その0,5

 それは、白銀の歌姫様の宣言からしばらくたって、皆さんが旅の準備をしている時の事でした。

シェフ「あれ、フィオナさん、何を書かれているんですか?」

フィー「日記ですよ。こうやって、毎日あった事を書きとめているんです」





 そんな訳で、私も日記を書いてみる事にしました。




哲也「って、何がそんな訳だ?」
シェフ「いいじゃないですかー、折角のんびり旅に出るんですから、いいキッカケです」
哲也「そうか?」
シェフ「そういうものです」

 さてさて、今日買ってきた真っ白な日記帳、これにこれからどんな話が刻まれていくのでしょうか?

その0,7

 衝撃の白銀の歌姫様の宣言から、半日が立ちました。周囲の英雄様はまだ衝撃から立ち直っていない者、立ち直られている者、そして打ちひしがれている者と様々でしたが、彼らは皆一様にどちらの陣営に属するかで揉めているようでした。世間では現世騎士団なる組織が名乗りを上げたとの話もあり、少々事情は複雑です。
 が、哲也様もそのお仲間の英雄様達は、軍に属するのを拒み旅人としてアーカイアを巡る事になされたようです。それには、私も賛成です。昨日まで友だった人と、刃を向け合う事ほど辛い事はありませんから……。

 今日、私達は皆さん揃って無色の工房を訪れていました。旅を始めるにあたって、新しい奏甲を手に入れるためです。見ればこの間女王戦を前に乗り換えた遼平様のシャルラッハロートTTTはともかく、常に最前線で戦われていたレグニス様のシャルラッハロートTや、慣れない室内戦闘で哲也様のヘルテンツァーはかなり損傷が進んでいました。確かに、この辺りが乗り換え時でしょう。
 雄雄しく佇む絶対奏甲が並んでいる様は圧倒的な眺めで、見慣れているハズなのに思わず溜息をついてしまいます。そんな中で、哲也様は一機の奏甲にはりついていました。何故か突然性能の底上げがなされた、シャルラッハロートTTTです。

哲也「ほほう、これは……」

シェフ「少しだけどもパワーアップしましたね。でも、何でいまさら……?」

哲也「おそらく、噂の新型幻糸炉でも搭載したんだろうよ。このあいだ書店においてあったカタログにそんな事が書いてあった」

シェフ「カタログ?」

哲也「ちょっとローブを着て出歩いた時にな。タイトルは歌姫塾だったか?」

 どうりで、時折昼間なのに姿を消す訳です。日光に弱いのですから、もう少しご自愛してもらいたいものです。
 そういえば、遼平様のシャルラッハロートTTTも突然性能が上がっていたような……。何故でしょう? 確か遼平様のシャルラッハロートは、ロールアウト番号から見るに強化されていたハズなのですが……。

遼平 「どういう事だ、コレは?」

フォル「うむ。何を隠そう、このフォルがシャル3の手足に、重りを括り付けておくよう工房に頼んでおったのだ」

遼平 「なんていうか、また古典的な特訓方法を・・・!」

マリー「あらあら。武術家の基本でございます」

フォル「これでリョーヘイも、少しは良い動きが出来るようになったはずだ」

遼平 「素直に喜べん」

フォル「よい。口ではいかように述べようと、心では百万の謝辞を紡いでいる事くらい、フォルはお見通しだ」

遼平 「・・・・・・」

 あらあら、三人とも向こうで何やら言い合っています。成程、そういう事でしたか。でも、遼平様は機嫌を損なわれていますが、そんな状態で戦い抜いたのですから大したものだと思います。
 私は哲也様に断ると、乗り換える気が無いのでしょう、ベンチに座ってくつろいでいる草薙様とフィオナ様の隣に腰掛けました。哲也様は、何やらスタッフを捕まえてあれやこれや聞いています。

 どうやら、今日中には決まりそうにないですね。哲也様、変な所で優柔不断ですから。

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