エピソード 2.53 『終わり無き遁走曲〜夢のレプリカ〜 第三』 ブラーマ「では、レグとイリアルドは街のでの聞きこみを頼む」 朝、朝食をそうそうに済ませて、ブラーマは今日の行動予定の指揮をとる。 レグニス「俺はこういった事は苦手なのだが」 ブラーマ「では、お前が手紙の解読とコニーの世話をするか?」 レグニス「どちらでも構わんが、まあいいだろう。では、いくか」 忍「はい、すいませんがお願いします」 忍は相変わらず女装である、本当にこのまま突き通すようだ。 桜花「私も何かお手伝いしますか?」 ブラーマ「桜花は私と一緒に解読だ、私も字がわかるといっても完全ではない」 桜花「わかりました」 そうして本格的な捜査がはじまった。 忍「どこから、捜します?」 レグニス「お前が一人で、それなりに調べたのだろう。他に当てがあるか?」 忍「そうですね・・だいたい目立つ場所は聞きこみをしたので・・では、少し物騒な所にでも行ってみますか?」 レグニス「なんだ、心当たりがあるのか?」 忍「裏の情報屋さん達ですけど、僕では舐められて話にならなかったんですよ」 レグニス「そんな物、幾らでも手段はあるだろうに・・」 忍「それは最後の手段です」 レグニス「余裕が無いと言っておきながら、わからん奴だ」 忍「これは僕のプライドです」 やがて、人通りの少ない通りに出る。 表向きは変らないが、歩く人間の質がまるで違う。 まず、男が多い。表通りとは男女比率がまるで違う、何気なく歩く二人連れも、道端で座りこむ人影も、 賭け事に興じるグループもどこか一癖あると思わせる人間ばかりだ。 忍「この世界を受け入れられない人達です」 ボソリと、肩で風を切って歩きながら呟く。 レグニス「望まれてきたわけではないのだから、そんな人間がいても当然だな」 忍「結局、チャンスがあっても同じ生き方しかできない。そういう人間が集まって出来あがってコミュニティです」 レグニス「それを自分の生き方と決めたのだろう、責める事は無い」 忍「そうでしょうか?」 レグニス「意外と考えが若いな」 忍「14ですから」 レグニス「そういうときだけ子供振るな」 忍「こういう時ぐらいしか子供振れません」 ゴロツキA「よう兄ちゃん、ここは女を連れてくるところじゃないぜ」 三人連れの一人がレグニスに絡む。 ゴロツキB「へっへ、楽しみたきゃ他を当たりな」 もう一人が下品な笑いを浮かべる。 ゴロツキC「そ、そ、それとも、お、女、売りに来たか」 更にニヤニヤと値踏みするように忍を見る。 レグニス「売れるところがあるのか?」 ゴロツキA「おお、マジで売る気か兄ちゃん?」 忍(レグニスさん・・) 小声でレグニスに抗議する。 レグニス(手がかりを見つけに来たんだろう、その変装で・・) 忍(それは・・そうですけど) レグニス(なら見ていろ) ゴロツキB「どしたぁ、びびっちまって声も出ないか、ああぁ?」 レグニス「売れる場所を知りたい、金なら少しはある」 懐から金の入った袋を投げる。 ゴロツキC「す、す、すごい、金だぞこれ」 拾い上げて他の二人に見せる。 ゴロツキA「OKいいだろう、ついてきな」 そういって、ゴロツキAが先頭を歩き。後ろからB、Cが着いて来る。 レグニス「用心深いな・・」 ゴロツキA「職業柄ってね・・まあ、気にしなさんな」 忍(・・・職業?) そういって通りの奥へと案内する。 ブラーマ「・・と、強気で言ったものの・・」 朝食が一段落した宿屋の一階で、ブラーマはコニーの相手をしつつ、手紙とにらめっこをしたいた。 桜花「どこかにヒントが、あればいいのですけどね」 横で同じように手紙を見つつ湯呑み(自前、更に自作)をもてあそぶ。 ブラーマ「そういえば、昨日はどうしたのだ?英雄殿は帰ってきたのか?」 桜花「それが・・結局妹のイリアルドさんとしばらく話していましたが、戻ってきませんでした」 ブラーマ「ふむ、よっぽど歌姫が心配なのだな・・」 桜花「羨ましいですか?」 ブラーマ「そうだな、自分が居なくなったらレグは捜してくれるだろうか・・・って何を・・」 桜花「いえいえいえ、ちょっと気になっただけです」 ブラーマ「むう・・で・・シュレットとベルティはどうしたのだ、ずっと降りて来なかったが」 桜花「私が戻ったときは、もう寝てましたよ。仲良く二人で・・朝も声をかけたのですけど・・・」 ブラーマ「まあそんな所だろう、結局あの二人はな・・・コニー!」 コニー「だぁ?」 コニーは二人が話している隙に、コップを倒してしまっていた。