※これは学園版の新見忍の視点で書かれています。
※特組のキャラクターを無断で使ってしまってますが、
 『うちのはこんなんじゃない!』というのがありましたら直します。
※なるべく毎日書こうと思ってますが、挫折したときはお察しください・・。

三十一夜
 

お役所仕事は嫌いです・・。
 
え、何かっていうとですね。
 
いろいろと申請に着ているのですよ。シャーマンに・・。
 

なんだかんだであそこが僕の戸籍を保証してくれているので、
 
でも、今日は掃除当番なのではやく学園に戻らなければならないのですが。
 
「新見忍さんですね、申請書類に不備があります、別途用紙を参照して再提出してください」
 
受付嬢のお姉さんがやさしく突っ返してくれました。
 
「ええ〜何処ですか〜」
 
「写真に社員証が入ってません、3分間写真も不可です。住所は番地も正確に入れてください。また住所の『大字』の省略は可です。
 情報技術検定二級はの『二級』はアラビア数字で書いて下さい。申請項目の欄は鉛筆書きです。それ以外は水性ボールペンでお願いします。それと・・」
 
「もういいです。自分で見て書きます・・」
 
「はい、申請期限は本日の午後3時までになってますので」
 
どこぞの銀行だってもう少し待ってくれるのに・・。
 

あと5時間も無いじゃないですか・・。学園を遅出にしてもらっているのに・・。
 
うう、これで掃除をしないと後で10倍になって帰ってきます、それだけは阻止せねば・・。
 
ここから学園に戻るまでは。どうがんばっても2時間は掛かります。
 
掃除開始も午後3時・・あと3時間です。これは授業を全て無視した時間なのでできるだけはやく戻るべきなのですが・・。
 
とりあえず、新しい申請用紙はもらったので書き直しはすぐ済みます。
 
問題は写真ですが・・この頃の3分間写真もかなり精度が上がっているので、上の役員の叔父さん方はわからないでしょう・・。
 
僕はコンビニで水性ボールペンを買うと、その横の3分間写真機で写真をとりました。
 
写真の枠にスーツの社員証が入りづらかったですが・・。
 
え、14のくせにスーツを着るのかと?
 
しょうがないじゃないですか!シャーマンは会社なんですから申請写真はスーツ着用ですよ!ええ特注ですとも!
 
