第十字学園の亡霊・前
 
 
 
あるところに、美しい黒髪のお姫様がおりました。
 
お姫様は歌うことが大好きで、いつも自分の部屋のなかで歌を歌っておりました。
 
しかし、お姫様は悪い魔法使いの呪いで歌うことはできても話すことができません。
 
それでもお姫様は歌いつづけました。
 
この歌が誰かの耳に届くことを信じて・・。
 

      ※      ※      ※
 

〜学園HR前の時間〜
 
シュレット「あ〜つ〜い・・・・なんか涼しくなる事は無いかな・・」
 
ベルティ「黙りなさい・・余計あついわ・・」
 
シュレット「そうだな〜ねぇ学校の怪談とかない?少しは涼しくなるかも」
 
ベルティ「怪談!?そりゃ学校だもの一つや二つは・・・」
 
シュレット「へぇ〜そうなの。で、どんなのがあるの」
 
ベルティ「さ、さあね、私は知らない」
 
シュレット「じゃあ、調べておいてよ。得意でしょそういうの」
 
ベルティ「わかったわよ」
 

ソード「騒がしい、とっとと席に着け」
 
 
 
ブラーマ「先生、新見君が来てませんが」
 
ソード「ああ、新見か。連絡があってな昼頃から来るそうだ」
 
優夜「むお、社長出勤とは忍君も偉くなったのものだ・・」
 
ルルカ「きっと夏バテでしょう、最近暑いですからね」
 
ラルカ「あつい、あつい」
 
カイゼル「ここは授業を全て入れ替えてプールにすべきだな」
 
サレナ「・・・バカな事言ってないでください・・」
 

ソード「で、さっきから気になっていたが何故蛍光灯が割れている?」
 

優夜「嫌だな〜、だれも朝っぱらからチャンバラやって蛍光灯を割っちゃったから
        みんなで見なかった事にしようなんて思ってないですよ〜、それは幻聴ですよ、幻聴」
 
