ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ

 アーカイア。幻糸が満ち、歌声が響き、旋律が奏でられる世界。

ズゾゾゾゾゾゾゾゾゴッゾゾゾゾッゾゾゾゾゾゾゾゾ

 歌は、想いという名の旋律に満ち、その歌声を心覆う鎧として英雄たちは奇声蟲を狩る。

ズゾゾゾゾボン……プシュウウウウ〜〜〜〜……ズゾッズゾッ

 そう、ここは幻想世界アーカイア。歌姫の想いを受け、英雄が日々、異界より現る奇声蟲を打ち倒す、歌姫達の美しき旋律に満ちた戦場。

ズォンォォォオォンンゾン……べきゃ……ズゾ……ズ……

 そして、今、この世界に新たなる物語がまた、語り継がれようとしている!!

「……やっぱり、ブラオヴァッサァで山登りは無謀だあ!!!!」




             幻想戦記っぽいルリルラのような電波系ストーリー
             
            〜  電波で逝こうよ、空へと続く道 〜

                 第一話だと思われる物語


「だからさぁ、言ったよな、俺。この魚で山登りは無理だって」

 蒼い、魚型の奏甲のコックピットから一人の英雄がしゃべりながら降りてくる。

 長身とまではいかない程度の背丈。整っているともいえない気がしないでもない中途半端な容姿。何もかもがいいかげんな気がしないでもない青年だ。

 なにやら、怒っているらしく、降りたと同時にコックピットをにらみつけている。



 ★★★



俺はさりげな〜く怒っていた。訂正。思いっきり怒っていた。

 理由は単純。山登り途中に奏甲が逝った。

 まぁ、当たり前と言ったら当たり前のことだ。

 ガタガタした、舗装すらされていない道は、普通の二脚式の奏甲でも辛いというのに、その道をホバーすらついていないドノーマルの"魚"で登ろうと言うのだから、壊れないほうが不思議だ。

 だからおれは怒っている。誰に怒っているって、ここには俺と。

「私も……お兄ちゃんに言った。無理しなくてもいいって」

 この、電波少女こと、俺の歌姫である水無月 翆霞(みなづき すいか)だけである。

 ちなみに、俺は水無月 双夜(みなづき そうや)という名前だ。

 偶然にも、苗字が同じだったせいか知らんが、"お兄ちゃん"と呼ばれたりしているのがたまに傷だが……

「えええい!己の胸に手を当ててよく考えてみろ!!!思い出してみろ!!!誰が"お魚さん以外に歌を歌ってあげない"とか駄々こねた!!!!」

 ともあれ、そんなことを思い出している場合じゃない!

 今はこの奏甲を動かす方法よりも何よりも、この腐れ電波娘を粛清せねば!!!

 そう心に決め、翆霞のもとへとつめよっていく。

 翆霞本人は、というと何食わぬ顔でというか無表情に近い表情で、ボケ〜っとこちらを見つめている。

 ああ、むかつく、といった腹の奥底から湧き上がってくる負のオー○力に対抗しながら一歩一歩、ドシッドシッといった感じで歩を進めていく。

 だが、後もう少しというところで。

「……………」

 す〜っと、無言でこちらのほうを指差す翆霞。

「双夜が言った」

「ああ、そうだったなぁ、俺が"お魚さん以外にお歌を歌いたくない"って駄々こねたんだった……わけがあるかあぁああああああああ!!!!!!!!」

 びしっ!っと、指されたその指をバシッとはじきながらつめよっていく俺。

 鼻息も荒く、はたから見ると変体ロリコンオヤジっぽく見えていることに気が付いていなくもないが、今はそんなことを気にしている場合じゃない気がする。

 今は、それよりも大事なことがある!

(いつものことながら、こいつと話していると自分のペースというものを見失ってしまう。

 このままでは俺が変人と思われてしまうではないか!!

 ここは、びしっときつく言ってやるにかぎる!!)

「あのなぁ、翆霞……いいかげんにしないと『襲うの……?』襲っちゃうぞ!って、あああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

「くすっ(邪笑)」

 詰め寄りながらというか、胸倉をつかむ勢いで顔を近づけながら、語気荒くきつ〜いお言葉をすえてやろうと思ったのだが、誘導に引っかかってしまった……これでは……変人ではないか!?

 頭を両手で抱えながら、自分の失策を嘆く。

 おれは、なんて馬鹿な間違えをしてしまったのだ!


(断じて違うぞ!!おれはせいじょうだ!!)

「頭を振り回して……新しいダンス?」

 小ばかにしたような、鼻で嘲笑うかのような、絶妙な口調で呟きやがる翆霞。

 その口調は、神経を逆なでするのには十分すぎる効果を持っている。

 結果、おれはというと。

(うがあああああああああああああ!!!!!!!!

 めっさむかつくっぺさ!!!!

 あああ、マジで襲うぞこんちくしょうがぁああああ!!!!!)

「襲えば?私は別にいいよ、お兄ちゃん♪でも……そういうことは大声で言わないで欲しいなぁ、恥ずかしいから」 
  
無意識のうちにでも話していたのか?

 口走ってしまっていたのか?

 頭を抱えながら人生について深く考えこんでしまうぞ。

 地面にうずくまりながら、そう思わざるをおえないような状況下に、俺は追い詰められていた。

 ああ、おれはこいつに一生勝てないのか?

 というかさぁ……

 そこでふと思い出す。何故、こんなにも重要な事柄をどこか遠くへと追いやってしまっていたのか?

 ……電波でも受信したのか?

