エピソード 2.42 『富と栄光の行進曲・第2』 しばらく進んで、とりあえず休憩をするルルカと忍。 ルルカ「・・でも怪我がなくって良かったですね」 忍 「そうだね、他の人達とははぐれちゃったみたいだけど・・」 ルルカ「そうみたいですね・・。さすがにおいてけぼりにはしないと・・・思います」 優夜なら冗談でやるかもしれない。そんな思いが一瞬よぎった。 忍 「どうしたの?」 ルルカ「い、いえ、何でもないです。と、とにかく忍さんがいてくれれば安心です」 自分の考えを振り払うため、他の話題をさがす。 忍 「そうかな?」 ルルカ「そうですよ!どこかの平々凡々なやる気ゼロで、普段は何もせずここぞという時はもっと何もしない、 人を困らせることにしか生甲斐を感じない、何処かの英雄様に比べればもう天と地の差です!」 忍 「そういうところ似てますね」屈託なく笑いながら言う。 ルルカ「え、え、そ、そんな、そんなことは無いです。私が優夜さんに似てるだなんて・・ それは確かにずっと一緒に旅をしてきてましたが・・」顔を真っ赤にしながら弁解する。 忍 「僕は優夜さんだなんて一言も言ってないですよ」更に可笑しそうに言う。 ルルカ「・・!?、あ、あわわわ。も、もうやめてください。忍さんて意外と意地悪なんですね」 顔から湯気をださんばかりに真っ赤にして、俯いてしまった。 不意に忍は奥に顔を向けながら呟く。 忍 「印象なんてそんなものです。誰が誰をどう思うか・・それはただ本人の思いこみでしかなく、 それ以外の顔がその人にあったとしても、なかなか見えないものですから・・」 突然周りの温度が下がってしまったようだった。ルルカは今まで茶化されていたのも忘れてじっとその横顔を見る。 ルルカ「忍・・さん?」一瞬にして別人になってしまったようだった、不安になって思わず声を掛ける。 忍 「あ、すいません、変なこと言って。そろそろ先に行きましょうか、僕もなるべくがんばりますが、迷惑をかけることもあるかもしれません」 振りかえって笑う顔は、今まで見た忍のそれだった。 アール「・・・で、こんなことになった責任をおまえはどう取るつもりだ」 延々と続く通路、石畳である程度整えられているからまだ楽なものだが。 バッド「何回に言わせるんだよ、土下座でも何でもしてやるって」顔に反省の色は見えない。 気が付いた時にアールデルネイドとバッドラックは周りに誰もいない事を確認し、しかたなく先に進むことにした。 一定間隔で十字路にぶつかる回廊、幸い明かりは予備があったので進むことはできるが。 アール「常々思うのだが、なぜシィギュンはこんなの奴に愛想を尽かさないのか・・」 バッド「何?聞きたい?俺とシィギュンの馴初め」 アール「のろけは結構、まあシィギュンも考えがあってのことだろうし・・」 そうこうしているうちに何度目かの十字路にでる。 バッド「またか、これで何回目だよ・・・ったく」 アール「12回目だ。3回前に左、9回前に右に曲がったから方向は最初と変わりないはずだ」 そう言って手に持っている紙の書きこむ。 バッド「何?今までの道を書いていたのか」 アール「これ以上迷うのは御免だからな、自分は自分なりの努力はする」 バッド「・・・なあ、アールの嬢ちゃんよ」 アール「なんだ、今忙しいのだ」書きこみながら答える。 バッド「・・・なんか床が回転してるっぽいのだが・・」 アール「・・何をバカな。さっきから印をつけながら進んでいるではないか」 振り向きもと来た道を確かめる。確かに通路の脇にナイフでつけた傷がある。 バッド「いや、なんとなくこの十字路の中心に立つと違和感を感じてな・・」 アール「幻覚とでもいうのか・・確かにここでは歌術も使えないようだが・・・」 落ちてきて最初に確かめたが、どうも歌術の力があまり及ばないらしい。 バッド「いや・・嬢ちゃんがそれに書きこんでいるときに、特に変な感じがな・・」 アール「私の行動を邪魔する者がいるというのか?」 バッド「まあ、なんとなくだけどよ」自信なく、頭をかきながら言う。 アール「わかった、試にお前の勘を信じてみようじゃないか。お前が先に歩け」 バッド「へいへいわかったよ、ったく人使いが荒いぜ・・」 アール「ぼやくな、もとわと言えばお前のせいで・・・」 バッド「わかったからそれ以上言うなって」 二人は位置を入れ替え闇の中へ消えて行く。 そして・・・。 優夜(困った・・・) シィギュンと二人になった優夜は途方にくれていた。 優夜(何を話したらよいのやら・・・) 全てを微笑で返すシィギュンに、どう対応していいかわからなのだ。 いつものノリ突込みが通用しない、この手のタイプにはとことん弱い。 それ以前に『綺麗なお姉さん』はどことなく苦手だった。そんな漫画を読んで育ったからかもしれない・・。 とりあえず、顔をあわせないように先を歩くことにしているが。 シィギュン「どうかしましたか?優夜様?」 優夜 「え、や、別に・・何処いったんでしょうね他の人達は・・」普段のなれなれしい口調も影を潜めている。 ルルカが見たらきっと笑うことだろう。 シィギュン「どうでしょう・・みなさん無事だといいのですが・・」 優夜 「そ、そうですね。きっと大丈夫でしょう・・ええ」自分でどんな受け答えをしているかもよくわからない。 ここにもう一人でもいてくれれば幾分楽なのだが。 優夜(ルルカ〜助けてくれ〜)理由はともかく、ここにきて自分の半身の存在の重要さを思い知らされる優夜だった。 忍「まいったな、ほんとうにみんな何処いっちゃったんだろう」 延々と続く洞窟、かなりの時間進んでいるがいっこうに影も形も見えない。 忍「やっぱりバッドさんがいけないんだ。ろくに下調べもせずに来るから・・まあそう簡単に死ぬ人じゃないけど・・ 優夜さんやルルカさんはたまったものじゃないだろうな・・」 先ほどから少し先を歩いて慎重に進む。 忍「ねえアール。先に気が付いたんだから何か書置きとか見なかったの?」振りかえり自分の半身を呼ぶ。 しばらく待つとアーデルネイドが歩いてきた。 アール「さあな、私が起きたときには誰もいなかった。しかしあの男・・今度会ったらただではおかん・・」 忍「きっと言っても聞かないよ、とにかく道は一本しかなかったんだし先に進もう」再び先を歩き始める。 アール「そうだな、みんな無事だといいが」少し遅れて歩き出した。 この洞窟が付近の住民から『幸割の洞』と呼ばれているのを一同が知ったのは、だいぶ後の話になる。 エピソード 2.42 END 後書きのようなもの・・・読んでいておやっと思ったかもしれませんが、全て仕様です。 |