CAUTION!
当作品(当話)は本来のアーカイアと言う世界の設定から大きく外れています。
そのため、他作家様の設定および公式設定の保護を目的とし、当作品(当話)に限りクロス依頼及び設定引用を基本的に禁止させて頂いております。
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無題迷話
弐半章 壱





 ハルフェアの南に広がる葡萄平野。

 そのど真ん中に、一機の絶対奏甲アブソリュート・フォノ・クラスタが立っていた。

 真っ白い外観は、グラオグランツを思い出させる。だがそれは、グラオ如きとは比べ物にならない程の、威圧的で神聖さを感じさせる何かがあった。

 肩には十字架を模した防護板があり、それは金で縁取りされている。

 全身に金で複雑な紋様が走っており、かなり疎なアラベスク模様のようになっていた。

 爪先からは角のような物が生えており、脚部はブリッツ系統機にも似ていなくはない。

 だが頭部は、現存するどの奏甲にも似ていない。

 強いて言うならば、クロイツ・ゼクストとゼーレンヴァンデルングをかけあわせ、そこに無理矢理モノアイを割り込ませたような、と言うのだろう。

 その絶対奏甲アブソリュート・フォノ・クラスタは、ハイリガー・クロイツ聖十字という機体だ。

 星芒奏甲クロイツの先駆けとして、極秘裏に作られた4機の奏甲の1機である。

 ハイリガーは、風が吹き抜ける平原で、一枚の岩板の前に立っていた。



「ここだな?」

 彼はそう訊ねた。

 道士服(のような、袖口の広い華風の服)を着、両腕に篭手を着けている彼の名は、仙仁せんじん 琉都りゅうとと言った。

 顔立ちはいくらか間抜けも入っているが、至って平々凡々としている。黒髪に黒瞳と言う、いかにも日本人らしい姿だ。

 が、今は隠しているが、その額には三つめの眼がある。

「ここでいいんだよな」

 琉都はもう一度、肩に乗っている小人に訊ねた。

 メイド服姿で漆黒の長髪と燻し金の瞳を持った小人は、うんうんと肯いた。

 彼女の名前は、沙紗さしゃだ。

 沙紗は琉都の肩から飛び降りると、縦長い形をしたタンデムコクピットの後ろの席に移動した。

「本当に行くんですか」

 沙紗の移動した場所に先に居た少女は、確認するようなイントネーションで琉都に訊ねる。

 黒茶色の癖毛、灰色の瞳の彼女の名は、クゥリス=フォルティッシモと言った。

 琉都と<宿縁フェイト>で結ばれている、戦争のための人員補充で歌姫になれた一人だ。

 大召喚が行われる以前は、歌姫になるには多額の献金が必要だった。

 一介の農家となっているフォルティッシモ家には、代々1人ずつの歌姫を輩出するだけの財力しか残されていたかったのである。

 だが、もしその問題さえ解決すれば、彼女も試験をうけ合格できただろう。

 歌唱技術がまだ粗削りなものの、才覚はあるのだ。



 琉都はハイリガー・クロイツに一歩踏み出させた。

 と、石板モノリスの影が一瞬不気味に揺れる。

 次の瞬間、ハイリガー・クロイツは、その場所から影も形も消え失せていた。



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 足を踏み出した格好のまま、ハイリガー・クロイツは波打ち際に立っていた。先ほどまで居た平原は、影も形も無い。

