勇気の言葉・メイデンサイド3 「シギュン、時間が無い、戦闘起動だ」 「おい、まだ僕がいるんだぞ」 まだ整備中だってのに・・本当に自分勝手な男だ。 「なんだ・・まだ中に居るのか。おまえは適当に巻きこまれていろ」 微かな浮遊感と振動、本気で動かす気だ。 「ふざけんなよ、大人だからって何でも都合よくいくと思うな」 「シュレット・・この中にいる方が今は安全だわ」 むう、お姉ちゃんまでそんな事を言うし・・。 「安心しろ、おまえの整備の腕が確かならすぐ済む」 そんな事言われても全然嬉しくないやい。 「・・・・一つ聞かせろよ」 「何だ」 「あんた、お姉ちゃんと宿縁じゃないんだな」 「・・・・」 お姉ちゃんの息を呑む気配がする、中年はずっと沈黙したままだ。 中年は何も言わない、お姉ちゃんを咎めたりもしない。 だけどその沈黙が全てを肯定していた。 ※ ※ ※ 「敵は奇声蟲だ」 街を抜けしばらくしてからやっと中年は口を開いた。 正直、張り詰めた空気にだいぶまいっていたのである意味助かった。 戦闘のこの瞬間だけは、さっきのやりとりは保留という事だろう。 大人の汚さに乗っかるのはしゃくだけど僕もそうしてくれる方が助かる、 できればずっと保留にしておきたいぐらいだ。 「チビスケ、アイヴィスの調整具合は?」 「使えるようにはしてあるよ、だた実戦で使ってみないとなんとも言えないね」 「それでいい」 僕も今は戦闘に集中することにする。 「シィギュン、幻糸炉の調子は」 「いつもより高い反応です。いけます」 お姉ちゃんも事務的に話している。それがいつも通りなのか特別そうしているかはわからない。 「んじゃあ、ちゃっちゃとかたずけるか」 更に強い加速感、状況が見えないってかなり不安だな・・。 「ようし、いくぜぇ〜カウンターソード」 中年がアイヴィスの武装の一つを叫ぶ。正直、ちょっとうるさい・・。 武装は主にカウンターソード、フォールディングシザー、ガトリングステークシリンダー。 それらが左腕にすべて多少乱暴に収まっている。 更に剥き出しの精密機構にシールドを被せて誤魔化しているという代物だ。 アイヴィスは僕から言わせれば英雄の腕に依存しない武器だ。 弓矢とクロスボウの違いと言えばいいかもしれない。 弓矢は構えて射るのにそれなりの技術と経験がいる。 クロスボウは発射体制にして、トリガーを引けば誰でも同じ威力の矢が発射される。 それが素人の僕だろうが、あの中年だろうがかわりはない。 これは桜花やレグニスさんとは違う意味の強さだ。 それを否定するわけじゃないけど、僕はあまり好きになれない。 戦い自体が好きじゃないけど、それを簡略化して更にその先に何かをしようという考えは酷く不気味に感じだ。 その点、桜花はそれを自分の生き方としている。 遠回りでも力を振るう事を研鑚してその本質を自分の中で問い続けている。 道具だからとか、手段だからとか見限ってはいない。 あの中年はそれを悟ったように振舞う、その事が気に入らないのだ。 解ったと思った瞬間が一番危険なのだ、どこかで聞いた言葉だけど真実だと思う。 ※ ※ ※ 「フォールディング・・・ガトリングステェークゥ!」 シリンダーの回転音と衝撃、なんか好き勝手やってるな・・。 奇声蟲が相手ならまずこの武装で負けることは無いだろう。 強力すぎるのだ、奏甲でもこれを防げる機体はそうは無いだろうと思う。 たぶん蟲はズタズタになっていることだろう。外が見れなくて良かったと思う。 「ちぃ、こいつカテェな・・」 ステークの衝撃音に嫌な音が重なる。何か硬い物を引っかいているような・・。 「バッド様、それはデータにありません。新種です。本当の意味での」 まずいな、ガトリングステークは連射で敵の内外を粉砕する兵器だ。 その一発一発の威力は高い方ではあるけど致命傷を当てる物ではない。 ましてや機械仕掛けだ。炸薬やステークの材質を交換しない限り威力は上がらない。 「いやあ、こいつはただのできそこないさ。