いつか、どこかで。
 空虚な風の吹く、ビルの隙間。

「はぁ…はぁ…」

 雪の降る中、少女が歩く。

「…っ痛…くっ」

 彼女が目指す先――



 過去に『ジェノサイド』と呼ばれた男。



 薄暗い階段に、二人の足音と会話だけが響く。

「じゃあ、ソードさんも殺し屋だったんですか?」
「そんな上等なもんじゃない……ただの掃除屋だ。どうしようもないクズ専門のな」



 白い少女の来訪を機に、男は再び銃を取る。



「こいつの鍵だ」

 がきゃり、と錠が開けられた。巨大なケースの中に鎮座していたのはこれまた巨大な――

「…十字架?」
「見た目だけ、な」



 かつて暮らした街に、死と破壊を撒き散らすべく。



 どしゃり、と降ってきた物体につぶされ、乗用車の屋根がひしゃげる。
 あっけにとられるチンピラ達の前で、降ってきた物体…十字架を背負った男は身を起こした。

「な――」

 がしゃり、と先端が展開する十字架。
 無表情に、男は告げる。

「死ね」

 銃声。



 かつて所属した組織を、完膚なきまでに叩き潰すべく。



「こういう時…どうしても考えちまう」

 サングラスの奥の瞳は、何を思うのか。
 相対するソードも全く表情を動かさないまま、立ち尽くす。

「あの時こうすればよかったんじゃないか…ああすれば…ってな」
「……ああ」
「アンタの銃があの時ジャムらなかったら――」



 屍を積み上げ、瓦礫を踏み越え、その先に何を思うのか。



「ソードさん」
「あ?」
「全部……全部終わったら、どうするんですか?」
「……――」



 "RuLiRuLa" EXTRA NUMBER -Slaughter's Tale-


 ――死神は、すぐ傍に。



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