 その代わり、波がハイリガーの足を洗う音が、どことなく草原を風が駈け抜ける音に似ていた。

 浜辺の向こう側の傾斜には、まるで長い間そうであったかのように、木が鬱蒼と茂っている。

「何が起きたんだ…?」

 一瞬だけ状況が把握できなかったものの、琉都はそう呟いた。そしてクゥリスの見解を求めようと、後ろを振り向く。

 が。

「こっちが聞きたいです…苦しー…」

 クゥリスは壁に押し付けられていた。密着するように、見慣れない女性がそこに収まっている。

 メイド服を着、漆黒の長髪と燻し金の竜眼を持った、端整な顔立ちの女性だ。

「誰だ!?」

 琉都は叫んだ。

「耳元で怒鳴らんといてぇな。聞こえとるさかいに」

 女性は耳を塞ぎながらそう言い、少しだけクゥリスに空間を譲った。

 クゥリスはその空いた空間に、うまく収まる。

「まずは降りよに。こんな狭い所では、まともに話せへんやろ?」

「それもそうだな」

 琉都は肯くと、コクピットハッチを解放した。プシュウ、と音を立てて空気が外へ出て行く──ハイリガーは宇宙で活動可能なほどの完全気密である。

 次の瞬間、琉都とクゥリスは奇妙な耳鳴りのようなものに襲われた。女性も同じく襲われたらしいが、鼻を摘み耳抜きをする事で治したようだ。

 琉都もそれに倣い、耳抜きをする。

「琉都さん、どうすればいいんですか?」

 クゥリスは軽くパニックに陥っていたらしく、耳鳴りの影響かいつもより大きな声で訊ねた。

 琉都は軽く笑いながら、クゥリスの鼻を摘み口を塞ぐ。

「気圧が変わったから、鼓膜が押されてるだけだ。このまま鼻から息を吐いてみろ」

 これでクゥリスもどうにか耳抜きができた。

「あ、ありがとうございましふぁ…!?」

 礼を言っている途中のクゥリスの鼻をまた摘み、琉都は悪戯っぽく笑う。

 だが本当に悪戯に過ぎなかったらしく、すぐに離したが。


 2人を先に地面に降ろしてから琉都は、縄梯子(と言っても結び目が一定間隔に作ってあるだけのロープだが)の一端をハイリガーのコクピット内に結び付ける。そしてそれを伝ってスルスルと降りた。

