々日々につよりたまえ、怠る心あらば魔出来すべし』と言って毎日の鍛錬が大切という事を言っているのです」
ベル 「なんだ、簡単な事じゃない」
桜花 「言葉では簡単ですが、それを本当の意味で実践できる人は稀です。私もまだまだですから……」

その68


ノルデハフェンシュタットに戻ったわたし達は、船を使って翼風諸島を経由して、ヴォレアインカウフェを目指す事にしました。
世界の果てとも言われる翼風群島………。
ここに訪れるのは、無謀な冒険家くらいと言われています。
実際、この島への航路を持っているのはヴォレアインカウフェの船だけだそうです。

まぁ、それだけヴォレアインカウフェの航海術が優れている証拠なんでしょうけど………。
どんなに優れたお船でも、揺れるですよぉ〜〜〜。

ルルカ「……世界が……回ってます………」
優夜 「やれやれ。船酔いで寝込むなんて、ルルカもまだまだお子様だねぇ〜」

だって、しょうがないじゃないですか!
わたしはお船なんて、エタファとボサネオを繋ぐ連絡船しか乗った事がないんですから。
それに船酔いとお子様の因果関係って、絶対に無関係だと思います。
その証拠に、ラルカは全然、大丈夫ですから。

ラルカ「お姉ちゃん、大丈夫?」
優夜 「ラルカはピンピンしているのにねぇ〜」
ルルカ「うぅ……気持ち悪い………」
優夜 「あ、そうそう。船に乗る前に麺類を食べると、吐いた時に麺が咽に引っ掛かって地獄っぽいから、気をつけるのが吉ですぞ?」
ルルカ「そんな助言、全然嬉しくないです………」
その69

ヴォレアインカウフェといえば、アーカイア東岸4大貿易港の最北の港です。
その特徴は、なんと言ってもその航海術と高い造船技術にあります。
機奏英雄の皆さんが召喚されるまでは、多くの力自慢が集まって、この港町に船の材料を運んでいたそうです。
その為、あまり大きな船は造れなかったそうですが、今では絶対奏甲を使って運ぶため、より大きな船を作る事が出来るようになったとか。

その船の材料となり木材は、フェアマイン方面から運んでいるそうなんですが………。

桜花 「最近、船の材料が襲撃され、破壊されたり強奪されているそうです」
シュレ「それって一体、何の為に?」
ベル 「そんなの決まってるじゃない。ヴォレアインカウフェに船を造られたら、損をする人が居るからでしょ」
シュレ「だから、それって誰? なんで損をするの?」
ベル 「そ、そんなの私が知るワケないでしょ!」
桜花 「いずれにしても、見過ごす事はできません」

こうしてわたし達は、今度建造する船の背骨である竜骨を運ぶにあたっての護衛を引き受ける事になりました。
相手は間違いなく、絶対奏甲です。
今までのことを考えると、必ず襲撃があるんだろうなぁ〜って思っていたら、やっぱりありました。
所属不明のプルパァ・ケーファが4機。街道の途上に立ち塞がっています。

もっとも、今さらケーファが4機襲ってきたところで、このPTの敵ではありません。
殆ど一瞬の内に、4機とも片付けちゃいました。
勿論、船の材料も無事です。
おかげで造船場の女性から、「これでもっと遠くへ行くことのできる、良い船が作れる。」と喜んでもらえました。
今度建造する船の名前に、是非とも機奏英雄の名前を借りたいとか。

ラルカ「フネさん、フネさん」
ルルカ「凄いですねー。将来、この舟は『ルルカ&ラルカ号』って名前になるかもしれませんよ」

初めて見る造船場に、ラルカは目を丸くして大喜びです。

ラルカ「うん。凄い」
優夜 「や、『天凪号』かもしれないぞ?」

何か聴こえたような気がしましたが、きっと気のせいです。

ルルカ「『レグニス号』『桜花号』『キョウスケ号』もいいですね〜」
ラルカ「凄くいい」
優夜 「『優夜号』も捨てがたいと思うぞ?」

はて? 今日は空耳が多いですね。

ルルカ「無事に完成して欲しいですね」
ラルカ「……うん。楽しみ」
優夜 「だったら『天凪優夜号』は?」

……風の囁きでしょうか?
まぁ、なんでもいいですけど、不吉な名前のお船には、乗りたくないものです。
エエ、本当に。

ブラ 「別にいいのではないか、ルルカ殿。『天凪優夜号』でも」
レグ 「そうか……」
ブラ 「ただ私は乗りたくはないがな。沈みそうで」
レグ 「……そうか……」

レグニスさん? 
その一瞬の間の意味は、なんですか?
その70

先日、お船の材料を襲う謎の襲撃者を退治したと思ったら、今度はまた別の襲撃者さんの登場です。
どうなってるんでしょうね、この街の治安は?

キョウ「で、敵は何処だって?」
ミル 「街の校外! 輸送キャラバンが襲われているんだって!」
優夜 「『また』輸送キャラバン? 進歩がないというか、オマヌケさんな話しだねぇ〜」
ルルカ「そんな呑気な事を言っている場合じゃありませんよ!」
レグ 「ほう。敵はハルニッシュ・ブルムが3機か。飛行型と戦うのは、これが初めてだな」
ブラ 「嬉しそうに言わないでくれ」
コニー「だぁ〜」

レグニスさんの言葉通り、飛行型の絶対奏甲『ハルニッシュ・ブルム』が3機、上空を旋回しています。
その下には立ち往生しているキャラバン隊の姿も見えます。
輸送中の絶対奏甲とおぼしき荷物は無事みたいですが、少なからない損害が出ています。

桜花 「では、参ります!」
ベル 「行っけェー、桜花ァー! そんなハエみたいな連中、やっちゃえやっちゃえー!」

ローザリッタァの二刀が、煌めく半月を描いた瞬間、1機のハルニッシュの腕が宙を舞いました。
これを合図に、両者の戦闘が一斉に開始されたワケなんですが………。

優夜 「アルマジロモード! アルマジロモード! アルマジロモォォォーーードッ!!!!」
ルルカ「やかましいです!」

戦場に木霊する恥ずかしい台詞に、わたしは顔が真っ赤になるのを自覚するのでした。
まぁ、幸いにして、味方に損害を出す事もなく、襲撃者を撃退する事に成功はしましたが………。

優夜 「あ〜〜〜。咽がカラカラ。疲れた〜疲れた〜」

この後、優夜さんは『謎の負傷』をする事になりました。
言っておきますけど、わたしがヤったワケではありませんので、あしからず。

それはともかくとして、輸送中だったあの奏甲は、一体なんだったのでしょうか?
少しだけ見えたカラーリングは、青と白。
わたしの知識の中には、該当する奏甲はありません。
う〜ん。謎です。でも、こういう事にあまり首を突っ込むのも良くありませんよね。
報酬金の他にアイテムも戴きましたし、メデタシメデタシと言う事で。

優夜 「し、しまったぁぁぁっっ!」
ルルカ「おや? 生きていたんですか、優夜さん?」
優夜 「アークチェインコートを受け取るのを忘れたぁ〜! これじゃ真のアルマジロになれない!」
ルルカ「……殴っていいですか? わたしの幸せの為に」
優夜 「できれば別の幸せを見つけてくれないかなぁ〜」
ルルカ「いいえ。わたしの幸せは、優夜さんの側にしかありませんから(ニコリ)」
ラルカ「お姉ちゃんの幸せ、ラルカも手伝う」
優夜 「………イヤン♪」

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