 などと、怖い想像すらしてしまう。それほどに大事な事柄を忘れていた。

「なぁ、翆霞……マジな話し、ここはどこだ?」

 実は……僕達遭難してたり(てへっ♪

 しかも、奏甲は中破。

 そして

「さぁ……でも、幻糸に乱れがあるから、奇声蟲が近くにいる場所だよ♪」

 最悪な状況下に、俺達はあるらしかった。

「マジっすか?」

「マジマジ」

 あまりに絶望的な報告に、おれは思わず尋ね返すが、翆霞は無表情に肯定の意思を返すばかり。

 すなわち、かな〜りさりげな〜くやばい状況下にあるらしい。

「なぁ、お前いつからそのことに気が付いてた?」

 ふと、幻糸の乱れという単語が、何かをするでもなく、スラスラとまる、でかなり以前から知ってたよ〜、みたいな感じで言ったことが気になり、尋ねてみる。

 まさか、まさかとはおもうが

「ん〜奏甲が動かなくなる三十分くらい前だから……そろそろここら辺に来るんじゃない♪」

 楽しげに口から飛び出た"死刑宣告"

 かなりやばい……らしい。

「はぁ」

 反論する気力すら無くした俺。

 うなだれ、しゃがみこみ、地面にのの字を書きたい気分だ。

 だが、そんなことをしている暇はないのだろう。

 目の前で何を考えているのかまったくわからない表情を翆霞はしているが、リンクで伝わってくる思いは不安に満ちている。

 奇声蟲。このアーカイアでは恐怖の意味をも持って語られる、忌まわしき怪物の名。

 その形状は、くもにもにて。その口から発せられる声は、まさに奇声蟲の名に恥じぬ奇声。

 その巨体は人間のゆうに3倍はあり。

 その力は、人間などが及ぶはずもないほどに強大。

 と、以前読んだ本に書いてあった気がするが、じっさいはそんなに強くなかったりする。

 木刀で殴ったり、ハンマーで潰したり、フライパンで炙ったりと結構いろんな倒し方があるし、その気になれば奏甲で踏める大きさだし。

 まぁ、衛兵の話だけど……

 んで。

 そんなことを思いながらも、コックピットにおずおずと戻り、途中、翆霞が膝の上に乗ってきて一悶着あったりしたが、結局お姫様抱っこの形で翆霞が俺の上に座ることに決定し、戦闘準備を整えた。

「……んで、敵はどこだ?」

 膝の上の翆霞に、その顔を覗き込みながら問い掛ける。

 翆霞はなぜかとても幸せそうな顔をしながらも、

「うしろ、十メートル」

 と、非常事態宣言を伝えてくれたのだった。

「はやく言えや、このスカポンタン!!!」

 おれは、必死になって、奏甲に意思を送り込み、反転を試みる。

ズリ、ズリズリズリズリゴッ………

「あれ?」

 唐突に、反転しようと試みていた奏甲がその動きを止める。

「あっ、戦闘稼動用の歌術歌ってなかったね」

 ギャーーーーーーース!!!!

ドゴガゥ!!!

「うわぁっっと!」

 背面に唐突に走った衝撃に倒れそうになるブラオを必死で、倒れないように操作する。

 もともと、下半身が魚のような蛇のような形状のブラオは、倒れると致命的なまでに弱い。

 そのことには、今まで潜り抜けてきた修羅場で学んでいる。

「こなくそ!」

 後ろを向けなくともうでは触れるだろうと、無理矢理腕をうしろに振り上げる。

 その攻撃はちょうど"コックピット"に当たり、

『ぎゃあ!』

 ケーブルを伝わってくる男の声。

「……あれ?」

「くすっ♪」

 そして、俺の膝の上で、

ヤ〜イ引っかかってや〜んの♪

といった表情を浮かべながら、堪えきれなかった笑いを零す翆霞。

つまりは。

「おいこら、くそ電波娘。きさん、判っておりながらにして俺様を騙しよぅたな?」

 こういうことだったりする。

 怒りのあまり口調が変になっているのも仕方がないことだろう。

 そのいたずらのせいで、誰とも知れない絶対奏甲を殴ってしまったのだ。

 結果。

『何のつもりだ!』

 怒られるのも当然なわけでして。












ここから先は、次回受信日を待て!
                 




あとがき?

え〜〜〜〜っと……なんだったんだろうか、このSSは?

いや、電波系の名前に違わずほんとに思いつくままに書き綴ったわけでして。
 
 結果、このSS2時間かかってないし……(°∀°

 次回作には、募集に応じてくれた方々を出しますね〜



キャラ説明

水無月 双夜 (18)

 真性のロリコン+シスコンと巷で噂される地上を這いずり回るお魚乗り!

 じっさいはふつ〜のどこにでもいる青年だったりするのだが……

 戦闘経験皆無!自立能力0!と、現代における若者をそのまんま持ってきたかのような能力。

 このごろは、毒電波受信により結構強くなった気がしている。


水無月 翆霞。(。も名前)(14)

 電波受信型、暴走、無表情冷徹美少女子悪魔。

 いつもいつも何かを"見て"いる。

 いつも視線は彷徨い、いつも表情は変わらず。

 言葉の調子のみで、すべてを表し、表現しているせいか、あまり気にならない……わけがなかったりするが、とりあえず双夜は慣れている。

 双夜のことを"神"のお告げからか、毒電波受信によってか"お兄ちゃん"とよんでいる。

 実は、毒電波送信もできちゃう便利な……訂正、はた迷惑なお騒がせ困ったチャン電波娘。

 今後の暴走っぷりに期待大!

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