キャラ設定

柊 和十(ヒイラギ カヅト)…19歳。大学2年。
冷静沈着で合理的。しかし熱血漢な部分もあるというアンバランスな男。
自らの信念を守るために自分を犠牲にできる。
両親とは幼い頃に事故で死別、以後祖父の元で生活する。
祖父によって叩き込まれた剣術は免許皆伝の域に達している。
護身用に日本刀を携帯。

 

ユリアナ・ルーベンス…20歳。幼少の頃に両親を蟲に殺される。
その後、独学で歌術を学びながら傭兵として各地を転々としてきた。
サバイバル技術はずば抜けて高い。傭兵をやっていた頃から片刃のロングソードを愛用。
性格は男勝りだが力のない者が虐げられることをなによりも嫌う。
そのため、傭兵時代には雇い主と対立したことも…。
若干ではあるが予知能力をもつ。
 

   たった一機の護り手 (前編)

 

〜リーズ・パスの麓〜

麓にはこれから山越えをしようという人々が集まっていた。

その中に一機、純白の絶対奏甲…グラオグランツの姿があった。

 

ユ「和十、準備はできたか?」

和「ああ、大体はな。…気になることがあると言っていたが…、何かわかったのか?」

 

普段、出発前の準備や手続きを自分でやるユリアナが今回に限って、
準備を和人にまかせ周辺に情報収集に出ていた。

 

ユ「いや…、目ぼしい情報は得られなかった、が…」

和「嫌な予感はする…、ということか…」

 

ユリアナには未来が見えるという程ではないが若干の予知能力があった。

 

和「ただの山越えだが油断はできんな」

ユ「いや…、ただの思い過ごしかもしれん」

和「そうだといいが…、用心はしておこう。何かあってからでは遅いからな」

ユ「わかった。…そろそろ出発しよう。夕暮れまでにはヴェステンデに着きたいからな」

 

和十はコックピットに収まるとグラオグランツを非戦闘稼動で起動させると、
ユリアナを愛機の右腕に乗せ、山を登り始めた。

 

〜リーズ・パス頂上付近〜

 

和「ヴェステンデに着いてからはどうするんだ?」

ユ「まずは知り合いの鍛治師に頼んでいたモノを受け取る。
  それからは…、隠者の庵に行こうかと思っている。」

和「隠者の庵?」

ユ「そうだ。前の大戦を生き抜いた歌姫が隠棲なさっているそうだ。
  その方なら英雄の蟲化について何か知っているかもしれない、もちろん蟲化を防ぐ術も…。」

和「蟲化を防ぐ術か…。…わかった、とりあえずヴェステンデに急ぐ…」

 

リィィィィィン、リィィィィィン

 

ユ「!? 幻糸が震えている……和十!!蟲が来るぞ!!」

 

キシャァァァァァ!

 

ユリアナの予知は当たった、それも最悪の形で……。
人々が目指していた頂上…狭くなった街道は夥しい数の奇声蟲で埋め尽くされていた。

 

和「数が多いな…。いや、それよりも…」

 

和十は辺りを見回す。
辺りには山越えをしようとしていた人々が悲鳴を上げ、立ち竦んでいた。

 

和(…このままでは全滅するな…、なんとか時間を稼がなくては……)

和「…ユリアナ、お前は旅人達の避難誘導をしながら、殿をやってくれないか…?」

ユ「なんだと!? …しかし、それではお前の援護が十分にできない!!」

和「だが、それしかここを乗り切る術がない…。
  この地形なら俺とグラオだけでも蟲を足止めすることはできるだろう。
  …だが、もし一匹でも通してしまえば…、麓までの街道は人々の屍で埋まることになる。
  おまえの攻撃歌術は衛兵クラスの蟲なら問題にならん。
  そのお前が殿をやってくれれば、俺は後ろを気にせず安心して戦える。
  だから頼む、俺も犠牲は出したくないんだ!!」

ユ「……わかった…。だが約束しろ。決して無理はしないと!
  私はもう二度と自分の大切な人をなくしたくはない!!」

和「…大丈夫だ。皆が逃げる時間を稼いだら俺も撤退する」

ユ「…約束だぞ」

和「ああ!約束だ!!」

ユ「では、旅人の避難はまかせろ!気をつけろよ、衛兵クラスとはいえ数は多いからな!!」

和「お前も十分に気をつけろ!…なるべく通さないようにはするが…」

ユ「安心しろ。突破してきたヤツには私がとっておきをかましてやる!!」

和「頼りにしている。…行け!!」

 

ユリアナを奏甲の右腕から下ろすと和十はグラオグランツを戦闘起動へと切り替える。

 

ユ「みんな、荷を捨てて全力で麓まで走れ!!蟲は私と私の英雄で食い止める。急げ!!」

 

立ち竦んでいた人々は、ユリアナの指示に従って、一斉に荷を捨て麓へと駆け出していく。

 

ユ「では、私は殿を務める。…歌術での支援は<ケーブル>で行うが…、何度も言うが気をつけろよ…」

和「ああ、早く行け。連中は準備ができたようだからな…」

 

蟲達はいつでもこちらに飛び掛ってきそうな勢いだった。ユリアナは人々を励ましながら麓へと走り出した。

 

和「(ユリアナに通じないように内心呟く)
  さてと、…ざっと見ても50…、いや60くらいだな…。どのくらい保たせられる…?
  …まぁ、いざとなれば“あれ”を使えば皆が麓に逃げるまでの時間くらいは稼げるだろうし、
  大半の蟲は掃除できるだろう。……アイツは怒るだろうが…」

 

蟲達と正対しつつ、和十のグラオグランツが左腰にマウントされている鞘から太刀を引き抜く…。

 

和「悪いがここは通行止めだ。他を当たるか、俺を倒してからでないと先へは進めんぞ…」

 

こうして一人の英雄の戦いは始まった。力なき人々を、理不尽な恐怖から護るために…。



あとがき

やれやれ、やっときちんと修正できました。中編ではどうなることやら…(−−:
楽しんでいただけたら幸いです。

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