例の毒の製作時に出来た副産物だ」 「知ってるのかよ!」 おいおい、またかよ・・。 「これでもちゃんと仕事はしてきたんだよ、最後にドジッたけどな・・」 「無能!ミスっちゃ意味ないだろう」 「ここで仕留めればチャラだろう、だいたい現世騎士団の連中も出払った後だったしな・・」 「おいおい、根本からミスってないか中年!」 「これはあてつけさ、自分等で始末出来るものをわざわざ俺に押し付けてきたんだからな」 「犯人がわざわざ証拠を野放しにするのかよ!」 これだから大人同士のもめごとは嫌なんだ。 「ばれても自分達には追い付けないと思ってるんだろう、自身過剰な連中だ」 「お前が言うな!いいからさっさと何とかしろよ!」 「おおよ、言われなくても!シィギュン、ビブラートとアイヴィスを同調させろ」 「はい。ビブラートジェネレーター、アイヴィスとの連結完了。いけます」 「聞いてないぞ、そんな機能!」 「るせえ、敵を欺くにはってよく言うだろう。チビスケ、シリンダーのパージシステムはいじくってないな?」 「・・・・・・ふん、僕は動く様に調整しただけだよ」 不覚だ・・システムを見ぬけなかったなんて・・。 「よしよし、おまえはいい奴だよ」 「うるさい、うるさい、いったい何をするんだよ!」 「・・・・・・パージシステムを利用してシリンダーで蟲を打ち抜く」 「成功するんだろうな・・」 「俺を信じろ」 「・・・・・・今更それを言うかよ・・」 「ピーピー鳴くな、ヒヨッコが。人生谷あり谷あり、落ちるところまで墜ちようぜ!」 「山は無いのかよあんたの人生には!」 バカだ、この中年は本当にバカだ。確かにガトリングステークが効かなければそれ以上の物をぶつければいいだけの話しだけど・・。 「とっておきのフルコースだぁ、いくぜぇ、カウンタァァソォォォドォ」 きっと、ソードを突き刺しているのだろう。システムの使い方だけをみればセオリー通りだけど・・。 「フォォォルディング・・シザァァァァァ」 ソードはあくまできっかけだ、それはシザーが展開して敵を固定するまでの時間稼ぎ・・。 「ガトリングステェェェェェクゥゥ」 もう、聞き慣れた衝撃音。 固定された目標は普通だったらここで無数の杭に打ち抜かれる所だけどそうはならない、 やはり相手の蟲は特別らしい。 「風通しを良くしてやるぜぇ、アークインパクトォォォォ」 辺りが轟音に包まれる。さっきまで高速回転していたシリンダーが射出されたのだろう・・ 圧倒的な質量のぶつかり合い・・・零距離ロケットパンチ・・何故かその単語が僕の頭をよぎった。 バカバカしい・・こんなの・・こんなの理論も信念もへったくれも無いじゃないか! ※ ※ ※ 終わった・・全てが終わった。 この二人はいつもこんな葉茶目茶な戦いをしているのだろうか・・。 アイヴィスは無理がたたってか今は動かない。当たり前だ、規格外の使われ方をしたのだから。 っていうか整備間もない機械を壊すな作業者の目の前で・・。 そうか、整備屋が戦闘に参加しないのは壊れるのを見るのが嫌なんだ。 桜花が物持ちがいいから全然気が付かなかったけど・・。 帰り際、ハッチを空けて外を見る。既に空が明るくなっていた。 街からヒィメル・メーヒェンが飛び立って行くいが見える、 忍君だな桜花達を連れてくるって行ってたけど場所わかってるのかな? あ〜あ、お姉ちゃんと過ごせる時間がこんな形で最後を迎えるなんて・・。 僕は街に戻るなり泥のように眠った。 ※ ※ ※ 目を開けると部屋は真っ暗、どうやら夜になってしまったらしい。 「優雅な晩餐だなおっさん・・」 遠くから優夜の声が聞こえる。そうか、みんな帰ってきたんだ。 「こっちだって一仕事した後なんだ、準備は出来てる目的の物をくれ」 元気だなあの中年・・。お前は嬉しそうに叫んでいただけだろう。 「おじ様、シュレットは?」 「ああ、上で休んでる。あれにもだいぶ酷な事をさせたからな、そっとしておいてやれ」 へいへい、僕はそっとされてますよ・・。 