いいんです!スーツは漢の戦闘服ですから!ちなみに紺色です。ネクタイもありますよ。
 
・・・・じゃなくて、ちゃっちゃと書類を書かなくちゃ。
 

書類上は、僕は『紅野紫城の弟』になってます・・・不本意ですが。
 
なので、実は僕は紅野家の人間になるのです。桜花さんの弟・・みたいなものです、むぅ!?敵を作りそうだな・・。これはオフレコです。
 

よし出来た。写真も持ってシャーマン本社にGOです。
 
バタバタとオフィス街を走り抜ける14歳のスーツの少年・・・。
 
いいんです。切羽詰っているんです!今は気にしていられません。
 

で、再び受付のお姉さんと対決です。
 
「はい、では拝見します・・」
 
ひとしきり書類を調べるお姉さん・・今度は不備は無いはずです。
 

「はい、記入は大丈夫ですね。あとは写真ですが・・」
 
「はいはい、ここにあります」
 
たしかズボンの後ろのポケットに・・。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無い・・。
 
「あれ、こっちかな・・」
 
逆のポケット・・無し。
 
上着のポケット・・・無し。
 
スーツの裏ポケットも無し。
 
「どうしました?」
 
「撮り直してきます・・・・・・」
 
甘く見た罰でしょうか・・無くしてしまったようです。
 
しょうがないので駅近くの写真屋さんで撮ります。最初からこうしておけば良かったのですが・・。
 

以前の申請のときはここを使ってたので、特に問題は無いです。
 
ここはデジカメで写真を撮ります。文明の利器はここまできてるんですね。
 
で、ここで写真屋のお姉さんが予想外の発言をしました。
 
「仕上がりは30分後になりますので」
 
「え、デジカメだからすぐプリント出来るんじゃないですか?」
 
以前は楽チンポンでしたよ。
 
「すいません、以前はそうだったんですけどいろい仕様が変りまして・・」
 
「なんとかなりませんか?」
 
「すいません、決まりなので・・」
 
うう、お姉さんにそんな顔されたら何も言えません・・。
 
時間がもったいないので昼食をとってから写真を受け取り、三度シャーマンへ・・。
 
「はい、ご苦労さまでした」
 
受付のお姉さんは営業スマイルで応えてくれました、ほんとご苦労さまですよ・・もとは自分が悪いのですが。
 
急いで電車に乗って学園に戻ったのが、ぎりぎり2時50分もちろん授業は終わっています。
 
「おや、忍か?遅かったな何しに来たんだ?」
 
アールさんが不思議そうに向かえてくれました。
 
「・・・・・・・・・・・掃除」
 
僕は汗だくでまだ肩で息をしています。
 
「まあ、それはいいがあまり見ない格好だな」
 
おおぅ・・スーツのままだ・・・。
 
「何も・・・・聞かないでください・・・」
 
で、アールさんとスーツのまま掃除をしました。
 

やっぱり、お役所仕事は嫌いです。

三十二夜
 

今日は学園帰りにゲームセンターへ寄り道です。
 
「よし、今日こそは絶対に買ってやる」
 
喜司雄さんの付き添いで・・。
 

昔は不良の溜まり場とか言われていたそうですが、最近はアミューズメント施設として明るい雰囲気を出した物が多いですね。
 
ちなみにシャーマンも少しはアーケード産業に関わっていたそうですが、今はあまり作ってないようです。
 
ゲーム自体の開発費と機械の製造費はかなりのものだそうで、最近は飽きられるのが早く採算が取りづらいという話しを聞いたことがあります。
 
ネットワークゲームや携帯電話の普及等、その他の媒体で娯楽に時間を使う人が増えたので、
こうして施設に足を運ぶ人は減少しているようです。
 
そんな中でも製作者の人達は工夫と創造で、理想と現実の境界を歩んでいるのです。
 

「よしよし、今日は調子がいいな」
 
喜司雄さんは対戦型のゲーム機にずっとへばりついています。
 
僕達が来たのは駅前の大手メーカーのチャーン店舗で、ビデオゲーム、プライズゲーム、メダルゲームと一通り揃っています。
 
ビデオゲームは僕も感覚的にわかりやすいですが、プライズや更にメダルゲームになるとどうも・・。
 
メダルゲームは主にスロットやポーカーとかになるのですが、
それを年端もいかない子供が遊んでいるのは、あまりいい絵とはいえません。
 
見ると、毎日来ているようでスタッフの人と気軽に話している子供もいます。
 

「しのぶよ〜両替お願い」
 
一通り回ってきたらいきなり、お札を渡されました。
 
「ほどほどにした方がいいんじゃないですか・・」
 
「いいんだ、今日はこいつに勝つまでやめない」
 
かなりやる気です・・。
 
しょうがないので両替をしようと機械にお札入れました。
 
「あ、間違えた・・」
 
よく見るとそれはメダル貸機でした。大きくメダルと書いてあります。
 
