〜決断!それぞれの価値〜(後編)

夜も深まり、それぞれが寝室で休む頃
温泉喫茶キャロルの周りを怪しい影が取り囲んでいた
??B「配置完了、いつでもいけます」
??A「多少手荒でも構わないそうだ。目標以外の殺傷も認められてる。ぬかるなよ」
??B「はっ、では」
??A「作戦開始だ」

ソード達の寝室にて
ネリー(うぅ・・・お酒飲み過ぎて頭いたい〜・・・)ベッドの上でうなるネリー
ソード「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
ネリー(ソードさんは熟睡モードなのかな・・・やっぱりお酒強いんだ・・・)
カサッ
微かな物音
ネリー(ソードさんが寝返りでもうったのかな)
ガバッ!
いきなり口を押さえられ拘束されるネリー
ネリー「・・・っうきぁ・・・」
ソード「落ち着け・・・静かにしろ」
ネリーを押さえつけていたのはソードだった。
ネリー「・・・ぅぅん・・・ぅぅんん・・・」
ソード「落ち着いたか」
ネリー「こくこく」
うなずくネリー、手を放すソード。
ネリー「いったいなんなんですか・・・も、もしかして・・・欲求不満・・・」
最後の方は消え入りそうな感じで呟くネリー
ゴツッ!
ネリー「痛い・・・」
睨み付けた後、小声で話しだすソード。
ソード「あほな事言ってる場合じゃない。様子がおかしい」
ネリーも合わせるように小声で話しだす。
ネリー「なにかあったんですか」
ソード「いや、押し殺した殺気が・・・10人・・・これから何か起こるってことだ」
カシッ!
二階に設けられた部屋の窓枠の方から何かが引っかかったような音がする。
ソード「来たか・・・そこでじっとしてろ」
ネリー「は、はい」
ソードは隙のない歩き方で窓に近寄っていく。
窓まで来ると両開きの窓をおもむろに開け放ち。
ソード「何の用だ」
窓を鉤詰め付きロープで昇ってきている怪しいやつに話し掛ける
??C「っく!?ちぃ!!」足についたホルスターから銃を引き抜く
ジャキッ
??Cの頭にポイントされるソードの銃
??C「なっ?」
ソード「何者だ」
??C「・・・答えると思うのか」
ソード「いや」
??C「なら、どうするつもりだ」
ソード「脅す位はするつもりだ」
??C「っくそ、道連れだぁ!」素早い動きで手榴弾のピンを抜く
ソード「馬鹿が」
ドンッ!
ソードはあやしいヤツの額を打ち抜くとダッシュでネリーの元へ
ネリー「どうしたんです!なにがあったんです!」
ソード「いいから走れ!」
混乱するネリーを抱きかかえるようにしてダッシュするソード
バグォォォォン
部屋を出たと同時に爆音、横っ飛びして廊下に伏せるソードとネリー
ソード「自爆・・・やってくれる」
ネリー「なななな、なんなんですかあ!!」

突然の爆発音は温泉喫茶キャロルにいる面々に例外なく届いた。

二階サレナの部屋にて
サレナ「なにっ!?いったい何が起こったの!?」爆音に目を覚ますサレナ
ガシャーーン!!
驚くのもつかの間に部屋の窓が割られ、黒ずくめの怪しいやつが入ってくる
サレナ「なっ!?なんなんですかあなた!?」
??B「ようやく見つけましたよ、さぁ!こっちに来てもらいましょうか!」
ゆっくりとサレナに近づいてくる??B
サレナ「いや・・・いやぁぁ!」
ドバン!
百合菜「はぁぁぁああああああっ!」
サレナの部屋の入り口の扉が吹っ飛んだかと思うと弾丸のような速さで百合菜が突進
百合菜「はあっ!!」
畳んだ鉄扇で??Bの左側頭部を強打
百合菜「せいっ!」
相手がよろけたすきに右側部に裏拳
??B「か、はっ・・・」激しい脳震盪をおこして倒れる
百合菜は黒づくめの男の胸にある紋章を見つけ
百合菜「これは・・・残党がいたというの・・・」
サレナ「姉さん!」百合菜に走っていき抱きつくサレナ
百合菜「無事ね、よかったわ」
サレナ「っぅぅ、怖かったよぉ・・・」
百合菜「もう、すぐ泣かないの。ほら、王子様もきたわよ」
カイゼル「サレナァァアァ!!・・・って・・・あ・・・」
走って駆けつけたはいいが姉妹が抱き合ってる姿に言葉をなくすカイゼル
サレナ「カ、カイゼル様・・・」顔真っ赤
カイゼル「あー、その、なんだ、無事でよかった」
百合菜「他の人たちは」
ソード「人間の方は大丈夫だ、建物は半壊状態だがな」
ネリー「でも、キャロルちゃんとネレイスさんが・・・」
カイゼルと違って歩いて来たソード達は少し送れて到着。
カイゼル「あいつらならきっと大丈夫だろう、なんだかんだで場慣れしてる」
ネリー「そ、そうなんですか・・・」
サレナ「心配・・・です」