それよりも桜花、中年を『おじ様』って呼ぶのやめない?絶対調子に乗ってるって・・ 確かにローザリッタァの整備とか奏甲用の刀の費用とかお世話になったけどさ・・。 僕は身体を起こすのが億劫なのでまた眠りにつくことにした。 まあ少しだけなら見直してやってもいいかな・・。 ※ ※ ※ 深夜、なんとなく目が醒めてしまって1階の食堂に出てきた。 「寝る前に何か入れておくんだった・・」 考えてみれば、日付が変ってから何も口にしていない。 「シュレット、お疲れ様」 お姉ちゃんがさも当然といった感じでそこに居る。 「あ、うん」 「お腹が空いたでしょう、スープがあるわ」 「う・・うん」 何でもお見通しなんだな、お姉ちゃんは・・。 僕がスープをすする音だけが辺りを包む。 「みんな、もう大丈夫なの?」 やっぱり何も言えないな、あの二人関係には・・。 「ええ、心配無いわ。あなたの連れている二人以外は」 「何、何か問題があるの?」 やめてよ、冗談でしょ? 「バッド様に口止めされていたけど、あれは毒を中和する物ではないわ」 「・・・じゃあ、じゃあなんなの?」 「あれは毒を他の人間に移す効果しかないの、本当に歌姫にだけしか効果が無ければそれで問題は無いわ、けど・・」 けどって、まさか・・。 「女性にだけ効くものかもしれない」 「・・そんな・・でも、僕も桜花も『あれ』は口したよ」 見た目に雲泥の差はあるけど、僕も桜花も同じ女の子だぞ。 「そうね・・大丈夫だとは思うわ、バッド様の言葉を私は信じたい」 やっぱり、また中年なんだ。 「忍様の周囲の人間なら簡単には死にはしない・・と」 そこで何故に忍君がでるかな、なんか二重にどうかと思う・・。 ガタガタっと上の階で物音がする。 まさかな・・と思ったけど一様確認。会話も何か嫌な感じになっちゃったし・・。 「ちょっと見て来る」 で、2階に上がると・・。 「あれぇ、ラルカちゃんどうしたの?」 「うん、何でもない」 何でもなくはないでしょ、何かそわそわしてるし。 「桜花が大変だったけど、何でもない」 「は・・え・・桜花が!?」 慌てて部屋を確認する。 「桜花!」 叫びながら部屋のドアを開ける。 そこにはさっきまでベッドで寝ていたはずの桜花が、荒い息をしながらしゃがみ込んでいた。 「桜花、大丈夫?ねえ桜花」 くそ、あの中年もっと確実な手段は無かったのかよ! 「・・・わ・・たし・は・だい・・じょう・・ぶ・です」 そんなの・・全然大丈夫じゃないって・・。 「・・・それ・・よ・り、あの・・ひと・・を」 何かを伝え様としている。けど、これじゃ桜花がもたないよ。 「・・・・き・・しお・・さん」 そのまま桜花気を失ってしまった。 「シュレット、私が診ます」 いつのまにかお姉ちゃんが現れて、桜花をベッド運ぶ。 「お姉ちゃん、桜花は大丈夫なの?」 「・・・・・ええ、軽く症状が残っているだけみたい、シュレットタオルを持ってきて、汗を拭くわ」 「うん」 僕は部屋を出る、ラルカちゃんはまだそこに居た。 「シュレット・・桜花、大丈夫だよ」 「・・・え、なんで?」 妙に自信満万だ。 「だってお兄ちゃんと約束してから」 「誰?優夜さん?」 「ううん、変なお兄ちゃん」 何だか全然要領をえないし・・。 結局、しばらくして桜花はラルカちゃんの言葉通りに落ち着いた。 僕は完全に目が醒めてしまって、それからなんとなく外を歩く。 あの中年め、なんだかんだで桜花を危険な目にあわせやがって、 ちょっと感心してたけど、やっぱり認めないぞ。 ※ ※ ※ 気が付くといつもの奏甲整備場に付いてしまった。 今はあの中年の奏甲と・・。 「あれ、どうしたのこんな遅くに・・」 忍君とヒィメル・メーヒェン・・それはこっちのセリフだって・・。 「帰ったんじゃなかったの?」 軍属なら忙しいと思うけど。 「ん、まあね。ちょっと考え事をしててさ」 「あそう、やっぱり大変なんでしょ。まだ14だもんね」 「ん?うん、そうだね、僕はまだ子供だしね」 「大変だよね子供ってさ。