「ほな、あらためて自己紹介させてもらうわ」

 全員揃ったと見るや否や、女性はそう口を開いた。

「うちの名前は、沙紗や。あんさんらがつけてくれた名前やさかい、知っとるやろけど一応言うとく」

「沙紗!?」

「え、でも沙紗はもっと小さかったんじゃ…」

 2人は驚いた。

 人造人間ホムンクルスであり、身長15センチほどだった沙紗が、人間と同じ大きさになったなど信じられるはずもない。

 だが確かに、外見は沙紗そっくりだ。

 困ったように沙紗は頭を掻いた。そして腕を組み、ちょっと考える。

「あー、どう説明するとええんかな…。 そや。ここに居る間は、うちもこの大きさになれるんやな」

「ああ、なるほど」

 琉都は案外あっさりとその言葉を受け入れた。

 異世界アーカイアへの召喚に、奇声蟲ノイズとの遭遇、絶対奏甲アブソリュート・フォノ・クラスタ、戦争。

 ありのままに受け入れる事を、知らず知らずのうちに体得していたのだろう。

 しかしクゥリスはそうでもなかったらしく、まだ信じられないようだった。

「でも、一瞬で大きくなるなんて、今の私が知ってる限りじゃ歌術でもできないと思うんですけど…」

 クゥリスも考えるように腕を組み(胸が無いのがかなり寂しい気がする)、首を傾げた。

「まあ、そう難しい事は考えんといてーや。うちかて好きで小さかったんとちゃうんやし。な?」

 沙紗はそう言い、ぽんと片手をクゥリスの肩に置いた。


 数分後、3人は森の中を歩いていた。

 ハイリガー・クロイツが何故か起動せず、歩かざるをえなかったのだ。

 沙紗は幾分慣れた手つきで玄大剣(これも沙紗同様に巨大化していた)を振り、下草や邪魔な枝を打ち払って行く。

 その後ろを琉都とクゥリスは歩いていた。

「しかし…息苦しいな」

 この程度の山歩きであれば、普段から体力を消耗する奏甲戦闘を行っている琉都には大した事は無いはずだ。

 だが実際には、幾分ゆっくりと歩いているにも関わらず、呼吸をするのがひどく大変だった。

 その後ろを歩くクゥリスなどさらにひどく、言葉を出す事も難しいほどに息が上がっていた。ゼィゼィと息をする音だけがその口からは出て来る。

「ま、酸素濃度は平地の半分以下やでな。当たり前やて」

 沙紗は大して疲れた様子も無く、あっけらかんとそう言い放った。

 そしてどこから取り出したのか、クゥリスに小型の酸素ボンベを投げてよこす。

「ああ、そう言えばドンナーベルクもそれなりに高山だっけ。だから修行地にいいのか?」

 何か納得したように、琉都はそう訊ねた。低酸素練習法の事を思い出したのだ。

 せや、と沙紗は肯いた。

「霊力場もドンナーベルクとほとんど同質同量にしてある。やで、あそこで修行するんと同じ──いや、もっと効率がええな」

「でも…あそこほど…幻糸は濃くない…ですよね?」

 酸素ボンベでいくらか楽になったのか、クゥリスは訊ねた。

 まだ言葉が切れ切れなのは、逐一酸素ボンベから吸っているからである。

「まあ、ここはな。せやけど海に出れば、もっと凄いで。…酸素の濃さはこことそう変われへんけど」

 あははは、と何が可笑しいのか沙紗は笑った。

 ふと思い出したように付け足す。

「そうそう、ここでの10日はむこうの1日にあたるんやで」

「…へ? と言う事は、こっちの時間の流れの方が早いのか?」

「せや。 やけど歳はそうとられへん。それは10分の1の速度でやさかい、安心してぇや?」

 そう言いながら沙紗は、いきなり目の前に現われた大蛇の頭を剣の柄で叩き潰した。毒液のような物が、砕かれた頭蓋から漏れている。

 それを見て琉都は思わず吐き気を感じた。

 クゥリスは酸素ボンベで顔が隠されていたため、幸運にもそれを見る事は無かった。



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 森を切り開いて進む事数時間、3人は不意に開けた場所に出た。