どうしたものか回りを見ていると。
 
「どうなさいましたか?」
 
お店の派手なシャツを着たスタッフの人が聞きに来てくれました。
 
「すいません、両替と間違えてしまったのですが・・」
 
「はい、少々お待ちください」
 
そのスタッフの人はテキパキと応対をしれくれて、程なく別のスタッフが現れてお札を返してくれました。
 
「両替機はあちらになりますので」
 
「どうもすいません・・」
 
両替を済ませて喜司雄さんの所に戻ってみると、
 
「しのぶ〜遅いから負けちゃったぞ・・」
 
「ああ、ちょっとトラブってまして・・」
 
硬貨をわたして、先ほど喜司雄さんが遊んでいた機械を見ます。
 
「あれ、誰も対戦しないのですか?」
 
「ああ、ひとしきり周りもがんばってたけどまったく歯が立たない、奴が一人用でゲームが終わるまで休憩だ・・」
 
「そんなにうまいのですか・・」
 
「なんかな、次元が違う・・・そうだ、お前やってみれ」
 
「え、僕ですか?」
 
「そうだ、そして肌でその格の違いを感じるがいい」
 
「随分肩を持ちますね、知り合いなんですか?」
 
「話しはした事はないけど、ずっとここでやってるからな、身内みたいなもんだ」
 
「そうですか、ではとりあえず・・」
 
以前他社のデバックでやって事があった物なのでまあなんとか・・。

三十三夜
 

ゲームセンターでの対戦の続きです。
 
相手は向かいに座っているので顔はわかりませんが、とりあえず拳で語り合う事にしましょう。
 
ゲームはよくある対戦格闘ゲーム、百円を入れてスタートです。
 
キャラクターは適当に選んでおきましょう、ゲームを見て技は全て思い出しましたし・・。
 
 
で、対戦内容ですが・・。
 
先に結果を言えば僕が負けました。
 
ゲームの癖や戦い方は知っていましたが、ユーザー独自で開発した戦法に僕は対処できませんでした。たいしたものです。
 

「なんだ、結構うまかったじゃないか」
 
喜司雄さんが素直に歓心しています。
 
「ええまあ、以前やったことがあって・・」
 
「でも、今のは最後に追い討ちをかければ勝てたんじゃないか・・」
 
「ああ、まあそうですけど・・」
 
「なんだ、情けをかけたのか、これは真剣勝負で・・」
 
と、喜司雄さんのお説教が始まろうとした時、
 
 
「あそこで技をかけるとバグになる、知っていたんだろう?」
 
見ると十代後半ぐらいの男の人が話しかけてきました。さっき対戦していた人のようです。
 
「はい」
 
「そうか、でもあのバグはヴァージョンが変ってから取り除かれたから、それを知っていればあの試合は君の勝ちだったよ」
 
「そうでしょうか?有利にはなりますけどわかりませんよ」
 
「君は面白いな、久しぶりに熱くなったよ。あのバグを知っていたという事は、このゲームをかなり遊んでいたんだね」
 
「いえ、ネットでたまたま知っただけですから」
 
「そう?それにしては他の戦い方もイケてたけどな・・初期の戦法ぽかったけど」
 
「久しぶりに遊んだので・・」
 
「ふうん、だったらいろいろ教えようか?君ならすぐ強くなりそうだ」
 
「いえ、あまりこちらには来れないのです」
 
「そうか・・遠征か何かだと思ったんだけど残念だな・・」
 
「でも、このゲームは出て1年近く経つのにたくさんの人が遊んでますね」
 
「ああ、僕が好きなだけさ。仲間内で遊んでいたら火がついたらしくてね、遠くからやってくる人もいるみたいだよ」
 
「新しいゲームもたくさん出ているのに、ずっとこれなんですか?」
 
「うん、確かに目新しいのは出てるね。これも新作がそこで動いてるし」
 
「なら、なぜこれにこだわるのですか?」
 
「新しいのが出てもね、やっぱりいい物はあるんだよ。だいぶこのタイプのゲームも出てるけど、もう進化というよりは好みの問題になっていると思うんだ」
 
「好き嫌いみたいなものですか?」
 
「簡単に言えばそうだね、新しい物はそれだけでよく遊ばれるけど、それだけで終わらせたくない物もあるしね」
 
「新しい物が必ずしも優れていないと?」
 
「いや、まあそう有るべきだとは思うけど。これは遊ぶ方のスタンスかな『僕達はこれだけ楽しんだぞ』というのを残しておきたいんだ」
 
「遊ぶ方のスタンス?」
 
「うん、そうだな・・缶蹴りって昔あったじゃない。ただ缶がそこにあるだけでルールを作り遊ぶ事が出きる、
 遊ぶ側の工夫次第でね。ビデオゲームだって遊び道具にはかわりないだろう、遊び方はある程度決まっている楽しみ方はいろいろあるしね」
 
「遊ぶ側の工夫ですか・・」
 
「そう。今はその工夫がしにくくなってきたけど、そうゆう自分から楽しんでいるというスタンスは忘れたくないんだ。
 僕達も缶蹴りの缶を与えられたように、このゲームでいろいろ工夫して楽しんでいるってね」
 
