簡単に人物解説

新見 忍:英雄、14歳。搭乗奏甲、シャルラッハロートV。いろいろあってアーカイアへ、多少多重人格気味。
アーデルネイド・カルクライン:17歳、通称アール、忍と行動を共にする歌姫、少し意地が悪い

バージル・ラドネスク:38歳、忍の隊の小隊長



エピソード 2.01S『英雄達の狂想曲・第一』


女王討伐が完了した直後、忍は『白銀の暁』に参加していた。
場所はヴァッサァマインを目指す途上、エタファ〜シュベェレ間の野営地点、
しんがりを勤める忍達の隊は、評議会軍を何度か退けながら北上していた。

いつ現れるともしれない評議会軍に、部隊全体は精神的にも肉体的にも疲労がピークにあった。
そんな中、今後の方針を決める会議の席上。

隊長  「以上で終わるが、何か質問のある者」
各小隊長「「「ありません」」」
隊長  「うむ、つらい現状はよくわかっているが、もうしばらく辛抱してくれ。
     各々、自分や自分の歌姫の体調への気配り、奏甲の整備を怠らぬよう、各員に伝えてくれ、以上解散」

隊長の天幕から、小隊天幕に散って行く影の中に、忍とその小隊長のバージルの姿あった。

忍   「何か、以前にもまして張り詰めた雰囲気でしたね」
バージル「そうだな、敵がいつ来るかわからない状況だ。それに補給もままならない、ヴァッサァマインに入らない限り油断はできんな」
忍   「それと、本当なんでしょうか。『現世騎士団』・・、自分には信じられません」
バージル「確かなスジの情報と言っていたし、まず間違い無いだろう。コーダ・ビャクライ、何を考えているのやら。
     しかし、我々は否応なしに召喚されたのも事実、反旗を翻す者がいてもおかしくない」
忍   「小隊長・・」
バージル「そう、不安な顔をするな。安心しろ我々は白銀の歌姫の意思に賛同しここにいる、それと小隊長というのもやめてくれ、
     あっちで軍属だったわけではないし、ああいう場所でなければバージルでいいぞ」
忍   「はい、バージルさん」
バージル「ん、ここに来て幾日かすぎたが、まだ慣れなくてな。何年も会社の管理職をしていていきなり『英雄様』だ、最初は何かに騙されていると思ったものだ」
忍   「自分もです。女性だけの世界、絶対奏甲、こんなの物語の中だけだと思っていました」
バージル「まあ、若い方がこうゆうのは順応しやすいだろうし、表立ったことはおまえ達に任せる、どこでも俺は管理職がお似合いらしい」
忍   「そうですか?似合ってますよ、その甲冑姿」
バージル「よしてくれよ、今でも俺はスーツが戦闘服のつもりだがな」
忍   「バージルさんもですか、自分も学校の制服が捨てきれなくて・・」
バージル「おまえの場合はやっぱり、ブレザーにスカートとかか?」
忍   「やめてください、あれはアール達が勝手にやった事です!あんなにみんな笑うとは思いませんでした」
バージル「あれは傑作だったな、似合いすぎなんだよ、お前。自分の子供を思い出したぞ」
忍   「子供・・。バージルさんあっちに、お子さんがいるんですか」
バージル「ああ、お前と同じぐらいの歳だ、もちろん女だがな」
忍   「・・・、じゃあ、奥さんは?」
バージル「とっくに離婚したよ、娘も母親についていった、だから心配する家族はいない」
忍   「すいません、変なこと聞いて」
バージル「気にするな、今ではこんな記憶でも有りがたいものだ。
     この世界外から来たということを共有できるんだからな、この歳で知らない場所に飛ばされるのはさすがにこたえる」
忍   「・・・・」
バージル「まあ、気にするな。おまえがそんな顔しても何もならん、明日からまた忙しくなる、今日はゆっくり休め」
忍   「・・はい」
バージル「それと、隊長も言っていたが奏甲の整備、歌姫の体調には気を配れよ、もちろん精神的にな」
忍   「バージルさん!!」
バージル「はっはっは、その意気だ。明日も頼むぞ、少年」

その会話を最後に、バージルと忍は別れて、別の天幕に向かった。
天幕は小隊ごとに別れている、さらに小隊ごとに英雄と歌姫に別々の天幕が用意されている。
自分の小隊の天幕に戻る忍、他の隊員は日頃の疲れからか、すでに寝息を立てている。

忍「外から来た記憶・・・か・・」
ぼんやりと自分の手を見つめながら呟く、その呟きは夜の闇に吸い込まれるだけだった。


夜半過ぎ・・・
すさまじい轟音で目が醒めた忍、他の隊員も異変に気が付き、慌てて外に出て状況を確かめる。
「評議会軍か!」「奏甲起動、急がせろ!」「見張りは何をしていたんだ!」
たくさんの声が交錯する。夜襲、その言葉が頭をよぎる。

アール「忍、無事か」騒ぎに気づき、別の天幕から歌姫達も出てくる。
忍  「僕は大丈夫、奏甲を出すから準備をお願いします」
アール「わかった、気を付けろ」
忍  「アールもはやく安全なところへ」手短に会話し、それぞれ行動に移る
自分の奏甲へ向かう忍、そこへ大きな影が落ちる、見たことも無い奏甲が立ちはだかっていた。
忍  「これは、新型・・」
見たことも無い奏甲に戸惑う忍、目標を定めた新型はゆっくりと忍に近づいてくる。

(死ぬのか、こんなところで)目の前の奏甲から、とてつもない殺気を感じて忍は動けなくなっていた
突如、新型が横に吹っ飛ぶ。煙の中から見なれた小隊マークを付けた奏甲が現れた。
バージル「小僧、無事か!」バージルのプルプァ・ケーファだった。
忍   「大丈夫です、それより奴がまだ」新型は不意の攻撃でよろめいたものの体制を立て直す。
バージル「ここは、まかせろ。とにかく自分の奏甲に急げ」新型に向き直り、間合いをとる。
忍   「何者なんですか、奴らは」慌てて置きあがりながら、聞き返す。
バージル「奴らは・・」そのとき、新型の右腕が奇妙な形に展開する
バージル「現世騎士団だ!」新型の右腕から放たれたもの、それは何度聞いても聞きなれない奇声。
忍   「・・奏甲が、ノイズを・・・」忘れ様も無い苦痛、それは『蟲』の放つノイズに間違い無かった。

エピソード 2.01S END

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