エピソード 2.54 『終わり無き遁走曲〜夢のレプリカ〜 第四』
 
???「はぁはぁはぁ。何なんだ、あいつらは」
夜の街中を走る男が一人。
 
桜花「待ちなさい!」
それを追う人影が・・・
ブラーマ「さすがに速いな桜花は・・・」
コニー「だぁーう、だぁーう」
二人プラス1。
 
ブラーマが完全に暗号を解読したと言って外に出たのが、数時間前。
街の自警団に情報を聞きこみに行き、張り込むこと1時間。
既に夜のとばりは落ちきっていた。
 
最近この街では、歌姫の行方不明事件が多発していた。
忍もこの事は既に調べていたようだが、あまり深入りしていなかったようだ。
 
とりあえず囮捜査で、怪しい人物を発見し今まさに追跡中である。

男「げ、行き止まり・・・!?」
程なく足音が近づいてくる。
 
桜花「観念しなさい!」
一気に距離を詰めて腰の刀を抜き放つ。
 
男「うわ〜こ、殺すな〜」
ガツン、頭を強打されて男は気を失った。
 
桜花「まったく・・・不甲斐ない」
刀をしまいながら、倒れた男を一瞥する。
 
ベルティ「ひゅ〜ひゅ〜、かぁっこいい」
いつのまにか壁の上にベルティとシュレットが座っていた。
ブラーマ「桜花、首尾はどうか?」
コニーをおぶって小走りのブラーマが追いつく。
 
桜花「問題ありません、捕まえました」
ベルティ「私の幻影歌術のおかげだね」
スタッと地面に着地する。同時に目の前に立ちはだかっていた壁は、音も無く消えうせた。
シュレット「嘘や誤魔化しばっかりうまいんだから・・」
ベルティ「何とでも言って、これは私の手柄だわ♪」ここぞとばかりふんぞり返る。
 
ブラーマ「まったりするのもいいが、まだ終わりじゃない」
桜花「言われた通りに捕まえましたが、これからどうするのです?」
 
ブラーマ「牢の場所を聞き出す」
さも、当然というように気絶している男を見下ろす。
 

アール「時間があまりありません、そろそろ最後の質問にしたいと思います」
ダラン「ふむ、忙しい奴だねえ」
アール「今、私達以外の世界を知覚する方法は無いのですか」
ダラン「まったく・・今まで言った事を何も聞いちゃいないねえ」
アール「すいません、どうしても確証が欲しいのです」
ダラン「いいかい?世界なんて物は、自分の考え一つなんだよ。お前が言うこのアーカイアだってたくさんの顔を持っている。
  多元世界を論じるわけじゃないが、ここと法則の違うアーカイアだって何処かには存在するかもしれないんだ。人を語り手に見立てりゃ
  同じ人間同士でも、それこそ人の数だけ別の物語のアーカイアが有ると思ってもいい。もちろん現世も踏まえればきりがない。
  世界が繋がっているかどうかだって、全く繋がっていない事の方がありえないんだよ。お前は世界同士を行き来できるかで判断しているようだけど、
  そう言った考えだけでしか肯定できない頭をまず切り替えるべきだね」
 
アール「では・・どうしろと・・」
ダラン「お前さんの連れている、男をよ〜く見るんだね。お前にそれだけの疑問を抱かせた男だ。お前が知りたいことも、案外みつかるかもしれないよ」
アール「しかし、私は!その忍に教えてやりたいのです」
ダラン「私もしょうがない弟子をもったよ。これで最後だ、耳かっぽじってよ〜く聞きな」
アール「はい!」

ダラン「どんなに優れた理論でも、それを通じて伝えようという思いが無ければ。意味が無いのさ」
アール「・・・!?」
ダラン「まあ、ある程度の屁理屈は必要かもしれないけど、それだけで装飾した物には何の意味もない。
  他人の言葉を借りてそのまま伝えるだけじゃあまだまだ・・まあ、じっくり考え抜くんだね」
 
 
レイピア「ふうむ、ここでも無いみたいだね」
誇り臭い、狭い部屋を見渡しながらレイピアは呟いた。
レグニス「いないのか?」
レイピア「ああ、これで4ヶ所目・・そろそろネタも尽きてきたよ」
 