「ゲーム、好きなんですね・・」
 
「こればっかりはね・・だから製作者の人達もどう遊ばせるのか、よりもどう遊ばれるのかを考えて欲しいんだ」
 
「僕は製作者じゃないですよ?」
 
「うん、それはわかる。でも、君はどちらかといえば与える側の人間だと思ってね。
 だから聞いて欲しかったのかな、与えられる側もこれだけやっているんだぞって事を」
 
「そうですか・・知り合いにそうゆう人がいるので伝えておきます」
 
「そうか、ありがとう。また時間があったら来てよ僕はだいたいここに居るから」
 
「はい、また来ます。必ず・・」
 
その人と軽く握手をして僕は店をでました。名前はあえて聞きませんでした、次に会えたら聞こうと思います。
 
 
「なあ、あの人と何を話してたんだ?」
 
喜司雄さんが慌てて追いかけてきました。あ、すいません忘れていました・・。
 
「秘密です。男と男の約束ですから・・」
 
「ふん、秘め事多い奴だな・・」
 
「知ってます?男は少しぐらい秘密があるとモテルそうですよ」
 
「それ誰の言葉だ?」
 
「今僕が考えました」
 
「経験が伴わないと信用できないな・・」
 
「それどういう意味ですか?」
 
「さあね、自分の胸に手を当てて聞いてみな」

三十四夜
 

「暑い・・・」
 
日曜の午後、寮の中でだらだらと過ごしています。
 
「忍よ〜なんか涼しく過ごす方法はないのかね・・」
 
喜司雄さんも既にノックダウン中です。
 
「むぅ〜僕は休んでしまった分の課題が溜まって大変なんですから、邪魔をしないでください」
 
「やめとけ、やめとけ。こんな暑い中じゃおわりゃせんよ・・」
 
そうです。だいぶ学園を休んでしまったので課題が山のように・・。
 
パソコンで打てれば早いのに、何で全て手書きなんですかね。
 

「とにかく僕は静かな所を捜しますので邪魔しないでくださいね」
 
ここにいてはいっこうに進まないので筆記用具一式をもって一階へ・・。ちなみに僕らの部屋は二階の210号室です。
 
寮は男子寮と女子寮にわかれてますが、他にも学園の寮が幾つかあります。
 
ここは古い方に入るらしく、木造2階建てでクーラー等はもちろんありません。
 

一階に来ましたが、やっぱり何処も同じようです。
 
ちなみに女子寮だけはクーラー完備です。これには納得行かなかったのでアールさんに聞いてみたのですが、
 
「妙齢の女性が暑いからといってそうそう肌を見せるわけにもいかんだろう?」
 
・・・・まあ、すぐ近くに男子寮もありますしね。
 

とりあえず食堂が静かだったので、しばらく課題を進めていると、
 
「なんで、私達の部屋だけクーラーが故障なのよ〜」
 
「しょうがないよ、室外機だから僕もどうにもできないし・・」
 
ベルティさんとシュレットさんです。
 
「あら、少年。こんな所で勉強?偉い偉い」
 
「そっか、男子寮はクーラーも無いんだね、みんな溶けてない?」
 
「ええ、だいぶ溶けてますね・・僕は静かな場所を捜してここに来たんです」
 
「聞いてよ忍君、桜花と寮長の部屋に行こうとしたら寮長が取り込み中だからダメだっていうのよ」
 
「へぇ何にしてるんですかね」
 
「それがね、教えてくれないの。桜花は本家に出かけているから寮長だけしか居ないはずだけど」
 
「よし、確かめに行こう!いくよ、忍君!」
 
「え、僕もですか?でも、課題が・・」
 
「いいから、いいから後でみんなで手伝ってあげるから・・」
 
そうして僕は女子寮に連れて行かれました。
 
女子寮って普通男子が入ってはいけないのでは?