 その中央には、丸太を組み合わせて作った家がある。

 ログハウスと言うやつか、と琉都は思った。

「ここや。この“モノリス・シャドゥ”に居る間は、ここ使うてもらわならんねん」

 沙紗はそう言うと、誰かが住んでいるのではないか、と言う事を考えもしなかったようにログハウスの扉を開いた。

 そして、早よ入ってえな、と2人を促す。

「掃除はしてあるのか?」

 琉都がぼそりと訊ねると、沙紗はあっけらかんと笑い飛ばした。

「こっちの時間は、時間を把握する者がおらへんかったら進まへんねやで?埃が時間を把握するかいな。さっき先客が出てったばっかや」

 そんな物なのか、と琉都はあっさりと受け入れた。

 クゥリスももう一々細かい事にツッコミを入れるのに疲れたらしく、へえ、と適当に相槌をうって流す。

 2人が入ったのを確認すると、沙紗も家に入り扉を閉めた。

 天窓が多く設置してあるらしく、ログハウスの中は照明が極端に少ないにも関わらず明るい。

「早速で悪いんやけど、修行の打ち合わせとかするで、荷物置いたらリビング来てや」

「わかった」



 ばさりと沙紗が広げた地図に、琉都とクゥリスは視線を落とした。そしてその極端なほどの単純さに、驚きと呆れを混ぜたような表情を現す。

「山と海があって、山頂の湖と海以外は全部森…わかりやすうてええやろ?」

「それはもう。びっくりするくらい」

 皮肉ったらしく、琉都は返事した。

 沙紗はそれを気にすることなく、説明を続行する。

「森には熊やら狼やら大蛇やらがうようよおるさかい、サバイバル訓練にはもってこいや。最初の10日は、食料集めも兼ねてサバイバルしてもらうで」

 おいおい、と琉都は一人呟いた。クゥリスはもう諦めかけたのか、視線が宙を漂っている。

 それらを無視して沙紗は“地獄の特訓めにう”の説明を続けた。

「その後は個人修行で、琉都は湖、クゥリスは海や。それぞれに心と精神を鍛えてもらう──肉体はここにおるだけである程度は鍛わるさかいに」

 そう言い、沙紗はおもむろにクゥリスの手から酸素ボンベを取り上げた。

 ちょっとした運動でも疲れを感じるのか、「あっ」と小さく叫んだきりそれ以上は動かない。

 ふと、琉都はある事に思い至った。

「ここに居るだけじゃあ、肺活量が上がるだけだと思うんだが?」

「食料品は各自で調達やで? 狩りの道具は弓矢くらいしかあれへんし、他は武器になりそうなんは包丁と斧だけや」

 全く当然の事を言うように、沙紗はさらりと言ってのけた。

 それを聞いて、琉都は思わず目眩のような物を感じる。

 だが沙紗は本当に至極当然の事を言っただけらしい。地図を懐へしまうと、壁にかけてあった小弓と矢筒を押し付けるように渡す。

 そしてさらにどこから取り出したのか、地味な装飾の施されたスタッフをクゥリスに押し付けた。

「さ、善は急げ。斧で木の幹に傷つけて目印すれば、迷っても帰れるはずやで。斧は玄関の戸の裏にあるさかい」

 それだけ言うと沙紗は、琉都とクゥリスを部屋の外に追い出した。そして笑顔で送り出し、鍵をかけてしまう。

 琉都はため息を一つつき、玄関の戸棚の裏から斧を取り出した。



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 さすがに斧と小弓と矢筒をさらに持つのは、すでに仕込み武器を大量に持っている琉都には不可能だった。