中の飲み物はテーブルの上に広がり、手紙を染める。 桜花「これは・・どうしましょう?」 ブラーマ「困ったな、字が見にくくなってしまった」 液体の滴った手紙を持ち裏表を見る。 桜花「ブラーマさん、これ、何か裏に書いております」 ブラーマ「どれ・・・これは字か・・」 桜花「・・ひ・ら・・が・な・・と書いてあります、反転文字のようですけど」 ブラーマ「ヒントなのか?」 桜花「多分・・・」 そう言って二人は何となくコニーを見る。 コニー「う〜、だぁ?」 二人に見つめられても、ただ笑い返すコニーだった。 レグニス達は、しばらく右に左にと数回曲り、崩れれかけた倉庫の中に案内される。 狭い扉をくぐる、たくさん箱の壁をくぐると広い空間に出た。 ???「新入りかい?随分若いね・・」 テーブルとイスが数組、それに奥にカウンターがある。入口を見なければ酒場に見えなくも無い。 レグニス「なんだ、あの女は?」 ゴロツキA「うちらのボス、レイピアの姉御だ」 レイピアと呼ばれたその女は、短く切り揃えた髪にワインレッドのジャケット、シャツとスラックスパンツで、 カウンターに腰を下ろしタバコをくゆらせている。 レイピア「姉御と言うなと言っているだろう」 テーブルのグラスをゴロツキ投げる。 身体だけは頑丈らしいゴロツキCは、いてっと、言うとその場にうずくまった。 レグニス「お前がここのボスなのか?」 レイピア「ここで、質問をしていいのは私だけだよ」 忍「最近、ここら辺で歌姫が来たりしませんでしたか?」 レイピア「ガキが、人の話も聞けないのか?」 忍「余裕ないんです、お願いします」 レイピア「ジャリガキが、少し黙ってな。やい、なんでこんなの連れて来たんだい?」 ゴロツキA「はあ・・こいつら妙に金回りがいいのと、ボスが歌姫を連れて来いって・・」 レイピア「ったく、使えないね。こんな女にもなってないガキを連れて来いとは言ってないよ」 忍(ガキでもないし、女でもないやい) レグニス(それだけたいした変装だと言う事だろう) レイピア「まあいいさ、退屈してたしね。特別に教えてやってもいいよ」 忍「え、本当ですか」 レイピア「だだし、何か面白い事をやってみせな」 忍「・・・!?」(僕が男だって言ってみるというのは・・?) レグニス(さっきのプライドとやらはいいのか?) レイピア「どうした、私は退屈が一番嫌いなんだよ」 忍(う〜ん、どうしよう・・・) 自分のプライドと必死に交渉する。 レグニス「面白い事とはなんだ、レイピア」 レイピア「ふん、そうだね。そこのが泣き喚くぐらいかね」 ゴロツキBを指しながら言う。 レグニス「そうか・・ではそこの、手をテーブルに置いてみろ」 ゴロツキB「てめえが言うな」 レイピア「いいから言う事を聞くんだよ」 ゴロツキB「へい・・」 レイピア「可愛い子分を傷つけるんじゃないよ」 レグニス「わかっている、動くなよ」 ゴロツキがテーブルの上に手を置き指を広げる。レグニスは片手でゴロツキの手を握り、片手にナイフを取り出す。 忍「レグニスさん・・?」 ゴロツキ「おい!何をする気だ!」 レグニス「いいから、動くな」 カッ、カカカカカカカカカカカカ レグニスはゴロツキの指の間に、ナイフを高速で突き立てていく。 ゴロツキB「うわぁ、おい、ゆびが、ゆびが!やめ、やめろ!」 レグニス「動かなければ傷はつかない」 慌てるゴロツキB、しかしレグニスは意に介さず平然と続ける。 ゴロツキB「た、頼むから、や、や、やめてくれ〜」 半泣きで、抵抗しようとする。 レグニス「うるさいぞ、手元が狂う」 ゴロツキB「うわぁ〜やめろ〜」 レグニス「手元が狂うと言うに」 更にナイフを動かすスピードを上げる。 最後に手の甲にナイフを振り下ろす。 ゴロツキB「ぎゃあ〜〜〜〜」 ゴロツキBはナイフ触れた感触で失神してしまった。 忍「レグニスさん!」 レグニス「安心しろ、柄を当てただけだ」 わかり易く手元を見せる、失神しているゴロツキBの手の甲には、いつのまに反転したのかナイフの柄が押し当てられていた。 レグニス「レイピアよ、そこのを泣き喚かせてみたが」 レイピア「はっはっはっはっはっは。こりゃいい、たいした奴だよお前は、そんな物を見せられたら・・」 懐からリボルバーを取り出す。 レイピア「あんたを欲しくなるじゃないか」 忍「そんな、約束が・・」 レイピア「もう少し楽しませておくれよ」 そう言って忍に銃口を向け、躊躇無く発砲した。 