三十五夜
 
 
で、女子寮に来ました・・。本当に来ていいのかな僕は・・。
 
ちなみにアールさんと桜花さんの部屋は211号室です、同じ建物なら僕の部屋のとなりになりそうですね。
 
「でも、どうやってはいるの?さっきはよっぽどの用事が無い限りは来ないようにって言われたし・・」
 
「簡単じゃない、兎に角その『よっぽどの用事』を作ればいいのよ♪」
 
「無茶苦茶ですね・・」
 
目的のための手段なのか、手段のための目的なのか・・。
 
「んじゃあ、忍くんGO!」
 
「ええ、僕ですが?用事なんて今はないですよ・・」
 
「さっきの課題を手伝ってもらうとかなんとか言ってさ、とにかく入っちゃな」
 
「そうそう、寮長〜♪忍君が用事があるって〜」
 
しばらくして部屋の奥から、
 
「今取り込み中だから勝手に入れ」
 
アールさんの声がしました。
 
「?何をしているのでしょう・・」
 
「まあまあ見てきなさい、そして後で報告するように」
 
そう言ってベルティさんが僕を部屋に放り込みました。本当に無茶苦茶です・・部屋のクーラーで一緒に涼むという話しだったはずですが・・。
 
「ふむ、で。どうしたのだ」
 
「いや、用という程の事は有ったり無かったりしなくも無くも無いっぽいのですが・・」
 
喜司雄さんが初めて来た日以来、久しぶりです。
 
あんまりジロジロ見るのは失礼なのですが、ついつい目があちこちにいきます。
 
まず本がたくさん積んであります、アールさんの本でしょう。
 
隣の桜花さんの机は綺麗にかたずいていますが、殺風景な感じはしません。
 
何か部屋全体が機能的な感じがします。
 
「で、何しに来たのだ?」
 
「え、ええと課題をするために静かな場所を捜してたんですけど・・」
 
いきなり呼ばれてつい本来の目的が素直に出てしまいました。
 
「そうか・・それで女子寮にくるのもどうかと思うが、桜花が戻るまでならいいだろう。
 テーブルがあるから適当に使え」
 
「あ、はい。では遠慮無く・・」
 
という訳でなんとなくここで課題をする事になりました。
 
アールさんはじっと机で一点を見つめています、考え事でしょうか・・。
 
しばらく時間が経ってから寮内放送がかかりました。
 
「寮長のアーデルネイドさん、寮長のアーデルネイドさん。面会が来ています応接室までお願いします」
 
アールさんにお客さんのようです。
 
「ふむ、誰だ?ちょっと出てくるが忍はどうする?」
 
「ええと、できればここに居たいかな〜と・・」
 
「そうか・・とりあえずおとなしくしていろ、ここは女子寮なのだからな」
 
「わかってますって」
 
そしてアールさんは部屋を出て行きました。
 
すると間を置かずに・・・。
 
「よし、作戦成功!」
 
「たまたま、寮長にお客さんが来ただけじゃん・・」
 
ベルティさんとシュレットさんです、ずっと近くに居たのでしょうか・・。
 
おもむろに座ると、ため息をつきながらベルティさんが呟きました。
 
「はあ、どこかにいい男は居ないかな〜」
 
「そんな事をいっているようじゃ無理無理」
 
「なら、どうすればいいか言ってみなさいよ」
 
「う〜ん、微妙だね。僕の周りには完璧すぎて相手がなかなか現れないの人と、声を掛ける人に必ず相手がいる人しか知らないし・・」
 
「何よそれ!やる気!」
 
「いやぁ〜、男運が無いのどっちかな〜て話し」」
 
二人は適当にくつろいで世間話をしています。っていうかシュレットさん言いすぎです・・。
 
僕はもくもくと課題に集中していました。
 

日差しがだいぶ傾いた頃・・。
 
「ふぅ・・だいたい終わった・・・って寝てる」
 
声が聞こえないと思ったら二人とも寝ていました。
 
アールさんも戻ってきません。
 
「どうしようかな・・」
 
アールさんに一言挨拶してからと思ったので、なんとなく帰りづらいです。
 
 
 
そんな事を考えているとドアが開きました。
 
「ただいま戻りました・・・これは」
 
「あはははははは、すいませんお邪魔してます」
 
桜花さんです。しかも外行きの綺麗な洋服を着ています。そういえば本家に用事があったと言ってたような・・。
 
 
「・・・・できればこの状況のいきさつ説明してもらえると・・」
 
普通はもっと驚くと思ったのですが、さすがというかなんというか・・。
 
で、自分と寝ている二人の今日の行動を簡単に説明しました。
 
 
「そうですか、二人ともしょうがないですね」
 
「ええ、起こしましょうか?僕もお邪魔でしょうから退散しますよ」
 
「そうですか。その前に二人を部屋に運ぶので手伝ってくださいますか?」
 
「いいですよ」
 
桜花さんはベルティさんを、僕はシュレットさんをそれぞれ半分引きずりながら移動しました。
 
隣の部屋なのでラクチンですが・・。
 
ちなみにベルティさんとシュレットさんの部屋はいろんな意味で散らかってました。
 
何か見てはいけない物を見てしまったような感じです・・。
 

桜花さんが「お茶でも飲んでいかれますか?」と聞いてくれましたが、
これ以上はさすがにまずいと思ったのでおいとまする事にしました、窓から・・。
 
さすがにこれには桜花さんも驚いてました。
 
「堂々と玄関からは出れませんよ、いちおう規則がありますし・・」
 
「それもそうですね」
 
「そうだ、変な事を聞きますが。桜花さんはもっと規則とかに厳しい人だと思ってましたよ・・」
 
窓越に出かかりながらする会話じゃないですが・・。
 
「規則は確かに大事です。ですが頭ごなしに全てを否定していては見えないものがありますからね。
 規則を守らせるよりは自然に守ってもらうようにするのが最良だと思います。でも、今後こういう事はいけませんよ」
 
「はい。わかりました」
 
なにか素直に返事をさせる人です。人徳というやつですかね・・。
 
で、男子寮に帰って来たわけですが・・。
 
「何!?女子寮に居たと!」
 
「はい、まあいろいろありまして・・」
 
「それは、まあなんというか」
 
「羨ましいですか?」
 
「馬鹿!そんなことは無くも無くも無いぞ・・・」
 
「喜司雄さんて意外ととウブなんですね」
 
「お前に言われたくは無い」
 
今日は平和な一日でした。

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