大人に振りまわされっぱなしでさ」 「でも、子供は自分の振りまわし方は知らないからね、しょうがないよ」 おおう、どっちの味方なんだか・・。 「・・・僕はなんか疲れちゃったよ。いいように扱われてさ」 今回の事を僕はどう受け止めるべきなんだろう、どんな顔であの二人を見送ればいいのかな・・。 「無理をしているんだね。そんな時はさ、自分のしたいようにすればいいんじゃない?」 「簡単に言うね・・」 「簡単なことだもん、当事者以外にはそう見えるさ」 それは同情でもなく、叱咤でもない。ただ事実だけを突いてくる。でも嫌味には感じない。 不思議な人だ、話していると自分の悩みが酷く小さくて簡単に思えてくる。 「ねえ、君は自分の居た世界に未練ってある?」 自分の事に余裕ができたのかもしれない。 「あるよ、いろんな事を残してきちゃったから」 「戻りたいと思う?」 「それはわからない、こちらでの約束を果たしたら考えるよ」 「約束?大切な人との?」 「そうだね、大切な人はあっちにもいるけど・・」 「へえ、僕より若いのに・・ねえ、どんな関係の人?」 ちっくしょ〜ませてるなあ、 「うん・・僕はその人をずっと追いかけ続けていたんだ」 「いたって・・途中でやめちゃったの?」 「うん、やめたのは僕の意思だけど、いい人がいてね。僕に新しい役目をくれたんだ」 「じゃあ追いかけていた人はもうどうでもいいんだ」 「いや、彼女には僕を追いかけて欲しかったんだ・・もう簡単には追い付けない所まで来ちゃったけど」 これだけ聞くと勝手な意見に聞こえるけど、まあ事実は本人しかわからないしね。 「寂しい?」 「そうだね・・最初は確かに不安だったけど、ここで大切な物も見つけたし・・ それにひょっとしたら、彼女、追い突いて来るかもしれないな、変っているから」 君も十分変ってるけどね。 「ここで見つけたのって、やっぱり歌姫さん?」 「・・・・うん、でもそれはたまたま彼女が歌姫だったにすぎないしね、 彼女が彼女のままなら他の事は関係ないよ、 でも、それが彼女にとって不幸になるんじゃないかと思うとちょっと不安だな」 「だったらさ、君もしたいようにすればいいじゃん」 「簡単に言うね・・」 「簡単なことだもん」 なんてちょっとカッコ付けてみたり・・。 それからどちらともなく笑いあった。 そう、僕達はまだ子供なんだ。どうしようもないほど子供なんだ。 そのまま僕は朝を向かえた。 忍君は朝をまたずに飛び立っていった。 忍君の気になる歌姫さん、アーデルネイドっていうそうだ、 去り際にちょっと話しをしたけど、忍君とは別の意味で不思議な人だった。 「歌姫って大変ですか?」 ほとんど面識のない人にちょっと失礼だったけど・・。 「いや、たいしたことはない。これはこれで楽しいものさ」 どこか無理をしている感じがしたけど、前を向く事は忘れていない。この人の目がそう言っていた。 ※ ※ ※ 宿の食堂、ベルティが何事もなかったように降りてくる。 「5日も寝こんでいたの私・・・なんで?」 本当に幸せな奴だよあんた・・。 「・・・・知らない方がいいかも」 それからいつもの面々が現れて、いつものように騒がしくなる。 「・・・さてと」 そんな中、宿を出ようとするお姉ちゃん達を見かけた。 僕はコップの水をいっきに飲み干して追いかける。 さあ、子供は子供らしくやってやろうじゃないの♪ 「おい」 裏口から周って来て、入口で待ち伏せた。 「おう、シュレット。世話になったな」 ああ、こちらもいらないくらい世話になったよ。 「それだけか中年」 「他に何があるんだ、おチビ」 「僕はおまえを認めたわけじゃないからな」 まずこれだけは言っておかなきゃいけない。 「それはおまえの勝手だが・・・シィギュンはもう少しの間借りて行くぞ」 「・・・なんでお姉ちゃんじゃなきゃダメなんだよ」 「昨日言っただろ?たまたま手近な所に同じ目的の人間がいただけだ。深い理由なんてないそれだけのことだ」 相変わらずの冷たい対応、まあそう返すとは思ったけどさ。 