桜花「言われた通り、平仮名に直してみました」 ブラーマ「ん、すまない」 二人(三人)で、改めて見てみる。 きんのうろ とおのたかのこ えにしのしにえ このかたのおと きんのおんなゆ 桜花「なんでしょうね・・」 ブラーマ「ふむ・・・そうか、だいたいわかった」 桜花「え、本当ですか?」 ブラーマ「私とコニーにかかればどうということではない、そういえば漢字には幾つか、別の読み方があるそうだな」 桜花「はあ、そうでけど・・」 ブラーマ「それも教えてくれ、そうしたら出かけよう」 桜花「何処えですか?」 ブラーマ「それは秘密だ」 コニー「う〜?」 不適に笑うブラーマをコニーは不思議そうに見上げていた。 その場に響いた発射音が静まる。 レイピア「なんだい、つまらないね」 忍「あ、危ないじゃないですか」 正確に忍の顔を狙っていたそれは、ターゲットが半歩ずれた事により頬をかすめるに留まった。 レイピア「麗しい英雄の愛情が見られると思ったのに・・」 レグニス「それは俺の歌姫ではない」 レイピア「なら、どうなろうがかまやしないね」 レグニス「どうにかできるのならな」 レイピア「じゃあ好きにさせてもらうよ」 忍「勝手に話を進めないでください!」 レグニス「お前からも何かしてやれ、それで満足するだろう」 忍「あ〜も〜余裕無いんですから、どうなっても知らないですからね」 そう言ってナイフを取り出す。 レイピア「ごちゃごちゃ、五月蝿いね。ジャリガキ」 リボルバーを乱射する。 忍「ふう、残念ですけど・・点の攻撃は当たりませんよ」 紙一重でかわしてゆっくり前進する。 レイピア「ちっ、やるじゃないか」 忍「早く降参してくださいね」 交戦距離に入りナイフを振るう。 レイピア「ナマ、言うんじゃないよ」 忍のナイフをリボルバーで受け止める。 レグニス「なかなかやるではないか、あの女」 ゴロツキA「あたぼうよ、姉御に銃を抜かせて無事だった奴は居ないぜ」 レグニス「余計なお世話かもしれんがおまえ達は、加勢しないのか?」 ゴロツキC「あ、あ、姉御のじゃ、邪魔すると。後が怖いんだな」 ギリギリギリギリ。ナイフとリボルバーの力比べが続く。 忍「銃の点攻撃じゃ、こちらの線の攻撃は受けきれませんよ」 レイピア「この屁理屈お化けが!」 レイピアはもう一丁リボルバーを取りだし、至近距離で発砲する。 忍「ニ丁拳銃ですか・・」 弾は忍の脇腹をかすめる、お互い体制が崩れたので、どちらともなく間を取る。 レイピア「ふん、あの距離でも避けるようじゃ、確かにこれでは無理みたいだね」 忍「ですから、もう諦めましょうよ」 レイピア「生憎、私の頭にはそんな言葉は無いのさ」 ダンと足で床を叩く。床板が跳ね上がり、レイピアは板に貼り付けてあった爆薬を取り出す。 忍「な・・!?」 レイピア「はっはっは、これはどうだい?面攻撃って奴さ!」 躊躇いを見せず爆薬を投げ、空いた床に飛びこむ。 レグニス「ほう、少しは考えたな・・」 ゴロツキA「あ、姉御ぉぉぉぉぉ」 急いで物陰に隠れるゴロツキ達。 一瞬にして爆炎が辺りを包む。 しばらく時間が経ち床板が跳ね上がる、 レイピア「人死にを出すほどの威力じゃ無いが、無事ってわけでもないはずだよ」 そう言って辺りを見まわす。 元々脅しのための物だったのか、建物を吹き飛ばすほどではないが、それでも内装は滅茶苦茶になっていた。 レイピア「まったく私をバカにするから、痛い眼を見るんだよ」 床から這い出しながら、ブツブツと呟く。 忍「でも、タネを先に見せちゃいけませんよ」 突然、レイピアの後方から声がかかる。 レイピア「な・・なんで無事なんだい?」 ゆっくり振りかえりながら続ける。 レグニス「さっきの戦闘で、床の軋む音が違う場所が幾つかあってな」 更に少し離れた所から別の声がかかる。 忍「それに所々に偽装されたスイッチがあったんで、何だろうって思っていたんですよ」 レイピア「ち、だから私にわかるようにだけ作っておけば良かったんだよ」 伸びているゴロツキ達を睨む。 忍「とりあえず・・もう楽しんだだろうし、降参しませんか?」 改めてレイピアを覗き見て降伏を促す。 忍を見て呆然としていたレイピアが呟いた。 レイピア「・・・・あんた・・男だったんだね」 忍「・・はい?」 レイピアのその一言に忍は何か嫌な予感がした。 後書き 子連れ探偵本格始動。 アールとダランと掛け合いがありませんが、次回で復活します。 レグニスと忍は・・・何を遊んでいるんだかという感じですが、 次回は解決編です。 |