荒廃の使者〜英雄編〜

月の砂漠を彷徨いて−中編−



 城の内部はは外見ほど崩れておらず、通路も広いので奏甲で
あってもさほど気にせず中を歩く事ができそうだ。
 逆に言い換えれば、もし万が一敵が出現したら奏甲に乗って
いる可能性が高いわけである。

 ・・・だが、この展開は考えてもいなかった。

 「なぁ・・・リィス?」
 「言われなくても、何となくわかるわ・・・」
 だよなぁ、と目の前の眠れる美女と野獣・・・もとい、美少
女と魔獣に視線を移す。

 「ドラゴンって・・・アーカイアにはいるのか?」
 わかりきっていたが、あえて琉人は訊ねた。
 「あんなのいるわけがないわよ。・・・それ以前にドラゴン
って何?」
 しかし彼女の素朴な(?)疑問には答えず、琉人はさらにそ
の奥に視線をやる。そこにはやはり。
 (金銀財宝の山うず高く、か)

 無論、これも琉人の五感が鋭化しているからこそ見て取れる
距離にあるので、リィスには全く見えない。

 「新種の蟲かしら?」
 「・・・ボケるのもいい加減にしたらどうだ」
 そうね、と言うとリィスは黙ってしまった。

 琉人は慎重にドラゴンに近づき・・・

 ぱち☆

 目を覚まさせてしまった。思わず動きが止まる。ドラゴンが
口を開いたので、火を吐くかと身構えたが。

 「・・・客人か?」
 「え?」

 思いもよらなかった。まさかドラゴンに語りかけられるなど
とは。
 「客人か、と訊いているんだ」

 思わぬ事態に何も答えられず、ただアホのように首を縦に振
る。
 「・・・そうか。なら明日また来てはくれないか?今日はも
う眠いんでな」

 言われなくても、とばかりに琉人は凱神を回れ右させると、
通常起動でできる限り早く逃げ出した。
 「ふぅ・・・」
 ドラゴンはため息を一つ静かにつくと、また目を閉じた。

 彼が見るのは、彼が生まれ育った懐かしい地、エティニー。
そこからここに呼び出された後の記憶は、彼よりも時の女神に
訊くのが正確だろう。

 彼は自分がここに来た時の記憶を探るため、時の女神三姉妹
の過去を司る『ウルド』に呼びかけた。
 (見せてくれ。俺の記憶を・・・)

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あとがき

次回は“中編・ウルド”です。
あんまり期待しないでください。だんだんヘボ化してきてるん
で(泣)
何回も書いては消した末こんなのになってしまいましたが、ま
ぁ生暖かい目で見てくれれば嬉しいです。

場所が場所なのになんでこんな状態かって?それは彼−−ドラ
ゴンにでも訊いてください。

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