※これは学園版の新見忍の視点で書かれています。
※特組のキャラクターを無断で使ってしまってますが、
 『うちのはこんなんじゃない!』というのがありましたら直します。
※なるべく毎日書こうと思ってますが、挫折したときはお察しください・・。

六夜


学校で生活していると、教えてもらう事が多いですね。
授業の内容や掃除の仕方、あとは集団生活に必要な事等‥。
 
では、人に物を教えた事はありますか?
これが以外と難しいんですよ。
 
まずほとんどの場合は口で伝えるので、この時点でうまく説明できない場合がほとんどでしょう。
 
自分でわかっていても、いざ口に出すとうまく言葉に出来ない。
アールさん曰く『それは自分の中で完全に言語化できてないんだ」
だそうです・・。
 
『ある事柄を説明する時に、自分の中で短くわかりやすい言葉になっているか』
が重要なのだそうです・・。
 
そこで自分自身が再認識しやすくなるというプラス要素もあります。
 
で、説明できて次に重要になるのが、相手が理解している事をどう自分が理解するか
になるわけですが・・。
 
これは事柄によりますが、相手の口から直接聞くとか動作ならやってみてもらう等があります。
『確認』ということになるのですが、以外とこれを忘れがちです。
 
一度自分がうまく説明できれば伝わったと思ってしまいますから・・。
 
「優夜さん!遊んでないで真面目に掃除をしてください!」
「いやだなあ僕はいたって真面目だよ」
「真面目にふざけてるとでも言うのですか!」
「その通り♪」
 
・・・あとは、教わる側にその気が無いと無理なんですけどね・・。

七夜


先日の事です。
 
とある喫茶店で、僕は喜司雄さんといっしょに特大のパフェを食べていました。
 
「幸せそうだな・・」
喜司雄さんはむっつりしながら僕を見てます。
 
「はい、とても、とても幸せです♪」
それはそうです、念願のだったパフェを今こうして食べてるのですから。
 
「・・つまらん」
喜司雄さんは更に呟きます。ちなみに喜司雄さんは水だけです。
 
「どうしてですか?」
せっかくのお出かけなのだから、もっと楽しそうにすればいいのに・・。
 
「どうして?それを聞くか?おまえが?どうしても言われてしぶしぶ付き合っている僕に?
 男女の甘い物好きが、カップルのしかも女性限定でしか頼めないスペシャルメニュー食べたさに、
 女装してやってきた連れの僕に『どうしてつまらない』と聞くのか?」
 
喜司雄さん日本語になってません、あと説明ありがとうございます。
 
「喜んでもらおうと思って、いつもよりおめかししたのに・・」
そうです、いつもの倍の時間をかけたのですよ。
 
「嬉しくない、論点がずれてる・・」
喜司雄さんは相変わらずむっつりです。いけませんもっと人生楽しまないと・・。
 
「では、せめてカップルらしくいきましょう。ほら口を開けてください」
僕はアイスをすくって喜司雄さんに口に運んであげました。
 
「ええい、これじゃあ。本当にカップルじゃないか」
「いやだな〜てれないでください・・」
「あきれているんだ・・」
喜司雄さんはノリという物がわかっていません。これでは人生の70%を棒にふってます。
 
「だいたいお前はなぁ!」
と喜司雄さんが言いかけた時でした。
 
「ひどい・・そんな人だったなんて」
突然後ろから声が掛かりました。
 
振り向くと、長い髪を大きなリボンでとめた女の子がこちらを向いていました。
 
「・・・あ・・これは・・」
喜司雄さんが凍りついています。
 
「私や・・桜花さんという人がありながら・・」
女の子はわなわなと震えています。
 
「ちょ・・これは、誤解だ美空ちゃん・・」
美空ちゃん?それを聞いて思い出しました。
例の喜司雄さんがもっていた写真の桜花さんと一緒に写っていた女の子です。
 
写真を見た翌日、桜花さんから話しを聞いたのですがなるほど・・。
 
「喜司雄さんの気持ちを察して、私は身を引いたのに・・」
何か話しが面白い方向に修羅場です・・。
 
「み・・美空ちゃん・・だから誤解だって・・」
 
「他の人と楽しそうにしてるだなんて・・」
『美空ちゃん』はまったく聞こえてないようです・・。
 
「ふう・・ばれてしまっては仕方がありません・・」
「ややこしい事を言うな!!」
ここは『つまらない』と言った喜司雄さんに楽しんでもらいましょう。
 
「・・桜花さんには適わないから身を引いたのに・・・」
 
「美空ちゃ〜ん、お願いだから話し聞いて〜」
喜司雄さんは半泣きです。
「仕方がないです。美空さん実は私と喜司雄さんはもう恋人同士なのですよ」
「なに言うかな!君は!おい!」
もうここまできたら最後まで楽しんでもらいましょう。
 