カイゼル「あ、バカ・・」
 
ルルカ「そうですよ、それを言うなら幻覚です」
 
サレナ「・・いえ・・そうでなく・・・」
 

ソード「ほっほう・・とりあえず用務員室にいって、新しいのを持ってくるのが賢明だと俺は思うのだが・・」
 
悠然「割りたてのほやほやだから仕方ないでしょ」
 
由宇羅「どのみち、割れた蛍光灯の経費は特組が持つのですから・・とっとと取り替えてください」
 
小雪「え・・学校の備品なのに私達が持つのですか?」
 
桜花「自分達の責任は自分達がとる、この場合はまさにそのままです」
 
優夜「俺はたんにあの古狸がせこいだけだと思うのだがな〜」
 
ラルカ「校長代理・・たぬきさん・・」
 
ルルカ「そんな事言ってはいけません!優夜さんも変な事を言わないでください!」
 

ソード「いいから、新しいのを貰ってこい」
 

      ※      ※      ※
 

〜とあるオフィスビル〜
 
社員「忍ちゃんそれのデバックが終わったら上がっていいや、悪いね徹夜させちゃって」
 
忍「ああ、はい・・わかりました」
 
社員「ほんと助かるわ、もうここの会社の人間じゃないのにね」
 
忍「いいえ、この作品には僕もお世話になりましたから」
 
社員「そうだったね、でもこの企画もここまでかな・・いろいろ案は上がっていたけど・・」
 
忍「仕方ないですよ、時の流れには適いません・・」
 
社員「ああ・・そうだ、記念に没データのディスク持ってっていいやどうせ廃棄するんだし」
 
忍「そうですか、では話しの種に貰っておきます」
 
社員「そう言えば学校に通ってるって聞いたけど本当かい?」
 
忍「ええ、楽しいですよ。いろんな事があって・・」
 

      ※      ※      ※
 

そんなある日、お姫様の歌を聞きつけたの者がいました。
 
冷めた心を黒衣で隠し、今日生きる糧だけを求める銀髪の盗賊。
 
盗賊はお姫様を殺そうとしましたが、悪い魔法使いに何度も邪魔をされてしまいます。
 
お姫様は盗賊に歌が届くことを知り、彼のために歌うことにしました。
 
歌は盗賊の心を変え、盗賊は悪い魔法使いを倒し、お姫様を救い出しました。
 
しかし、盗賊とお姫様はそのあと大変な困難にあうのです。
 

      ※      ※      ※
 

〜昼過ぎ学校〜
 
忍「肝試し?・・・で、僕も強制参加なのですね・・」
 
優夜「おうともさ、君が混ざらず誰を誘うか」
 
ルルカ「・・・誰も耳を貸さなかっただけですが・・」
 
ベルティ「でも、まだ人数が微妙に足りない・・」
 
シュレット「んじゃ、そこの二人で決定!」
 
ブラーマ「何を話しているかと思えば・・」
 
シュレット(いや〜レグニスさんと夜の学校でドキドキってのもいいんじゃないですか、ブラーマさん)
シュレットが小声で耳打ちする。
 
ブラーマ(しかし、私は学級委員としてだな)
 
シュレット(学級委員だからこそクラスの安全を確かめるべきだと僕は思うな)
 
ブラーマ(それは、屁理屈ではないか・・)
 
シュレット(へぇ〜いいんだ、折角レグニスさんと二人っきりになれるようにしてあげようと思ったのに・・)

ブラーマ(いや・・その・・私は)
 
シュレット「レグニスさ〜ん、クラスで肝試しをするからブラーマさんが一緒に引率役をやって欲しいって」
 
ブラーマ「あ、おい。私はまだ・・」
 
レグニス「・・・・・・・・了解した」
 
ブラーマ「・・・・・むぅ」
 
優夜「ふむ、やるねシュレット嬢ちゃん・・では私もがんばらねばなるまい」
 
ルルカ「何をがんばるんですか・・」
 
優夜「決まっているだろう、今夜の肝試しの勧誘だ。ヘイ、そこの道行く小雪ちゃん!」
 
小雪「はい?」
 
優夜「お兄さんと一緒に楽しい夜を過ごさないかい?」
 
小雪「肝試しのことですよね、悠然さんから一緒に行こうと言われたので行きますよ」
 
それを聞いて悠然の所に詰め寄る優夜。
 
優夜「悠然く〜ん、人の楽しみをとらないでくれたまえ・・」
 
悠然「へ?だって朝誰でもいいから誘えって・・」
 
由宇羅「初めて聞きましたよそんな話し・・」
 
悠然「だって由宇羅はお店あるでしょ?」
 
少しムッとして由宇羅がまくしたてる。
 
由宇羅「小雪ちゃんをあなたにだけ任せるのは不安なので私も行きます!いいですね?」
 
悠然「・・・・・はい」
 
優夜「心配することはない、この優夜という大船がついている」
 
ルルカ「それを言うならどろ船では?・・もしくは船っぽいのトリックアートとか・・」
 
優夜「何を失敬な!いざ航海にでたら好き勝手やるだけだから安心だ」
 
由宇羅「外野は黙ってて!兎に角私も行きますからね」
 
優夜「むぅ、怖い怖い。それはそうと忍君、一つ頼みたい事があるのだが」
 
忍「なんです?」
 
優夜「あの、蛍光灯の代えを貰ってきてくれ、あとグローランプも忘れずにね」
 
忍「・・・さっきから気になってましたが、何をしたんですから」
 
優夜「ふっふっふ、それは秘密の中の秘密だ」
 
ルルカ「威張って言う事じゃないでしょう・・・」
 

      ※      ※      ※
 

〜用務員室〜
 
忍「ど〜も〜、特組の者ですが・・」
 
一階の下駄箱の隅にある用務員室、ほとんどの場合は生徒がくる事はまず無い。特組を除いて・・。
 
忍「いるんでしょ、丹羽(にわ)さん」
 
丹羽「なんだ・・またおまえ等か・・」
 
忍「蛍光灯が切れてしまったので代えが欲しいのですが・・」
 
丹羽「ふん。どうせ、悪戯坊主共が割ったのだろう」
 
忍「さあ、僕は詳細は知りません・・今日は午前中はシャーマンの子会社に出向していたので・・」
 
丹羽「つまらん、まだあんな所に出入りしているのか」
 
忍「昔のよしみです。それと報告する事があります・・」
 
丹羽「・・・なんだ?」
 
忍「例のあなたをモデルにさせてもらったゲームのシナリオは、途中で没になりました」
 
丹羽「くだらん、おまえ達が勝手に人の経歴をあさって作ったものだろう」
 
忍「それは、そうですけど・・・いいのですか、セールスが見込めればマリーさんは・・」
 
丹羽「それがくだらんと言っている!」
 
忍「・・すいません、出過ぎた事でした」
 
丹羽「相変わらずお節介だな・・」
 
忍「ええ、生まれる前からなので・・・」
 
丹羽「それなら仕方ない・・が、俺の中のマリーは俺のなかにしかいない・・幾ら完璧に心をトレースしてもだ」
 
忍「・・ええ、そうですね。確かにそうです・・でも・・」
 
忍「あの物語の中のマリーさんも、やっぱりマリーさんだと僕は思いますよ・・」
 
 
 