忍「あの〜、それはそれでいいのですが・・いいかげん離れてくれませんか?」
 
外に出たレイピアを、建物の入口で待っていたレグニスが向かえる。
レイピア「い・や・だ。あたしはあんたが気に入ったんだ、こうやって捜してやっているんだからもう少し付合いなよ」
しっかりと腕を組んで離さないレイピア、半ば引きずられるようになりながら忍は心の中で泣いていた。
 
子分のゴロツキ曰く、レイピアは重度の美少年愛好癖だというのだ。
爆発騒ぎで服の大半が吹き飛び、忍が男だというのがばれた途端、レイピアは手の平を返すように協力的になった。
 
レイピア「確かにあるスジからの要請で、この街で歌姫をさらう事件が起きても、黙認するようにとは言われていたけどね」
レグニス「その者達の隠れ家はわからないのか?」
レイピア「任せな、幾つか心当たりがある」
忍「でも、さっき歌姫を連れて来いと言っていたのは・・」
レイピア「ああ、あたしもこれで現世出身だからね、奏甲を動かすために探していたんだよ。あいつらのどさくさに紛れてね」
忍「それはわかりましたから、それ以上近づかないでください・・」
レイピア「あら、つれないね。ついでに子分たちに若い男を捜させていたんだけどそれはもう必要無さそうだね」
 
そんな会話があったのが数時間前、そこからずっとこの調子である。
 
レイピア「あたしが知っているのはあと1箇所、そこにいなければ少し人を使わないと無理だね」
忍「とにかく確かめてみましょう、全てはそれからです」
レイピア「居なかったら諦めて、あたしの所にきなよ。悪いようにはしないからさ」
忍「それは・・・丁重にお断りします」
 
引きずられて行く忍と意気揚揚のレイピア、それを全く意に介さないレグニス。奇妙な一行の行進は続く。
 
 
 
桜花「本当にここであっているんでしょうか?」
ブラーマ「自警団に教えてもらった事件発生地点と、捕まえた男の証言を総合するとまず間違い無い」
遠く物陰から建物を見る。一見何の変哲も無い建物のようだが。
 
桜花「そういえば随分と牢屋にこだわっていましたが・・」
ブラーマ「暗号でな、牢屋にいるそうだ・・」
レグニス達が戻る事を考えて、ベルティとシュレットとコニーは宿に残してきた。戦闘になるかもしれない状況では仕方がない。
 
桜花「・・?、なぜ牢屋に入る事がわかって、暗号を残すのでしょう・・」
ブラーマ「本人聞けばすぐわかるだろう」
桜花「それもそうですけど・・・あ、ブラーマさん!誰か建物に入っていきます」
複数の人影が中に入っていく、その方向にブラーマも目を凝らす。
 
ブラーマ「あれは・・・レグ」
そう言って建物に走り出した。
桜花「あ、待ってください、こんな遠くからわかるのですか」
 
ブラーマは器用に走りながら振り向くと、
ブラーマ「動きのクセでだいたいわかる」
そう言って再び走り出した。
 

建物の中は一瞬にして大混乱になった。
レイピアが中に人が居るのを確認すると、爆薬を投げこんだのだ。
忍「もっと、穏便に出来ないんですか!」
レイピア「はっはぁ〜、ラストだからね派手にいかなきゃ」
 
中には強面の男達が数人たむろしていたが、レイピアの爆薬で半数がのびている。
 
レグニス「雑魚は任せろ、お前は歌姫の確認を急げ」
数人の人影をなぎ倒しながら指示を出す。
忍「わかりました、すいませんがここはお願いします」
煙の収まらない屋内を地下へ急ぐ。
 
レイピア「さぁ〜て、可愛い少年のために張り切っちゃおうかね」
そう言って2丁のリボルバーを取り出す。
レグニス「こちらに当てるなよ」
背中合わせのレイピアに注意を促す。
 
レイピア「あんた達の方が腕っ節は上なんだ、うまく避けとくれ」
レグニス「いいだろう、ハンデとして受け取ろう」
レグニスの言葉を最後に同じに床を蹴る。
 

アール「そろそろ、迎えが来たようです」
ダラン「ふん、もうここには来るんじゃないよ」
アール「そう出来るように努力します」
ダラン「やれやれ、長話でわたしゃ疲れたよ」
そう言ってきびすを返すと奥へ消えていく。
アール「先生?」
ダラン「・・・なんだい」
振り向かずに答える。
 