「ああっ!やっぱりそうなのですね・・」
そう言って『美空ちゃん』は泣き崩れました。そして・・。
 
「私達を差し置いて、こんな綺麗な男の子と恋人になるだなんて・・」
 
「「721(なにぃ)」」
僕と喜司雄さんはその場で凍りつきました。
たぶん、僕達の後ろをでっかい擬音が駆け抜けたことでしょう。
 
え、うそ・・ちょっとまってください。僕・・完全に女装しましたよ。
いくら同じ学園でもそうそうばれない自信があったのですが・・。
 
「美空ちゃん!それこそ誤解だ!」
喜司雄さんが叫びます。
 
おっとそうです、誤解です。大誤解ですよ!僕と喜司雄さんが・・男同士でそんな・・。
 
「これはもう・・やけ食いしかありません!!」
『美空ちゃん』はそう言っていつのまにか手に持っている特大パフェを食べ始めました。
 
あれ・・僕の分はここにあるのでそれは『美空ちゃん』が頼んだ物のようです、ということは・・。
 
「そのへんにしておけ美空、二人とも凍り付いている」
男の人が現れました。
 
「志度・・・おまえ・・」
喜司雄さんが凍結から開放されて呟きました。
 
「えっへっへ〜♪驚きました♪」
ニッコリと笑う『美空ちゃん』・・・どうやら嘘泣きだったようです・・・。
 
「喜司雄、そもそもお前が悪いんだぞ、転校してきて美空に挨拶もしてないそうじゃないか」
喜司雄さんを軽く睨んでその人は続けます。
 
「それは・・」
「言い訳無用!余裕が無かったとは言わせないぞ」
ピシャリと志度と呼ばれた男の人は言い放ちます。
 
「あれ・・志度って、もしかして・・」
そう、桜花さんに聞いた話しで聞いたことがあります。
 
「ああ、すまない。こいつがあんまり無慈悲な人間だったから少し驚かしてやったのだが・・君まで巻き込んでしまった」
僕に向き直り丁寧に挨拶をしてくれます。
 
「紹介が遅れた、こっちは叶美空(かのうみそら)15歳、同じ学園で俺の妹だ」
「美空です♪驚かしてごめんなさい。新見忍さんですね。話しには聞いていましたが、本当に綺麗ですね、驚きました」
そう言って舌を出しながら深々とお辞儀をしてくれました。
いや、こっちも相当驚きましたよ・・・。
 
「で、俺が叶志度(かのうしど)喜司雄が世話になってるね」
「いえ・・それより叶ってもしかして・・」
叶志度・・その名前を別の場所で聞いた覚えがあります・・。
「うん、察しがいいね。さすが特組だ、そう学園の副生徒会長でもある」
そうです、副生徒会長の叶さんです。だったら僕の事を知っていたのは納得できます。
 
「ふう、だいぶ騒がしてしまったね。すこし落ち着こうか・・喜司雄、美空の相手をしてやってくれ無論断らないよな?」
「へいへい・・わかりましたよ・・」
ぐったりしていた喜司雄さんが美空さんに連れられていきます。
「でも・・少し残念です。喜司雄さんと忍さんが本当に恋人だったらそれはそれでドキドキだったんですけど」
美空さん・・・物騒な事は言わないでください・・・・・。
 
「まあ、あれはついでだったんだが・・君と少し話がしたくてね・・」
そう言って志度さんは僕を席に促してくれました。
 
この時点で僕は気が付くべきだったのかもしれません。特組という異常性を内包する学園自体も十分普通ではない事を・・。

八夜


昨日は長く書きすぎてしまったので続きです。
 
「とりあえず何か頼むかい?」
席に座り直して志度さんは僕に聞きました。
 
「いえ、まだこれが食べ終わってないので」
と、まだ半分残った特大パフェを指差します。
 
「そうか、なら俺はコーヒーを頼むかな・・ああそれと、
 驚かせたお詫びに俺が奢らせてもらうよ」
「そんな、悪いですよ・・」
内心ラッキーと思いましたがこれも礼儀です。
 