そのころ一階、ネレイスの寝室では
??D「ちぃ、こいつじゃねぇ」写真(サレナと百合菜の幼い頃のもの)と照らし合わせながら愚痴る
??E「じゃあ構うな、さっさと他を探すぞ」
??F「ふへっ、ふへへへへっへへへ。でもいい女だぜ、このままほっとくのももったいないよな」
??E「遊んでるヒマはないぞ」
??F「いいじゃねぇかよ!少しくらい!」
??D「馬鹿!大声だすな!」
ネレイス「・・・ぅぅん・・・」
??D「起きたか・・・」
ネレイス「・・・すぅ・・・すぅ・・」
??E「驚かせる・・・貴様が悪いのだぞ」言って??Fを小突く
??F「さわんじゃねぇよ!このケチクソ野郎が!」
??D「だから大声だすな!」
むくり
ネレイス「ぅぅん?・・・喧嘩はいけませんよぉ・・・」寝ぼけ眼であやしい3人を見つめる
??D「起きちまったかなら仕方ない」
??E「くそ、できるなら殺したくはなかったが」
??F「とりあえず半殺しでぇぇぇぇ、そのあといただぁぃぃきぃ。」
ジャキッジャキッジャキッ
ネレイス「あらあらぁ・・・そんなおもちゃみたいな銃出してぇ・・・お茶目さん?」
??D「な、なにいってんだコイツ」
??E「パニック状態なんだろう、憐れな・・・」
??F「ふへっふへっふへっふへっふへっふへっふへっふへっ!やっちまえぇ!」
ネレイス「それはぁ・・・無理です♪」
ジャキン!ダラララララララララララララララララララララ!
ネレイス、布団の下からマシンガンを二丁取り出すといきなり掃射
怪しいヤツらは揃って倒れた。
ネレイス「はい、では応急処置しますね。じっとしていてください」
急所を外してはあるものの何発か弾丸が打ち込まれた傷口を応急処置するネレイス
??D「あっ、ああ、あ、あ、あ、あ、あ、」
??E「うぁ・・・しみる・・・」
??F「何ものだぁ!おまえぇ!」
ネレイスはテキパキと3人の応急処置すませ布団にすまきにすると
ネレイス「メイドです」
笑顔で応えて部屋を出て行った。