 そこで仕方なくクゥリスが斧を持っているのだが、そのせいで2人の足は遅々としてなかなか進まない。

 迷わない程度の間隔を開けながら、なるべく目印になりそうな枝をクゥリスに打たせる。

 琉都はそうして歩きながら、周囲の気配を探っていた。

 別に生物だけが食料では無いだろう。だが、やはり動物性タンパク質は──肉体を鍛える際には特に──必要なのだ。

 だから琉都は、周囲に気を配りながら歩いていた。

 三眼を解放すれば気を感知できる(これは別に三眼が紅くなっている必要もなく、使用時間に制限も無い)のだが、ここでは三眼能力が封印されるらしい。

「ぅとさん……ちょ……待って…」

 息も絶え絶えになりがちになりながらも、クゥリスが必死に追いかけて来る。印打ちして欲しい木の下辺りで常に立ち止まるように待ちながら、琉都はゆっくりと前進する。

 苛立たしさを感じながらも琉都は、どこまで行けるだろうか、と考えてみた。

 だがやはり、クゥリスがこの環境に慣れるまでは、そうそう遠くまで出かけられそうにないだろう。

 そう思いながらも琉都は、次の目印とすべく選んだ木の下で立ち止まる。すぐにクゥリスが追いついた。

 しばらく呼吸を整え、クゥリスは一打ちだけ木の幹に小斧を打ち込む。

 ガン、と心地よいには遠い音と共に、小斧の刃が木の幹に食い込んだ。

「よいしょっ……」

 かけ声をかけクゥリスは、木の幹から小斧を引き抜く。

 そして一息つくと、どうにか肩に小斧を担いだ。

「疲れたか?」

 琉都は振り向き、クゥリスに訊ねる。

 だがクゥリスは首を横に振り、

「いえ、まだ、大丈夫です。これくらいで疲れてた…ら…?」

 否定しながらその場にぺたりと座り込んでしまった。

「疲れてるじゃないか」

 酸素が少ないから貧血みたいな状態になったんだろう、と琉都は持ち合わせの少ない知識からどうにか結論づける。

「すいません…」

 本当に申し訳なさそうにクゥリスは謝った。そしてだるさを我慢して、無理矢理に立ち上がろうとする。

 だが琉都はそれを押し留めると、先ほど印打った木にもたれさせた。

「仕方ないさ。…俺も一休みするかな」

 そう言って琉都は、クゥリスの隣に腰を下ろす。

「本当に、すいません…」

 さらに申し訳なさそうにクゥリスは、もう一度だけ謝った。

 琉都は、仕方ないさ、ともう一度言った。そして目を閉じ、寝ているような状態になる。

 クゥリスもそれに倣い、目を閉じて全身を楽にする。

 暫くの間、風が梢を揺らす以外、静寂と無言が二人を包んだ。

 その状態からまず解脱しようとしたのは、琉都だった。

「なあ、クゥ」

 聞いてないならそれでもいい、と思っていたのだろうか。顔を向けないままに、クゥリスに声をかける。

「はい?」

 何か嬉しいと思いながら、クゥリスは振り向かないまま声を返した。

「…いや、何でもない」

 琉都は少し安心したように、小さくため息をつく。

「呼んだだけですか」

 それでもどこか嬉しい事を、クゥリスは不思議に思わなかった。

 今の感情。それが論理的ロジカルな物では無いと言う事に、どこかで気付いていたからだろう。

「すまない」

 呼んだだけですか、と言う言葉に対しての謝罪。

 しかし琉都の中では、それ以外の事に対しての謝罪──いや己への戒めの意味もあった。

 今でも充分なのに、これ以上を望むなど。


 数分も休んだだろう。

 まだ充分に体力が回復したとは言い難いが、そろそろ動くべきだと琉都は思った。

 根を生やしてしまったように重い腰を上げ、地べたに座り込んでいたためについた汚れを叩き落とす。

 琉都の動きに気付き、クゥリスは見上げるようにしてその顔を覗き込んだ。

「休憩、終わりですか?」

「……いや、もう少し休みたいなら、構わないさ」

 そう言って琉都は、木に背を預ける。だが何かしていないと気が急くのか、琉都は小弓を手に取った。

 何も無い所に狙いを定め、弦を引き絞る。

 指を放すと、ビィン、と音がした。

「慣れないなァ…」

 そう呟き、琉都は矢筒から1本だけ矢を取る。小弓に番えると、手近な木の幹を狙い、引き絞り放った。

 カンッ、と鏃が木の幹に食い込む音。

「…やっぱり慣れない…」

「そんなに簡単には慣れないですよ」

 そうだよな、と多少投げやりに返事をし、琉都は小弓を下ろした。

「でも、クゥも弓射は苦手だろう?」

「できますよ。基礎動作は見て覚えましたし」

「へえ。どこで見たんだ?」

「姉が武器まにあで、古今東西の武器の扱いに長けていたんです」

「…あぁ、クゥは三姉妹の末だっけな」

 琉都はそう言い、三姉妹の姉二人の顔を思い出した。

 童顔でボケキャラでファゴッツ訛りおおさかべんの、長女メリシア。

 実は貰われっ子なんじゃないかと思うくらい顔つきが凛々しい、次女トリーネ。

 そして影は薄いが将来は良妻賢母の鏡になると予想される、三女クゥリス。

 皆1つずつ歳が違うだけだが、驚くくらいにキャラが違っていた。が、髪や瞳の色は、とても似ていた。