      ※      ※      ※
 
 
 
盗賊とお姫様は、あての無い・・けれど幸せな旅がしばらく続きました。
 
しかし、大きな戦争の混乱に巻き込まれ、
 
お姫様は死んだはずの魔法使いの呪いで恐ろしい魔女に変ってしまいました。
 
 
 
      ※      ※      ※
 
 
 
〜夜、学校内〜
 
人気の無い学園の中、数人の人影があった。
 
優夜「だいぶ、集まったな・・」
 
忍「カイゼルさん達も来ると言ってたのに、まだ来ませんね・・」
 
桜花「肝試しといっても具体的にどうするのですか・・」
 
優夜「んや、実は全然考えてない」
 
ベルティ「叩いていい?叩いていいよね?」
 
ルルカ「誰も止めませんけど、お勧めはしません・・喜ばせるだけですから・・」
 
ベルティ「・・・・そだね」
 
 
 
優夜「まあいいか、適当にみつくろって肝試しといこうか」
 
ベルティ「折角なんだから、男女ペアでいくべきよ」
 
優夜「じゃあ俺は・・」
 
ルルカ「危険です!私が一緒に行きます!」
 
優夜「それはつまらん・・」
 
ルルカ「つまらなくていいんです!」
 
シュレット「でも人数的に合わないよ・・」
 
現段階で参加者は優夜、ルルカ、ラルカ、忍、桜花、ベルティ、シュレット、レグニス、ブラーマ、悠然、由宇羅、小雪。以上十二名。
 
なんだかんだ言ったあげく、いつものメンバーがいつものとおりに組む事になった。
 
コースは学園内を一周して戻ってくるという簡単なもの、
 
1陣は、悠然、由宇羅、小雪の三人。
 

由宇羅「ほらほら、行きますよ」
 
悠然「そんな、引っ張らないでって・・」
 
小雪「大丈夫・・ですよね」
 

レグニス「引率と言っていたがあまり意味が無いようだが・・」
 
ブラーマ「いいのだ、近くに居ればそれでいいのだ!」
 
レグニス「そうか、まあいい」
 

優夜「んじゃ、お2人共第2陣でGO!!」
 
レグニス「見回りか、これは?」
 
ブラーマ「まあ、そんなものだ・・」
 

忍「で、人数問題が解決してませんが・・」
 
優夜「おっとそうか・・でも忍君にように男役がいないぞ・・」
 
忍「男役ってなんです、男役って・・」
 
シュレット「男二人で何ぐだぐだ言ってるかな・・・んじゃ忍ちんは僕と行こう、他だと角が立つし」
 
忍「・・角?」
 
シュレット「ルルカにはあれを任せておかないといけないし、桜花にもベルティを抑えてもらわなきゃならないし・・」
 
忍「消去法ですか・・」
 
シュレット「そんな所・・んじゃ行こうか」
 
 
 
ベルティ「変った組み合わせだわ・・」
 
優夜「うむ、深い意味はなさそうだがな・・」
 
ベルティ「でしょうねえ、チビスケはその辺の事には無関心だから・・」
 
優夜「俺はベルティちゃんの『その辺の事』に興味があるな〜」
 
ベルティ「うるさい、君はルルカとチチクリあってなさい」
 
優夜「・・チチ無い」
 
ルルカ「殴ってもいいですよ?グーで殴っていいですよね?」
 
ラルカ「グーでパンチ?」
 
ベルティ「いや御免。あたしが振っておきながらなんだけど、やめておいた方がいいわ」
 
二人とも優夜を生暖かい目で見てからため息をつく。
 
優夜「そんなに見つめちゃイヤ♪」
 
ベルティ「疲れた・・なんか急に疲れたわ・・桜花・・私と一緒に行って、もうぐだぐだよ・・」
 
桜花「はいはい、では私達は先に行きますので」
 
 
 