玄関ロビーの所でカイゼル達と合流したネレイス。
そのままキャロルの部屋へ急いだ一行は静まり返った部屋へ付くと不安な面持ちで扉を開けた
ネレイス「誰もいない・・・ですね」
ソード「布団は温かい、どっかに隠れてるんじゃないか」
カイゼル「こんな時にいったいどこへ」
サレナ「キャロルちゃん・・・」
暗い雰囲気が一同を包む。その時、喫茶店の方から叫び声があがった
キャロル「よっくも、おうちを壊してくれたなぁぁぁ!キャロルキィィィィック!!」
どげしゃぁ!!
??G「げっはぁ!」
キャロル「絶対許さないんだからぁぁ!キャロルカァード・スライサァァ!」
シュピシュピシュピ!
??H、I「がっ、つぁっ!」
キャロル「ホントに許さないんだからぁあ!」
??J「わ、悪かった、な、ほらアメあげるから許して、ね、お嬢ちゃん」
キャロル「ほほぉ、キャロルの家と飴玉一個は等価値ですかぁ。へぇぇぇぇ」
??J「ちが、違うよ。ね、そんな怖い顔しないで。そうだ!おじさんがなんでも好きなもの買ってあげよう」
キャロル「何でも・・・そだね〜、じゃあとりあえず『おじさんをぶちのめす券』買って」
??J「へっ????」
喫茶の扉前にて
カイゼル「・・・扉開けたくないんだが・・・」
ネレイス「・・・開けないといろいろな意味で危ない事になりそうですし・・・勇気です、カイゼル様」
サレナ「キャロルちゃんって・・・」
カイゼル「・・・あ、開けるぞ」
バコーーーン!!
カイゼルが扉を開けようとした瞬間、吹っ飛ぶ扉
カイゼル「うぉ!?」
サレナ「きゃっ!?」
吹っ飛んだ扉を下敷きにして黒ずくめのあやしいおじさんが倒れている。
キャロルはゆっくりと腕を組むと高らかに叫ぶのだった。
キャロル「成敗!」

温泉喫茶キャロルから離れた小高い丘の上、テントが張られたあやしいヤツらの仮本部
??A「ぜ、全滅です!やつらおかしいですよ!」息を切らして駆け込んでくる
???「役立たずですねぇ・・・仕方がない、絶対奏甲を出しなさい」
??A「なっ!?本気ですか!?」
???「誰のせいでこんなことになったと思っているんです。いいからやりなさい」
??A「・・・了解しました」

ズゥゥンズゥゥンズゥゥンズゥゥン
夜明けとともに絶対奏甲達が横に並んで行進してくる。
いきなりの轟音に温泉喫茶キャロルから外へ出たカイゼル達は驚愕した。
カイゼル「絶対奏甲だと・・・ヤツら町を破壊するつもりか」
ソード「なりふりかまっていられなくなったんだろうよ・・・何が目的かは知らんがな・・・」
百合菜「・・・・・・」
ソード「誰か知ってるヤツがいるのなら喋ってもらった方がこちらとしてはありがたいのだが」
百合菜に視線を向けるソード。なにやら勘付いているようだ。
百合菜「・・・ヤツらは私とサレナを狙っているわ」
ソード「ほう、何故わかる」
ネレイス「そういえば、私を見てこいつじゃないとか言われていました」
百合菜「・・・やつらの服に付いてた紋章・・・あれは私が昔いた研究機関のものだわ」
ソード「ふん、いつのことだか知らんが、つまり貴様が脱走してそれを追ってきたというわけか。いい迷惑だな」
ネリー「・・・ソードさん」
カイゼル「なら、何故サレナまで狙われる」
百合菜「奏甲バトル・・・あんな所にノコノコ出てくるから情報が漏れたのよ、サレナが生きてるって」
サレナ「姉さん・・・」
百合菜「まったく、私が幼い頃庇った意味がないじゃない・・・」
カイゼル「愚痴を言ってても仕方ないだろう、とりあえずヤツらをどうにかいしないと」
ソード「逃げる・・・のは無理だろうな。ここまで派手な事をやらかす連中だ、包囲も厳重だろう」
カイゼル「ソード達だけなら逃げられるんじゃないのか」
ソード「まぁ、なんとかなるかもしれんがな・・・逃げるよりはこっちの方が簡単そうだ!」
ジャキン!
ルスフォン印のパニッシャーを構えるソード。
カイゼル「な、生身で奏甲とやりあう気か」
ソード「なに、そんなに難しいことでもないさ」
ネレイス「では私も・・・っと!」
両手にグレネードランチャー、背中にバズーカを担いだ状態でにこやかに笑うネレイス。
百合菜「やるしかないなら、やってみましょう」
鉄扇を広げ気を練り始める百合菜
キャロル「おうちをこれ以上壊されてたまるかー!」
飛翔歌術で宙に浮くキャロル
カイゼル「俺はそうだな・・・非戦闘員の保護役だ」
ネレイス「カイゼル様、はい」
様々な重火器が入ったカートをカイゼルに押し付けるネレイス
カイゼル「はい・・・っておまえ、一応聞いておくが何させるつもりだ」
ネレイス「失礼とは重々承知しておりますが事が深刻なため武器運搬係をお願いいたします」
カイゼル「俺は主人思いなメイドを持って幸せだよ。ネレイス」引きつった笑顔
ネレイス「はい、ご主人様」屈託のない笑顔
サレナ「・・・私達は安全なところに逃げてましょうか・・・」
ネリー「はは、はははは・・・」
ソード「相手機体はシャルU3機。とりあえず各自散開して攻撃開始、まとまったら蜂の巣だ、覚悟しとけよ」
ネレイス「了解!この感覚・・・久しぶりです・・・くく、くくくく」
カイゼル「ネレイス・・・」
ネレイス「あらあら・・・失礼しました、さ、行きましょう。カイゼル様」
百合菜「まずはかく乱からね・・・私が突っ込むわ」
キャロル「戦闘開始〜!」

