エピソード 2.43♯ 『富と栄光の行進曲・間奏〜刃の心の記憶〜』
 
※今回はかなり本編と逸脱してます。
 
忍  「そういえばアールって寒がりだったよね?」
歩きつかれて途方にくれる二人。丁度洞窟内に小川が流れているのを見つけたので、休憩することにした。
アール「北国生まれの寒がりが珍しいか?」
忍  「いや、そうじゃないけど・・ここも随分冷えこんでいるから、大丈夫かなって思ってさ」
アール「今更心配されるほどでもない・・歌術でどうにでもなる」
忍  「そっか、ならいいんだ」
アール「どうした?そんなに寒そうに私はしていたか?」
 
しばらくの沈黙の後、忍が口を開く。
忍  「いや・・なんで、僕が言った嘘にのってくるのかなって思ってさ」
アール「その嘘の真意を知りたいから・・・では理由にならないか」
忍  「アールは嘘は嫌いだ、秘密にするのはしょうがないっていつも言ってた」
アール「では、もうアーデルネイドである茶番をする必要が無くなったと言ったら・・」
 
立ちあがり、お互い数歩の距離で対峙する。
忍  「最初からそう言えば良かったんだ、こんな回りくどい事をする必要は無いと思うけど・・」
アール「何事にも演出は必要だと思うが・・そうは思わないかい『刃の心』よ」
アーデルネイドの口から発せられている言葉は、すでに別物と化している。
 
忍  「そこまで人の記憶を覗くのはあんまりいい趣味じゃないよ、何をしようというのさ」
アール「すまないね、私は他の者と違って少々荒っぽいのだよ」
忍  「みんなは無事なんだろうな」今までにない殺気のこめた声が響く。
アール「大丈夫、後は君だけさ。君が一番強情そうだからね・・」
忍  「別に・・ちょっとほおっておけない人をあっちに残してきたのが気がかりなだけさ」
アール「やっと話しをする気になったようだね・・君は面白い・・・最高のもてなしをしなくちゃね・・」
 
瞬間、一陣の風が吹く。
忍  「その口調・・ここまで来て聞きたくは無かった・・」いつのまにか手に剣が握られている。
アール「はっはっは、面白いな。仮にも姿は半身だぞ、ためらいもせず首をはねるとはな」
首だけになったアーデルネイドから言葉が発せられる。
 
忍  「肉体なんて関係無い・・あんたはアールじゃない・・そしてあの人でもない・・ただの幻だ」
アール「そうだ私は宝の番人・・人の記憶をさぐり宝に見合う者をさがすだけのシステム・・
    だが・・それとわかっていて、そこまでムキになるお前はなんだ?」アーデルネイドの姿が消える。
 
忍  「ここまでしなきゃならないほどの物を残した人達と、それだけの宝が必要かもしれない今のこの世界に怒っているだけだ」
 
???「違うな」
忍の後ろから声がする。振り向くとバッドラックがいる。
 
バッド「お前はお前の残してきたものが気がかりなだけだ」声はさっきと同じだ、
それだけに不気味さが漂う。それの形が崩れて、シィギュンになる。
 
シィギュン「そして、開放された安堵感につかり自分の過去を無かった事にしようとしてる」
 
忍「ここは閉鎖された世界だ、僕にはもう関係無い。あの人の理論や技術でもどうにもならない」
 
ルルカ「でも、どこかで、『もし』や『まさか』に怯えている」それはいつのまにかルルカを模している。
 
忍「ああ怯えてるさ、あの人の事だ。いつどこから現れてもおかしくない・・」
 
優夜「だったらいっそ向き合ってしまえばいい」それは優夜になりそして・・
デッド「そんな中途半端な気持ちで、これからここで生き残れるとも思うまい?」デッドアングルになり、消えた。
 
忍「いいかげん人の記憶で遊ぶのは止めてくれないか!」
 
???「そうだね、じゃあ本人どうしでカタをつけるってのはどうかな?」
目の前に女装をした時の忍がいる。
 
忍「その姿を見せるな!」
シノブ「それはこれが『あの人』そのものだからかな?」
忍「ああそうさ、そうだとも!」
シノブ「そんなに邪見にしなくてもいいだろう、こんなに似合っているんだから」
忍「だからさ!僕があの人の影であることを忘れられない・・」
シノブ「誇りに思うべきじゃないかな・・成功すれば君は『英雄』だよ、おっともう英雄様だったね」
忍「そもそも時を越えるなんてこと自体が、馬鹿げている、人の領分を越えている」
シノブ「物語を超えると言ってほしいね、そこいらの人間の妄想と一緒にしないで欲しいな」
忍「同じことだ!あんた一人の妄想のおかげで、何人の人間が消えていったか・・」
シノブ「その成果が君にも反映されているんだよ、その力、その知識、消えていったみんなとやらの大切な経験だ」
忍「僕はこの力をこの世界のために使う、そう決めたんだ。あんたはもう僕がいないあっちでは何もできない」
シノブ「確かに、君がいなくなった事でだいぶ支障をきたしたけどね、でも、この会話が本当に宝の番人のものだという保証はあるのかな」
忍「・・・・そんなことは・・無い!」
シノブ「断言できる要素は無い・・君が一番良くわかるだろう・・もし、僕が本当にあっちからここと会話ができているとしたら・・」
忍「それ以上は言うな!」再び剣が風を呼ぶ。
 
シノブの姿が掻き消える。しかし、声はどこからか響いてくる。
シノブ「そうやって、ずっと君は心にシコリを残して生きるんだね・・せっかく一流の悲劇がまっていたのに・・」
 
忍「何が一流だ!そんなものはいらない。何を言われようが僕はここで、あんたが嫌いな三流のハッピーエンドで終わってやる」
 
シノブ「やれやれだ、まだそんなことを言っているのか。
    でもね、君は『刃の心』なんだ、それ自体がどんなことか良くわかってて言うのなら止めないよ」
 
そしてそれの気配は消えた。
 
しばらく虚空を見つめる忍、闇は何も答えずただ沈黙を守っていた。
 

エピソード 2.43♯ END
 
・後書きでなく注意書き
これは完全に忍というキャラクターの内面のことなので、
気にせずこの先を読んでもらっても何の支障も無いです。物語に対する複線とかにはたぶんしないので・・。
これはその内何処かでやろうと思っている、オリジナルの叩き台みたいな物なので・・。

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