アール「今までありがとうございました」
ダラン「ふん・・まったくバカな弟子だよ」
そう言ってグチグチと何かを呟くとダランは消えていった。
 

忍「アールゥ、どこ〜」
地下への階段を降り、辺りを見渡す。
 
幾つかの牢屋を覗きこんで、やっと見慣れた人物を発見する。
忍「アール・・?」
アーデルネイドは確かにそこに居た、牢屋の中の簡素なベッドに横になっている。
忍「まさか・・・死んじゃったりしてないよね」
口に出す事で最悪の考えを振り払う。
 
近づいて息をしているのを確認する。
忍「・・・どうやって起こそう・・・」
軽くゆすっても呼びかけても、起きない。
 
ブラーマ「そんなの決まっているだろう」
突然後ろから声がかかる。
忍「うわぁあ、ブラーマさんいつの間に」
ブラーマ「さっきから呼んだいたんだが、邪魔だったか?」
 
忍「・・・どうやってここを突きとめたんです?」
ブラーマ「私とコニーにかかればどうという事は無い」
忍「・・・・」
異様な自信にただ圧倒される。
 
ブラーマ「それよりも、少年。眠り姫を起こすための方法は古今東西、宇宙開闢かれ変らぬ物があろう」腕組みをしながら続ける。
 
忍「・・・・マジですか?」
ブラーマ「おおマジだ」
忍「・・・背負って、宿に帰って終わりというようには・・・」
ブラーマ「私が認めん」
 
言い知れぬ迫力に押される。
 
忍「・・・・マジですか?」
ブラーマ「おおマジだ」
 
忍は滝汗を掻きながら、ブラーマとアーデルネイドを交互に見ていた。
 
 
 
事件はごく一般的な解決をみた。
翌日になれば、歌姫連続誘拐事件として処理され、数日も経てばこの騒がしい御時世だ、街の噂話にも上らなくなるだろう。当事者達の状況を除けば・・・。
 
ブラーマ「夢のレプリカ?」
夜、宿に戻った一行は疲れを癒すために温泉につかっていた。
 
シュレットとベルティはコニーの相手に疲れたのか、三人一緒に寝てしまっていた。
 
アール「そうだ、この前パーティを組んで遺跡探索をした時に見つけた物だ」
そう言って手の平の指輪を見せる。
桜花「綺麗ですね」
アーデルネイドの手の平の指輪を眺める。金色のリングが二重螺旋状に絡まり赤い宝石が一つはめ込まれている。
ブラーマ「・・で、いったいそれは何なのだ?」
アール「簡単に言えば、自分の望む夢が見られるのだそうだ」
桜花「望む・・夢ですか・・」
アール「そうだ、条件がいろいろ必要になるがな、数日間寝たきりになるのと自分からは起きれなくなる」
ブラーマ「それで、わざわざ牢屋の中か・・もっと他にいい場所があったと思うのだが・・」
アール「どうしてもそこでないと、見られない夢があってな」
桜花「・・・どういう事です?」
アール「冤罪で獄死した先生の、死に目に会えなかった、馬鹿な弟子の自己満足さ」
 
ブラーマ「・・・ふむ、それでろうのなか、ゆめのなか・・か」
アール「そうそう、まさかあれを解く人間がいるとは思わなかったぞ」
桜花「偶然なんですけどね」
ブラーマ「しかし、無理がありすぎではないのか?誰も『金』を『かな』とは読まないだろう」
桜花「『女湯』を『めゆ』とも読みませんよ普通」
 
アール「時間がなかったのでな、それにあれを解かなくても忍達は見つけてくれたのだろう?」
ブラーマ「なんだ、あれはただの動機付けか」
アール「それだけで十分効果はあったようだし」
桜花「それにしても意地が悪すぎませんか?あの人はあんな格好をしてまで捜していたんですよ」
そう、女装の件は結局女性陣一同にもばれてしまった。それだけ必死だったのだろうという事で、変な話にはならなかったが。
 
アール「いや、きっと本人も面白がっていたはずだ」
桜花「そうでしょうか?」
アール「そうだとも」
ブラーマ「策士だな、もしかして最後の起こし方まで予想済みだったのか?」
アール「それは、想像に任せよう」
桜花「・・?なんです、起こし方とは・・」
ブラーマ「いや・・まあこっちの話しだ・・」
 
ブラーマ「それより、その指輪はどうするのだ。人が持ちつづけるには少し過ぎた代物だが」
アール「ああ、それなら心配無い」
指輪の宝石を外し握り締める。宝石は粉々に砕けてしまっていた。
 