操縦者1「なんだあいつ等、生身で突っ込んでくるぞ」シャルUマシンガン装備
操縦者2「いくらなんでも馬鹿過ぎだろ、かまわねぇやっちまえ」シャルUブロソ装備
操縦者3「滅殺!!」シャルU鎖つきハンマー装備。カイゼル達めがけて振り下ろす。
ボグシャァ!!
地面に突き刺さるハンマー。
カイゼル達は破片をそれぞれ避けると散開した。

町の広場にて
ソード「サブマシンガンが厄介だな、まずあいつを叩く」
サブマシンガン装備のシャルUの後ろに回りこむソード
操縦者1「そっちか!命知らずの馬鹿が、死ねぇ!」
ダラララララララララララララララ
ソード「くっそ!以外にカンがいいじゃねぇか」横っ飛びでなんとか避けるソード
百合菜「加勢する」百合菜、姿勢を低くして走って来る。
ソード「待て!おまえは素手も同然だろうが!」
百合菜「知らない」
百合菜、シャルUの足元に到達するとジャンプ。
百合菜「強化歌術!」
シュォオオオン!
百合菜が高速で歌を紡ぐ。鉄扇に歌術で編み上げられた幻糸が収束する。
百合菜「ちぇえええぇぇい!」
ズシュ!
鉄扇一閃。マシンガンの砲身を切り取る。
スタッ
百合菜着地。唖然と見上げるソード
ソード「歌術・・・なんでもありだな・・・」
百合菜「とどめ、お願い」
操縦者1「なんだ!?なんなんだコイツら」
ソード「了解した」
尻餅を付いているシャルUの足を昇るソード、コクピットに取り付くとパニッシャー発射。
ドロロロロロロロロロロロ!
ひしゃげるコクピット部、無理やり装甲版をはがすと操縦者にパニッシャーポイント。
操縦者1「ひぃ!助け・・・」
ソード「死ね」
ドロロロロロロロロロ!
ソード「一機撃破、次いくぞ」
百合菜「ええ」

町の大通りにて
操縦者2「メイドがバズーカしょって走って来る・・・アホくさ・・・死ね」
ブロソを振り下ろすシャルU
ネレイス「あらあら、野蛮ですねぇ」
ネレイス呟くと膝を付きバズーカ発射体制。迫り来るブロソ目掛けて発射
ネレイス「ふぁいやー」
ちゅどん!
操縦者2「ぐあ、なんてやつだ」
ネレイス「それそれそれ〜♪」バズーカを置き両手にグレネードランチャー。ブロソ目掛けて連続発射。
ドンドンドンドンドンドン!
バキッ!
操縦者2「ブロ−ドソードが・・・折れた・・・」
ネレイスのピンポイント射撃により耐久力の限界を迎えたブロソはあっけなく折れた。
操縦者2「こんの野郎!人間一人にてこずってられるか!」
ぶん
振り下ろされる拳。しかし、予想していたのか難なくかわすネレイス。
ネレイス「カイゼル様、四連装ロケットランチャー」
カイゼル「ぜぇはぁ、・・・ほれ・・・」
火器満載のカートを引いているため息を切らしながらもロケットランチャーを手渡すカイゼル。
ネレイス「これでフィニッシュです」
ボシュボシュボシュボシューーー!
両手両足の間接部を狙い放たれるロケットランチャー。
チュドチュドチュドチュドーン!
精確無比な照準はすべて目標に着弾。シャルUの四肢を弾け飛ばす。
ネレイス「ミッションコンプリートです。次」
カイゼル「ちょ、待てーー!」