「門前の小僧習わぬ経を読む、ってやつか…」

「雷山習わぬ織歌を紡ぐ、じゃないんですか?」

 どちらにせよ『習ってもいないのに見て覚える』と言う意味合いだが。

「まあ、いい。見ての通り俺は弓矢は苦手だ」

「ですね。絶望的なくらい」

 そこまで酷いのか、と琉都は少し凹んだ。

 が、言葉を続ける。

「基礎動作を憶えている分、クゥの方が巧く射れるだろう? と言う訳で──」

 琉都は小弓と矢筒をクゥリスに押し付け、立てかけてあった小斧を手にとった。

「──役割交代」

「…はいっ」

 何が可笑しいのか、クゥリスはふっと表情を綻ばせた。

 その表情を、琉都は見られなかった。もう先に進もうとして、振り向いてしまっていたからだ。



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 夕方。

 沙紗は鬼に近い存在だが、心はまっとう以上に人間である。夜も外で寝ろ、とは言うつもりは無い。

 解錠するため、玄関へと向かう。

 だが何者かが見ているような気がして、鍵を解く手を止めた。

「…偉大なる主グラントマスターなん?」

 グラントマスター、つまるところの創造主クリエイター

 基体とグラントマスターが一致している場合のみ、人造人間ホムンクルス模造人間レプリカントはグラントマスターと交信できるのだ。

 もちろん一方的に監視する事もできるし、声──と言うより思念に近い物をやりとりする事もできる。

 しかし沙紗の問いかけは、どちらかと言うとすでに答えがわかっていて、それに対する確認を行うだけのようなニュアンスであった。

 幻術か歌術を使えば、完全に個別な世界で無い以上、モノリス・シャドゥの内部は見る事はできるのだから。

 沙紗が問い掛けると、その監視されていると言う感覚は消えた。

 気のせいやったんかな、と自分を納得させる。

 解錠し、扉を開いた。そして足下の人物に気付き、呆れたように言って聞かせる。

「…2人とも、そんな所で眠っとったら、風邪ひくで…」

 もちろん爆睡する琉都とクゥリスに聞こえるはずもなく、ただそこで眠っているだけだ。

 やれやれと呟くと沙紗は、2人を小脇に抱えログハウスの二階の寝室へと運んだ。






あとがき

はい、どーも。まいどのセンジン リュウトです。

「そして私がアメルダよーっ!」

……えー、どうやら手違いです。はい。

「手違いって、酷いじゃない。誰が呼んだの、だ・れ・が?

…手違いではなく、ただ単にキャラを掴みきれないだけで。はい。

「ちょっとちょっと…たかがそんな理由で、私の出番が少ないの?」

無問題。どうにかツッコミ系と言う最低限の条件は満たしているし、それなりの(これ重要)毒系もある。

「そんなキャラのつもり(これも重要)だったのね」



しかしこのあとがきの最初のアレを見る限り、お前もそーゆークチか?

「(ぎくっ)な、何がかしら〜?」

気取るな。確かに裏設定では【自主規制により削除されました】の令嬢で、いいとこのおじょーちゃんなワケだが。

「え、ええ、まあねぇ。おほほ…」

高笑いするとゆー設定は無い。

「…だって今まで一度も笑わせてもらえなかったわよ?」

仕方ないだろ。自分の想像力が及ぶ限り、お前が笑う所と言えば──(ハッ)

「きになるじゃない。続けてよ?」

話題が逸らされたが、お前も真のヒロインを狙うクチだろ?

「(ぎくぎくぅっ)さ、さぁ?」

目が泳いでるぞー



「そー言う作者は、本当は主人公とかヒロインとかは決めてるのかしら?」

もちろんだ(キッパリ)

「…意外だったわね…」

何が意外だ…。いや、だが恋愛と言う物を一切知らない孤高のロンリーガイなもんだから、苦手なんで、そのだな。

「彼女もできないダメ作者(ボソッ)」

そーいうお前はアルゼにすら(には、か?)振り向いてもらえないダメ女じゃねーか

「いいのよ。愛あればこそ、私の爆弾の被爆体になってくれるんだから」

もろ嫌がってたと思うけどな…

「気のせいよ!」



さて、放送時間ももう残り少なくなってまいりました。

「ラヂオだったの!?」

あとがきだし、微妙に次元をズラした所の事を書いてるわけだし、いいじゃん。

「う…」

それでは今日の締めくくりは、ゲストパーソナリティーのアメルダさんに──

「何をさせる気なの?」

──このSSの解雇通告を突きつけられた時のリアクションを。

「はいはい。わかりましたよ」

なげやりになったな…。 と、それでは今回のあとがきの語り手はセンジン リュウトと

「ゲストのアメルダ=エングローリスよ」

それでは読者の皆様、勢いのみで書いた当作品をお読み頂き(あとがきだけ読むと言う選択肢は選ばせないですよ)まことにありがとうございます。

「こんなヘタレでダメな作者の書いた作品に出ている私達を哀れに思うなら、どうぞ救いの手を…」

んじゃ、こんなところで今回もさらばーッス。今回の最後のシメは、アメルダが解雇通告を受けた時の反応で、どすか? 3、2、1──

「え…マジで?」

はい、マジで(笑)。さらばーッス