桜花「いいのですか?」
アール「問題無い、夢を他の物に頼って見ようというのが、そもそも間違いだったのかもしれない」
 
ブラーマ「しかし、いくらなんでも潰さなくてもな」
アール「ふふ、これのもう一つ使い方さ。潰してしまえば一度だけだが、条件は緩和され範囲は広がる」
桜花「では私達も何がしかの夢をみると・・」
アール「この宿にいる人間ぐらいには効果があるんじゃないか、まあ私から仕事の報酬だと思ってくれ」
ブラーマ「なにかもったいない気もするな」
アール「一所に在り続ける物でもないし、この方がいいのだろう」
そういって残ったリングも投げ捨てる。
アール「それでお二人とも、よい夢を・・」
 

忍「すいません、こんな所に呼び出して」
女性三人が温泉にいる頃、宿に近くの森で忍とレグニスが対峙していた。
レグニス「お前は、相当疲れているはずなのだから、休んだ方がいいのではないのか」
忍「確かに三日ほど寝てませんが・・」
レグニス「それにレイピアの相手もあっただろうし」
 
襲撃騒ぎの後レイピアは、
レイピア「ほとぼりが冷めるまで、姿をくらますからよろしく」
と、忍に言い残し去って行った。
 
忍「それぐらいはまあ・・たいしたことではないですが・・」
やり取りを思い出したのか、変な汗を掻き始める。
 
忍「少し、話しを聞いてください・・」
そう言ってナイフを取り出す。
 
レグニス「話しをするのではないのか?」
 
忍「こうしていた方が気が紛れるので・・」
そうして、組み手をしながら語り始めた。
忍「ある所に、科学者とその娘がいました。科学者は忙しいさなかでも、
  娘に会う時間を作って娘を大変大事にしていました。」

2回ほど手合わせした時よりも明らかに動きが悪い、
それでも動くのをやめない忍にレグニスは気の済むまで付き合ってやることにした。

忍「しかし、不幸な事にその娘は不慮の事故で亡くなってしまいました。科学者は大変悲しみましたが、
  自分の力で娘の心と記憶を取りだし、電脳空間で生かすことにしました」
レグニス「科学者という者はいつもそうだ」
 
顔で頷き、話しを続ける忍。
忍「生前の娘は本を読むのが好きだったので、科学者は心細く無いように電脳世界に幾つかの世界をつくりました。
  読むのではなく、その世界の一員になり世界を体験できるように」
 
忍「娘は喜びました。今まで本で読む事しかできなかったたくさんの世界を体験できたのですから、
  科学者も娘が喜んでいるのを見て大変喜びました」
 
忍「それでも、歪んだ行為にはそれなりの代償がつきものです。娘はそのどこかの世界で迷子になってしまいます、
  科学者は迷子の娘を捜すために自分の精神を基盤としたチェイサーを創りました」
レグニス「自分ではどうにかしなかったんだな」
 
忍「自分のコピー自体も創ってみたかったのでしょう、チェイサーは様々な世界を経験しながら娘を捜します。
  しかし、いくら捜してもなかなか見つかりません。焦って科学者は別の方法を考えます」
 
忍「チェイサーに娘の事故にあう前までの経験を追体験させて、代わりにさせようとしたのです」
 
忍「しかし、その狂行も作業半ばで中断します。科学者の所属する研究機関がその科学者の暴走に気づき
  科学者はそこで捕らえられ殺されてしまいます。残ったのは中途半端な記憶のチェイサーと幾つもの世界、
  研究機関はその残された物の再利用に乗り出します」
 
忍「科学者であり、娘でもあるチェイサーは、研究機関からその世界を守ろうとしますが、
  研究機関はチェイサーに生身の身体を与えると交換条件を持ちかけます」
 
忍「電脳世界だけしか知らないチェイサーはこの交換条件に乗り、科学者の精神と娘の記憶は
  生身の身体を手に入れたチェイサーの中で生きていくのでした、めでたしめでたし」
 