町の市街地にて
操縦者3「なんだこのガキはぁぁ!ちょこまかとぉ!当たれよぉお!」
ブン
鎖付きの鉄球。いわゆるハンマーを振り回すシャルU
キャロル「あたらないよ〜。バァカ、バァァカ!」
ヒュンヒュン飛んでかわしつづけるキャロル
操縦者3「なんだとぉーーーー!滅殺!」
ブフン
キャロル狙ってハンマーをブン投げるシャルU。しかし、当たらない。
キャロル「きゃっはははは!だめだめだねぇ、ちょいさー!」
シュシュシュン
歌術で幻糸をコーティングされたカードを放つキャロル。
カツカツカツ
シャルUの額、左腕、左足に突き刺さる。
キャロル「ぶわぁくはぁつ!」空中に浮きながらポーズを取るキャロル。
ボンボンボン!
操縦者3「なんなぁんだよぉーーー!おまえはぁぁぁぁ!」よろけながら叫ぶ
そこにそれぞれ1機づつ倒したカイゼル、ソード達も到着し
ネレイス「カイゼル様、バズーカを」
カイゼル「よいせっと、はい」
ネレイス「ふぁいやー」
チュドーン!
バズーカ、頭部を直撃。大きくぐらつく。
ソード「そらそらそらぁ!」パニッシャー連射
ドンドンドン!ボガン!
両足の間接部集中砲火。火を噴く間接部。
百合菜「はぁぁぁぁはあっ!」
ズガン!
鉄扇にてコックピット部の装甲を粉砕。中にいた操縦者3と目が合う。
操縦者3「ぐぁぁぁ!わけわかんねぇよおまえらあああああああああああ!」
百合菜「うるさい」
ゴス
後頭部に鉄扇一撃。泡を吹いて倒れる操縦者3。