「いや、そうさせてくれ。これから少し話を聞かせてもらうわけだしね」
「わかりました。そこまで言うなら、お受けします」
『話しを聞かせてもらう』というのが気になりましたがまあいいです。
 
「で、なんの話しです」
「うん、君は同じ特組のアーデルネイドさんと親しいのだよね」
「まあ・・それなりに・・・」
アールさんの事?・・それなら特に問題はないかな?
 
「彼女が何か?」
「ああ、彼女が公安委員会に所属しているのは?」
「知ってますよ、それくらい」
委員会に誰が所属するかは特組のみんなで決めましたし。
 
「では、公安委員会の本当の設立目的は?」
「・・・さあ、知りません。生徒会の内部補助機関だと聞いてますが」
まあ校長代理曰く、『表向きは』だそうですけど・・。
 
「ふむ・・まあいいだろう。では、特組以外の公安のメンバーが
 生徒の自由意思で決められたわけではない。という話しは?」
「そうなんですか?全然知りませんでした」
 
「・・・・新見君」
志度さんは腕組みをしてこちらを見直しました。
 
「お互い、回りくどいことはやめよう、今日は情報交換しに来たんだ」
「僕はあなたが交換してもらいたいほどの情報なんて知りませんよ」
少し雲行きが怪しくなってきました。はぐらかすのは無理のようです。
 
「君が『シャーマン』の『電子体』でもかい?」
「・・・何のことです・・・」
 
「噂だよ、電子企業『シャーマン』。主にIT産業を軸に展開し、
  不況と言われる現在でもなお業績は上がっている。一年前から東証一部に上々しているね」
 
「ニュースはあまり見ませんが、名前は聞いたことがあります。ゲームとかも作ってますよね」
「そうだね、特に今年から力をいれたようだね」
 
「で・・そのシャーマンにどんな噂があるんですか?」
「擬似人格というのはわかるかな、よく漫画にでてくるよね」
「ええ、まあ。人間が人間を作ろうという話しですね」
 
「そう、シャーマンは既にそれに成功しているという噂さ」
「そんなおとぎ話みたいな事があるんですか?どうせ都市伝説の類でしょう」
 
「都市伝説・・ね。便利な言葉だ。とりあえずそう言えば全ての話しは眉唾になる」
「だって証拠が無いじゃないですか・・」
 
「見てみたいかい・・・?」
志度さんと僕の視線がぶつかりました。
困った、証拠を見たい気もするし、それが僕自信に関わることなら厄介だし・・。
 
「・・いえ、いいです。それより僕も学園の噂を少し知ってますよ」
「へえ、なんだい」
「さっき志度さんの言っていた公安委員会のことです。メンバーがどうとは知りませんが
 上の教育委員会の方からせっつかれて高等教育過程を要する教育機関に同じに出来たそうですね」
 
「へえ、それは初耳だ」
「で、その公安委員会は生徒ではなく、教育者、又は学校そのものを監視するためにあるという話しです」
「それは面白いな・・・まるで漫画だ」
「ですよね・・どちらも出来そこないのおとぎ話ですよ」
「そうだな・・」
「そうですね・・」
 
しばらく二人とも沈黙を守ります。このまま引き下がってくれるといいのですが・・。
 
「で、最初の話しに戻るけど。アールさんは自分の意思で公安に入ったんだね?」
「そうです、校長代理も確認してます」
「そうか・・・なるほどね」
 
再び沈黙・・嫌なんですよね・・こうゆうのは・・・。
 
「ありがとう、それを確認したかったんだ。あの学園もいろいろあるからね・・」
「そうですね、校長代理も今年度からと急遽決まったそうじゃないですか」
「詳しいね」
「そりゃ自分の通う場所の事ですから・・」
 
そこで、その日の話しは終わりました。
帰り際に、美空さんが、
「こんど家にも寄ってください」
と言ってました。後で喜司雄さんに聞いたら叶さんの家も喫茶店をやってるそうです。
 