レグニス「めでたく無いと思うが」
 
忍「この話しには続きはが有ります、結局そのチェイサーも生身でどこかの世界に飛ばされて、本当の世界を知らなかったそうです」
 
レグニス「つまらん話しだ」
忍「そうですね、出来そこないのおとぎ話です」
いつのまにか両者とも動きを止めている。
 
レグニス「そんな話しのためにここに呼んだわけではあるまい?」
忍「はい、ここからが本題です」
 
忍「僕は時々、精神が不安定になります。簡単に言えば他の誰かにこの身体を乗っ取られる可能性がある」
レグニス「物騒な話しだな」
忍「もし完全にそうなった時の事を考えて、今、擬似的にその状態を作り出します」
レグニス「で、俺にどうしろと言うのだ」
忍「いつか完全に僕が僕でなくなった時は・・・・僕を殺してください」
レグニス「別に俺じゃなくてもいいのではないのか」
忍「たぶん彼方ほどの人でなければ無理だ」
レグニス「そんなに危険なら、今止めてやってもいいが」
一瞬沈黙が辺りを支配する。
 
忍「それも考えました、でもやっぱり僕は、まだここで生きていたい」
レグニス「まあ、生き物として当たり前の本能だな」
忍「だから、保険です。動きを読む事のできるに彼方に、この状態の動きを覚えていてもらいたい」
レグニス「お前も俺の戦闘になれてしまっては意味が無いのではないか」

忍「大丈夫です、『乗っ取り』が行われると記憶障害が起きてちょうど彼方と会った時から今日までの記憶が僕の中から全て消えます」
レグニス「それでおまえはいいのか?」

忍「大丈夫です、アールには後で彼方から説明してください。彼女は頭がいいですからきっとすぐわかってくれます。
  それと終わったらすぐにこの街を経ってください、あの桜花さん達と一緒に・・」
レグニス「本気なのだな」

忍「はい、それと・・・」
勢いよく自分の利き腕を木にぶつける、腕は半ばから普段ありえない方向に曲る。

忍「利き腕を折りました。治るのに数週間はかかります。これであなたは僕の動きの癖を読む事に集中できる」
レグニス「手の込んだことだな、いいだろうおもしろい」
そう言って構える。
忍「僕が目を瞑って開いた時、擬似的な『乗っ取り』は終わっています。あとはあなたに全てお任せします」
レグニス「わかった、こちらはいつでもいいぞ」
忍「ありがとう、あなたに出会えて本当に良かった」
そう言うと静かに目を閉じた。
 

そして夜が明ける。
ブラーマ「もう少しゆっくりと話しをしたかったが・・」
朝、出発の準備を整えたレグニス一行と桜花達の一行。
アール「まあ、また何処かで会える時もあるさ」
そして、それを見送るアーデルネイド。
 
桜花「忍さんと手合わせが出来なかったのが残念です、かなりの使い手と聞いていたのに」
アール「寝こんでいて見送りにも来ない無精者だ、ほっておけ」
レグニス「いくぞ、先の街で依頼が待っている」
そう言って既に歩き出している。
ブラーマ「あ、おいレグ。すまないなうちのも無精者だから」
アール「そのようだな、それよりいい夢は見られたのかな?」
ブラーマ「う、そ、それはまた会った時に話そう」
コニー「うきゃきゃ、う〜」
真っ赤になってレグニスを追いかける。
 
シュレット「じゃあ僕達も行こうか」
桜花「そうですね、それではまたどこかで・・」
ベルティ「あんまり妹さんをいじめちゃだめよ♪」
 
アール「ああ、考えておこう」
笑いながら手を振り見送る。
アーデルネイドは全員が見えなくなるまでその場で見送っていた。
 
見えなくなったのを確認すると宿の入口をくぐる。
アール「・・・無精者の馬鹿者・・が」
唇に指でふれ、顔を伏せながら階段を上がる。その後を追うように転々と涙の雫が転々と残されていた。
 
 
エピソード 2.54 END
 

あとがき
忍君の過去語りでした。
忍はレグニス変な頼み事をしてしまいましたが、
まあ、約束が果たされる事の無いようになればいいですが・・。
 
というわけで、忍君のこのエピソードの記憶はまったく残っていません。
まあ忘れてたい事もあっただろうし・・。他全員はしっかり覚えてますが・・・。
 
いろいろ詰めこみすぎて、かなりわけが解らなくなってますが、そのうち修正するかもしれません。
 

蛇足
 
ブラーマ「レグ、その・・・戻るのが遅かったが、夢は見なかったか?」
レグニス「そうだな・・そんなことは今まで皆無だったが・・」
じっとブラーマを見る。
ブラーマ「な、な、なんだ」
 
レグニス「くだらない、忘れた」
ブラーマ「おい、今の間はなんだ、答えろレグ」
コニー「うきゃきゃ?」
今日も一日平和なようだ。

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