百合菜「これで、片付いたわね」
???「いいえ、片付いていませんよ」
ガシィ
百合菜「っぁああ!!」
巨大な手に拘束される百合菜。
百合菜「その声・・・くぅ・・・」
???「おひさしぶりですねぇ、M−3」
巨大な奏甲がその全容を現す。どことなくズィーベント・ギガンティアに似ている。
百合菜「Drヴォーク、やはりおまえが・・・」
ヴォーク「おやおや、名前を覚えていただいているとは光栄ですねぇ」
百合菜「何故・・・生きている。おまえはあの時」
ヴォーク「ええ、まさか自分のズィーベント・ギガンティアで自分の研究所をあんなに滅茶苦茶にされるとは思ってませんでしたよ」
百合菜「当然の報いだ!死に損ない!」
ヴォーク「自分の立場をわきまえないのは相変わらずですねぇ・・・」
ギュチ!
百合菜を掴む力を強くする。
百合菜「つああぁあああああ!」
サレナ「姉さん!」
カイゼル「馬鹿、出てくるな!」
ヴォーク「ほぉ、これはこれは。あなたがサレナさんですか・・・ふむ、確かに素晴らしい器のようだ」
サレナ「姉さんを離して!」
ヴォーク「そう言って離すと本気で思っているんですかねぇ」
ネレイス「っ・・・」バズーカを構えようとするネレイス
ヴォーク「おっと、余計な事はしないでくださいね。こちらとしてはこんな脱走者つぶしてしまってもかまわないんですよ」
ソード「なんだ、あの奏甲は・・・見たことないぞ・・・」
カイゼル「ズィーベント・ギガンティア・・・もう一体あったのか・・・」
ヴォーク「それはちょっと違いますねぇ・・・この機体は『ギガンティア・リミット』真に完成されたクロイツ量産型です」
ソード「量産・・・だと・・・」
ヴォーク「ああ、ご心配なさらず。残念ながら今のところはこの一機のみですんで」
カイゼル「どちらにせよ、最悪だな・・・」
ヴォーク「さて、無駄話はここまでです。そちらの歌姫を全て渡してもらいましょうか」
カイゼル「全てだと!?目的はサレナだけじゃないのか!」
ヴォーク「ええ、よく見ると皆さんなかなか粒ぞろいなので、ついでに貰っておきます」
キャロル「ついでかーーー!!」
ネリー「あの、キャロルちゃん、怒るとこ違うかも・・・」
ヴォーク「確保しなさい」
ヴォークの合図とともに数人の男が出てきたかと思うと歌姫達の確保をはじめた
サレナ「いや!」
カイゼル「サレナに手を出すな!」腰の刀を抜くカイゼル
ヴォーク「余計な真似しない」奏甲の手を握りこむ
百合菜「ぁぁぁぁぁああああ!」
カイゼル「くそ、どうすれば・・・」
どうしようもない事態に重い空気がたちこめる。数人の男たちは荒々しく歌姫達を拘束し始めた。
ネリー「や、やめてください!」
パン!
ドサッ!
ソード「・・・・・・」ハンドガンを構えた姿勢で止まっているソード。銃口からは煙が出ている。
ヴォーク「なっ!?おとなしくしろといったはずですよ!」
パンパン!
百合菜「つぁあ!」
ソードの撃った弾丸は百合菜の両肩を貫いた。
カイゼル「な、なにしてるんだソード!」
ソード「俺にとってはあまり重要な人質ではない。行動を制限される筋合いもない」
サレナ「だからって!姉さんを撃つことないじゃないですか!」
ソード「おまえらが動きにくそうだったからな。全員連れ去られるよりかましだろう」
ネリー「ソードさん、やりすぎです」
ソード「・・・・・・」
黙ったまま、再びハンドガンを百合菜にポイント
サレナ「やめてぇええええええええええええ!!」
ブワッッッッッ!
サレナの周囲に嵐のような幻糸の奔流が生まれる。それは地面をはがしながらどんどん大きくなっていく。
カイゼル「ぐぁっ、なにが」
ヴォーク「素晴らしい!なんて力だ!」
サレナ「いや!もういやあああああああああ!」
ヴォーク「なに!?これは!」
ガリガリガリガリ!
幻糸の嵐がヴォークの奏甲を削り始める。慌てて後退するヴォーク。
サレナ「おまえが!おまえがああああああ!」
ヴォン!
幻糸の嵐が突然向きを変えギガンティア・リミットを襲う。百合菜を掴んだ腕をもぎ取られ大きく体勢を崩す。
ヴォーク「なんなんですかいきなり!くそっ!」
形勢が不利と見たヴォークはギガンティア・リミットを飛行させると撤退していった。
カイゼル「なんて威力だ・・・」
ソード「で、敵は撤退したというのにまだ収まらんようだが」
サレナ「あぁぁあ!ああああああああ!」
ゴォォォゴオォォォ!
サレナの周囲にはいまだ幻糸の嵐が渦巻いていた。しかも着実に大きくなっていっている。
このままでは町ごと吹き飛ばされるのも時間の問題かと思われた。
ソード「・・・・・・」
ジャキン
パニッシャーをサレナにポイントするソード
カイゼル「な!?待て!何をするつもりだソード!」
ソード「ほっとけばこちらが危ない。残念だが殺させてもらう」
カイゼル「や、やめろ!」
ガシッ
ソードに組み付くカイゼル。
ソード「今やらなければ手遅れになるぞ、ここにいるやつらを皆殺しにしたくないだろ、どけっ!」
ドンッ
カイゼルをふりほどき突き飛ばすソード。
カイゼル「だからってサレナを撃つことはないだろう!」
ソード「それはおまえの理屈だ。俺には関係ない。嵐が強くなって来た、取り返しが付かなくなる前にやらせてもらう」
カイゼル「やめろぉぉぉ!」
突き飛ばされ倒れた姿勢から一気に立ち上がるとソードとサレナの間へ猛ダッシュするカイゼル。
トスッ
カイゼル「かっ・・・はっ・・・」
ネレイス「カイゼル様!?」
キャロル「カイぱん!?」
ネリー「そんなっ!?」
幻糸の嵐でかなりの勢いは吸収されたものの通常のハンドガンで撃たれた程度の衝撃にカイゼルのわき腹は血に濡れた。
ソード「馬鹿かおまえは!そこをどけ!」
カイゼル「・・・ぅっく。それはできん・・・サレナを殺すというなら・・・ソード、俺がおまえを殺す!」
ソード「狂ったかカイゼル。今の状態でどうやっておまえが俺を殺せる」
カイゼル「そんなもの・・・はは・・・知りません・・・だ!」
ソード「・・・・・・」
カイゼル「・・・・・・」
にらみ合いが続く。先に目をそらしたのはソードだった。
ソード「勝手にしろ。ネリー、行くぞ」
ネリー「ちょっ、待ってくださいソードさん!なんなんですかいきなり!カイゼルさんを撃ったりなんかして!」
ソード「撃ったんじゃない。あいつが撃たれにきたんだ」
ネリー「そもそも、サレナさんを撃とうとしたことに問題があるんです!」
ソード「何故だ、たった一人の犠牲で済むならそれに越した事はないだろうが」
ネリー「なっ!?違います!そういうことじゃなくて!」
言い合いを続けるソードとネリー。それを止めたのは他でもないカイゼルだった。
ソードとネリーの間に割って入るように体を移動させ。
カイゼル「ラウロッシュ家は自分の家のために他の家をつぶしてきた・・・」
いきなりの乱入者に口論を止め。カイゼルの方へ向くソードとネリー
カイゼル「それこそ王一人のために他を全て犠牲にするようなこともやっていた・・・」
ソード「現世の話か」
カイゼル「ああ、おれはそんな家の考えが嫌でしょうがなかった」
ネレイス「カイゼル様・・・」鎮痛な表情でカイゼルを見つめる
カイゼル「昔の俺ならソードの考えに賛成していただろう・・・個のために他を犠牲にするのは愚だと考えていたからな」
ソード「ほう、なら何故邪魔をする。やはり自分の女は可愛いか」
カイゼル「それもある・・・いや、それが大部分なんだろう・・・笑いたければ笑え」
ソード「ふん、いくら理想を並べようと所詮人間などそういう生き物だ。おまえが恥ずべきことでもない」
カイゼル「恥を忍んで言い訳をさせてもらうとな・・・もう犠牲とかは嫌なんだよ・・・」
ソード「甘ちゃんの考えだな」
カイゼル「だろうよ・・・しかし、サレナと出会って過ごすうちに俺は決めたんだ!もう誰も・・・何も犠牲になどしないと!」
ソード「咆えたな。ならそれを示してみろ。もう俺は知らん」
カイゼル「言われなくとも・・・」
サレナの方、幻糸の嵐の中心へゆっくりと歩いていくカイゼル。嵐はカマイタチとなりカイゼルの全身に切り傷が出来る。
ソード「冷静に装っていても中身は熱いか・・・なるほど、ザナウの仲間なわけだ」
嵐の中に消えていくカイゼルを眺めながらソードは一人呟いた。