更に志度さんは、
「新見君、今日はありがとうまた頼むよ」
と言われてしまいました・・・。『何を』『頼む』のでしょう・・あんまり考えたくないです。
 
おまけに例の写真もあの志度さんが撮ったのだそうです。
叶志度・・何を考えているのか。
 
兎に角、僕の事を少し知っているようだし・・困りました。
別に内緒にしてるわけじゃにですけどね。
ここだけの話し、確かに僕は『シャーマン』が保有している『電子体』でしたけど、それも以前の話しです。
今は担当だったハカセと一緒に平々凡々とやっているだけ、それ以上でもそれ以下でもありません。

九夜


人間好きな事をする時は楽しいものですが、それを待っている時も十分楽しいものです。
 
例えば、好きな映画の前売り券を買って公開を待ったりとか、
旅行ガイドを見て、旅先の土地の風景を想像したりとか、
 
なかなか会えない恋人とメールや電話などやりとりで、再開の日に思いをはせるとか。
 
そういう時の人間の想像力は凄いものがあります。
あまりに想像の翼が広がりすぎて、実際の楽しみしていた事が霞んでしますぐらいに・・。
 
だからそうやって『想像して楽しむ時間をほどよく』楽しめる人は自分をよくわかっているんだなと思います。
 

「さあて、今日はどんなトラブルが起きるかな♪」
(ああ・・・どうか優夜さんが大きなトラブルを見つける前に、小さなトラブルが起きますように・・)
 
何を楽しむかまでは強制できませんが・・。

十夜


毎日何かを続けるというのは大変ですね、
この日記も今までなんとか続いていますが、どこまでやれる事やら。
 
「男女・・・いいからそこをどけ」
 
人がせっかく寝起きの頭をつかって日記を考えているのに・・喜司雄さんはやっぱりひどい人です。
 
「ここは僕のベットじゃないですか、何処にどけと・・」
「おまえ、寝ぼけているだろう、回りを見てみろ」
 
回りですか・・おおう、目線が高い・・。
 
「きっとこれは夢ですね・・僕のベッドがこんなに高くなっているとは・・」
「いいからさっさと起きろ!なんで寝たまま2段ベッドの上によじ登ってこれるんだ」
「いやあ、我ながら大したものです」
「寝ぞうが悪すぎだ!」
 
「そんな事を言ったら喜司雄さんだって、僕の上でよくいびきをかくじゃないですか」
「2段ベットの上と言え!聞く人が聞けば誤解しかねない」
「いやだな〜今更照れるなんて・・」
「それをやめろと言ってるんだ!」
 
まあ、僕が朝が苦手なのは事実ですけど。
学校とか、他人との約束があるときはちゃんと起きるのですが、
私用しかない時はどうもだらだらとしてしまいます。
 
私用でも大事な用事はあるのですが、朝は全てをどうでもよく思わせてくれます。
不思議です・・。
 
外面がいいと言われてしまえばそれまでですが・・。
 
「今日はお休みじゃないですか・・だからもう少し寝かせてください・・」
そうです、眠い時は寝る。これに限ります。
 
「どれだけ寝ても眠いものは眠いぞ」
「む・・言いますね。それは誰の言葉です?」
「このまえ喫茶店で会った悪友の言葉だ」
「志度さんですか・・むう、なかなかやりますね・・でも、やっぱり眠いです」
 
「おい!今日は、図書館を教えてくれる約束だろう」
あれ・・そんな約束しましたっけ・・?
 
「完全に抜けてやがるな、このスカタン!」
「約束なんてしましたっけ?」
 
「お前が、強引に付いて行くといったんだろう!嫌だと言ったら、お前は街中で泣き出すしこっちは変な目で見られるし・・」
そうそう、先日の件で美空さんから嘘泣きを教わりました。
 
そういえばそんな事もあったような・・。
 
「おおう、思い出してきました・・。喜司雄さんの困った顔」
「そっちは思い出さなくていいから、さっさと用意しろ!」
 
という訳で、今日は惰眠をむさぼる事ができませんでした。
他人との約束を忘れる事もたまにはあります・・。
 
それだけ、親しくなったと思って欲しいのですが、それは僕の甘えでしょうか?

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