優夜「これで今の所、全員いったか・・」
 
ルルカ「優夜さんが先頭に立っていかないのは珍しいですね・・」
 
優夜「ふっふっふ、死の館にようこそ・・・」
 
ルルカ「いえ、ただの夜の学校ですってば・・」
 
優夜「果たして何人無事でいられるかな・・ラルカ準備だ」
 
ラルカ「うん」
 
ルルカ「この人は〜またラルカを巻きこんで・・」
 
優夜「いや、今回は君もだルルカ君」
 
ルルカ「私は何もしませんよ!絶対酷い事になるんですから・・」
 
優夜「では、ルルカ君。何もせずに酷い事になるのと、少しは楽しんで酷い事になるのと、どっちの料理ショー?」
 
ルルカ「え〜と、う〜んと・・それは・・」
 

      ※      ※      ※
 

盗賊は、魔女になってしまったお姫様を救おうとしました。
 
しかし、魔女のお姫様は平然と盗賊を傷つけます。
 
それでも盗賊は呆れらめません、盗賊には確信があったのです。
 
お姫様はけっして呪いには負けないと、
 
魔女のお姫様が盗賊にとどめを刺す寸前、
 
お姫様は正気に戻り大声で叫ぶのでした。出ないはずの声を振り絞って、
 
しかし、それは盗賊に向かって最後の魔法が放たれた後でした。
 
哀れ盗賊はその魔法によって石に変えられてしまいました。
 
石になってしまった盗賊を見て、お姫様は手に入れたばかりの声で泣き叫ぶのでした。
 

      ※      ※      ※
 

悠然一行・・。
 
悠然「どうせ、誰かが仕掛けを作ってるんだろうから・・」
 
由宇羅「それは、そうでしょうけど・・」
 
小雪「でも、やっぱり夜の学校は怖いです・・」
 
由宇羅「それに、行く前に渡されたこの学園報特別版ってなんです?」
 
悠然「ああ、学園の七不思議をまとめようとして紛失したいわくつきの・・」
 
小雪「うう・・私は見たくないです・・」
 
由宇羅「まあ、そんなに危険は無いでしょう。ここは『学園』で、これは『肝試し』なんですから」
 
小雪「そうですね、さっきから後ろから誰か着いて来ますけど、それなら安心です」
 
悠然・由宇羅「「え゛・・・」」
 

      ※      ※      ※
 

次のレグニス一行は・・。
 
ブラーマ「しかし、こうして見ると学園も随分雰囲気が違うものだな」
 
レグニス「そうか、そういう事か・・」
 
ブラーマ「レグ、どうしたのだ?」
 
レグニス「いや、お前が俺を呼んだのは引率ではなかったのだな」
 
ブラーマ「そ、そうか。わかるか・・」
 
レグニス「ああ、これほど危険な殺気があるのだからな・・」
 
ブラーマ「・・・ふぅ・・・一つはいつもの事として・・・殺気とは?」
 
レグニス「かなりの者だな・・ブラーマ安全な所まで送ろう、俺はその後様子を見る」
 
そう言ってブラーマをかつぐレグニス。
 
ブラーマ「お、おいレグ!?」
 
レグニス「喋るな、舌を噛むぞ」
 
ブラーマの視界が勢いよく後ろに流れる。
 
 
 
      ※      ※      ※
 

忍「なんか静かですね・・」
 
シュレット「そりゃ、学園は広いからね・・」
 
忍「それも、そうですね・・」
 
シュレット「そういえば、忍ちんちょっと聞いていい?」
 
忍「ええ、なんです」
 
シュレット「なんだがさ、休み明けから桜花のことさけてない?」
 
忍「・・・そうですかね」
 
シュレット「なんとなく・・まあ、言いたくなきゃ聞かないけどさ・・」
 
忍「・・・はあ、まあ・・なんというか・・」
 
シュレット「まあ、がんばれ少年!僕は何もしないけどね」
 
忍「はあ、がんばります・・あ、携帯が鳴ってる・・すいません。ちょっとでますので・・」
 
シュレット「ダメだな〜こういう時は電源を切らないと」
 
忍「ほんと、すいません」
 
廊下の角を曲がりに階段の前のフロアで電話にでる。
 
ハカセ(遅いよ、忍君。僕からは滅多に電話をしない事は知ってるでしょ?)
 