嵐の中心。幻糸吹き荒れる真っ只中にサレナはいた。
サレナ「あぁああああ!ああああああああ!」
カイゼル「ったく、このだだっ子が・・・ぅっつあぁ!」
吹き飛ばされそうになるカイゼル。しかしなんとかこらえる。
サレナ「あああああああああぁ!ああああああああああああああああああ!」
カイゼル「・・・・・・うるさい!黙れサレナ!」
サレナ「あああああああああああああああああああああああああああああ!」
カイゼル「・・・しまった・・・叱ってどうする・・・」
カイゼル、ゆっくりとサレナに近づいていきサレナを抱きしめる
ブシュ!
幻糸の最も濃い奔流を受けてカイゼルの全身から血が噴出す
カイゼル「落ち着け、俺はここだ、ここにいる。いつだっておまえを守る。守ってやる」
サレナ「かい・・・ゼ・・・様・・・」
サレナの目が焦点を結びはじめる。同時に嵐も勢いを鈍らせる。
カイゼル「落ち着いたか、よし、ならこの嵐を・・・っく」あまりの流血に貧血をおこしかけるカイゼル
サレナ、大量の血が付いたカイゼルの服や顔を見て驚愕に目を見開き
サレナ「いやぁああああああああああああああああああああ!!!!」
消えかかっていた幻糸の嵐が再び吹き荒れる。飛ばされそうになりながらもサレナを抱きしめ必死でこらえるカイゼル。
カイゼル「ぐぁぁ!、くそ、血くらいでいきなり取り乱すやつがあるか」
サレナ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」
カイゼル「ったく、世話の焼ける歌姫様だ・・・最初はもっとムードのある所でしたかったのだがな・・・」
カイゼル、抱きしめたサレナの顔に自分の顔を近づけたかとおもうとためらいなく口付け。
サレナ「ぁぁぁっぁ・・・、ぅぅぅあ、ぅあはぁ、はぁぅっ、んくっ・・・・んんんんんんんん!!!」
叫ぶのをカイゼルの口で押さえこまれ息苦しい表情の後、恍惚の表情、後に事に気付いてじたばた暴れだす」
サレナ「っぷはっ!ななななななな、何したんですか今ぁ!!」
カイゼル「ふむ、やはり最初はもうちょっとムードのあるところがよかったか」
サレナ「ききききききききききき」
カイゼル「キスの味はどうだった。俺はかなり味わえたぞ」
サレナ「・・・・・・・・ぼん!」真っ赤になって倒れるサレナ。幻糸の嵐もいつのまにか止んでいる。