「酷いよ・・・そんなの・・もっと何か言いようがあるじゃないか・・・・大人なんだろ!宿縁だからとか、大事な人だからとか、もっと上手な嘘をついてよ!それらしい嘘で・・僕を・・・騙し続けてよ」 僕は子供だ、だから僕は僕のやり方であんた達を止める。これは本心でもあるし涙は自然に流れてくる。 でも頭の中は冷静だった。子供の方が場合によっては残酷なんだ、自分のためなら泣きもするし、 わめきもする、手段は選ばないよ。 「確かに俺は自分のためなら平気で嘘を付くし裏切りもする。お前みたいなガキを誤魔化すのなんて難しくない・・・今回のはただの気まぐれだ。俺はお前に何も望んでいない」 「・・・・何だよ・・・それ・・」そう、それでもいいさ。 その方が助かるぐらいだ。僕だってこれぐらいの事なら平気でやってやるしね。 「大人の都合ってやつだ。それにお前は少し巻きこまれたそれだけだ。シィギュンはちゃんと返す、だがもう少しだけ待て」 「そんなの・・信用できない」でも、一つわかった事もある。 お姉ちゃんにこだわっているのはこの男も同じだということを。 本当に最善を尽くすなら、もっと選択肢はある。それをしないのはこの男の甘さなのだと思う。 「だろうな、だからこの数日だけ姉妹ゴッコを黙認してやったんだ。せめてもの情けってやつかな。恨むなら恨め、どうせ俺は地獄行きだがな」 『俺達は』ではなかった。あんたやっぱり長生きできないよ、そうやってなんでも自分で背負っちゃうんでしょ? お姉ちゃんを一人にしないためにあんたは『利用しているんだ』 行けよ、最初から止められるとは思ってないし、 そんなんで気持ちが変るようじゃ、お姉ちゃんを任せられないし。 「・・・・シュレット」 お姉ちゃんが居る、その先のやりとりはほとんど覚えいない。 やっぱりさ、悲しいよこういうの、全然慣れる事はできない。慣れちゃいけないとも思う。 二人は去って行った。大人らしく。 「シュレット」 桜花だった。嫌だな、変なとこ見られちゃった。 「シュレット、おじ様から話しは聞いたわ・・」 たまらずに僕は桜花の胸に飛び込む。 「大丈夫・・だよ、僕は・・大丈夫」 桜花の手がやさしく僕の頭に添えられる。 「でも、少しだけ・・泣く」 僕はまだ子供だから、 だからこうやって、ちくしょう、ちくしょうって心の中で毒づきながらわんわん泣いて見送るんだ。 大人が困ろうがしったこっちゃ無い、自分の気持ちをありのまま言葉にして叫ぶんだ。 僕はまだ子供だから・・。 勇気の言葉 〜了〜 ●後書き 精神コマンドは3人分使えます!・・・いや、そうでなく・・・。 このお話しはまずコンダクターサイドのネタがチャットで出たのがきっかけでした。 事実、お二人のキャラの自分なりのキスシーンを書いてみたかったのがあったんで・・。 で、書いているうちに裏の状況、つまり残されている方も意外と面白いのではないかと思って 書き残していたシギュン姉妹とバッドの話しを追加しました。 あとは少し悪乗りの戦闘シーンを入れたりとか・・。相変わらずの説明不足ですが・・。 大好きなロボット大戦ノリの自分の趣味がかなり出てます。 『A・I・V・I・S』は自分の頭の中ではしっかりアニメーションしてます。 話しは少しずれますが。ロボット大戦のOG2もちゃんとクリアーしました(2005年、2月現在) しかし、ディカステスを10年ぶりに倒す事になるとは・・。 あとOG2ではオウカ・ナギサを少し気にしながら見てました。 同じ名を持つ者がどういった生き方をするのか・・。 自分の見て知る限り『おうか』と名のつくものは人であれ物であれ悲劇的な結末ばかりを向かえます。 物体は名に縛られ、自分自身そして社会から、その固定されたイメージ通りに流されてしまうものです。 自分の書く桜花にはそれを承知の上でイメージを払拭してもらいたと考えています。 あえて名が背負ってきたイメージを覆す生き方があってもいいかなと自分は思います。 |