忍(わかってますけど、今は忙しいのですよ・・)
 
ハカセ(わかってる、学園で肝試しでしょう、いいね若い人達は・・)
 
忍(何で知ってるんです・・)
 
ハカセ(まあ、僕も管理を任されているからね、あまり首を突っ込まないつもりだったけど・・)
 
忍(けどって、まさか・・)
 
ハカセ(さすがに察しがいいね、今回の依頼のクライアントが君のいる学園なんでね)
 
忍(今じゃなきゃ、いけない依頼なんですね・・)
 
ハカセ(そういう事、コードR#04Dが没になったのは聞いてるね)
 
忍(デッドさんをモチーフにしたシナリオですね、今日僕も聞きました)
 
ハカセ(なら、話しは早い。今日未明にプログラム途中の電子体プロト7が自立起動し、更に何者かによって持ち去られた)
 
忍(プロト7って・・まだ、ソフトウェアが決まってないじゃないですか・・)
 
ハカセ(そして、本日夜半過ぎに僕はそのプロト7によるアクセスと思われるログを幾つか発見した)
 
忍(・・で、プロト7には誰のデータが入ってるんです)
 
ハカセ(ログを追うと、この学園のしかも一人の人間を調べている・・)
 
忍(R#04D・・と、プロト7・・・まさか、デッドさんを・・じゃあプロト7は・・)
 
ハカセ(そう・・キャラクターネーム『マリーツィア・アルハイム』彼女が今のプロト7だ)
 
 
 
      ※      ※      ※
 
 
 
お姫様は歌う事をやめました。
 
歌う代わりに剣をとり、
 
旅の途中で教わった盗賊の技を思い出し、
 
黒衣にその決意を宿し、一人世界をさまよい歩きました。
 
盗賊を元に戻す方法をさがすために。
 

そして、何年も何年も時が過ぎ、お姫様が盗賊の歳を越した頃、
 
その願いがようやくかなうのでした。
 
石の魔法がとけた盗賊は、強く美しく成長したお姫様に再開し
 
盗賊には聴きなれた、お姫様には懐かしい歌声があたりに響くのでした。
 

めでたし、めでたし
 

      ※      ※      ※
 

忍(誰がそんな事をしたのです)
 
ハカセ(それは今僕が追跡中・・それと期限は今晩しかない)
 
忍(何故です?)
 
ハカセ(順を追って説明しよう・・今、その学園のネットワークを完全に孤立化させた。これでプロト7はネットワークへ逃亡する事はできない)
 
忍(随分大胆な事をしますね・・)
 
ハカセ(クライアントのOKが出たのだからいいんだ、しかし問題はシャーマン側にある)
 
忍(いったい何をする気なんですか、シャーマンは?)
 
ハカセ(プロト7は秘匿処理が出来てないからな、明日中には存在するサーバもろとも削除する気らしい)
 
忍(ちょっと待ってください、だったら学園側は自分のサーバ内に留めない方がいいじゃないですか、サーバーが無くなってしまうのに・・)
 
ハカセ(まあ、そこにある記録を消してでも見られたくない物があるんだろうな、
         それと正確な依頼を告げるぞよく聞け『プロト7の破壊もしくは学園外への逃亡阻止』だ、しかしお前はプロト7に接触するな。いいな)
 
忍(破壊なんてできませんし、接触するなってどういう事です)
 
ハカセ(忘れたのか?おまえはあのシナリオの中で紫城を開放していたんだぞ、その記憶がプロト7に残っていたらどうする?)
 
忍(・・・・・すいませんけど接触するなというのは聞けません・・)
 
ハカセ(なに、どういう事だ)
 
忍(もう、発見されました・・)
 
階段を見上げる忍の視線の先・・・大きな窓を背に背の高い長い髪の影が立っていた。
 
黒を基調にした複雑なの織り上げられたドレスを身に纏い。両手には細長い剣を携えている。
 
マリー「見つけたわ・・あなたがいなければデッドは・・」
 
ゾッとするほど冷たい視線を送る。
 
忍「・・・これが、あのマリーさんなのか・・?」
 
忍はシナリオ後期のマリーを知らない、あくまで概略を読んだのみだ。
 
そこにいるのは成長したマリーの姿であり、初期とは表立った性格も技量も全て違っていた。
 
マリー「あなたがいたからデッドは・・」
 
一段、一段階段をゆっくり降りてくる。
 
マリー「ゆるさない・・・・」
 
細身の剣が新月の闇に閃いた。
 
 
 
・注釈
 
今回の話しは本編のデッドとマリーの物語がゲームのシナリオだったら・・というIFで構成されています。
本編と学園はストーリー的な繋がりはありません・・・・。

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