一部始終を見ていたソードが近寄ってきて
ソード「とんだ茶番だな。愛の力とでも言うつもりか」
カイゼル「そんな恥ずかしい事は言わん」
ソード「人前であんな大胆に口付けしておいて今更恥ずかしいもないだろう」
カイゼル「み、見なかった事にしてくれ・・・」
ソード「さぁな、後はおまえらで処理しろ。俺はもう行くことにする」
ネリー「・・・キス・・・しましたよね・・・はわぁあぁ・・・」混乱状態
ソード「ほら、行くぞ」
ネリー「はぃぃいー」
奏甲を取りにいくのだろう、ルスフォノクラスタの方角に歩き出したソードがふと振り返り
ソード「あそこまで咆えたんだ、理想で終わらせるなよ!おまえの考え」
サレナを両腕に抱き顔を上げてカイゼルが言う
カイゼル「ああ、やってやるさ」
ソード「ふん、達者でな」
そういい残すとソードはもう振り返る事はなくルスフォノクラスタの方へ消えていくのだった。

ルスフォノクラスタへ続く街道にて
ソード「用件があるならさっさとすませろ」
ネリー「へっ?へっ?」
歩みを止めて振り返り、言葉を吐くソード。
スッ
木陰から姿をあらわす百合菜
百合菜「礼を・・・言いにきたわ」
ソード「ほう、俺はおまえを撃ったんだぞ、何故礼を言われる」
百合菜「あの時はああするのが最良だった、あなたはうまくかく乱してくれた」
ソード「両肩を撃たれて、妹まで殺されそうになったのにそう言えるか、大した根性だな」
百合菜「ええ、でもあなたには負けるわ。それに、サレナだってあのままでは長くもたなかった」
ソード「ふん、何とでも言え。それと礼なんて言われてもこっちは困る」
百合菜「そう、じゃあ、もう消えるわ」
ソード「そうしてくれ」
ネリー「あれ?ほんとに消えちゃった?」
ソード「大したヤツらだよ。ホントに・・・」
ソードは空を仰ぐとまぶしそうに目を細めた。


はい、やっと、ついに、できましたぁ!・・・って一人で浮かれております。
長いです。自分的には長いですよ今回。ここまできちんと読んでくれた人にはホント感謝です!
ソードさんとクロスだけにしとけばいいものを自分サイドのストーリーまで進めたもんだからさぁ大変。
でも結構いいのができたかな。
まぁ満足しては先がないのでこれからも日々精進です。
ソードさん、キャラを使わせていただきありがとうございました。
こんな感じでやってしまいましたがどうでしたか?気にいっていただければ幸いです。
それでは今回はこの辺で。
ではでは。

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