幻想戦記ルリルラ。　　第一話「夢の先に・・・・・。」
 
俺は夢を見た、海岸で一人の少女がただ何もせずに海を見つめているだけの面白くもない夢だ。
いつもはその何の意味物ない時間がただひたすらに流れ、俺は夢から覚める。しかし今日は違っていた。
その少女が俺に気付いたのだろうか。こちらを見て一言つぶやいた。
「もう君の世界は見つけられたかな？」
その一言の後、俺の見ている世界はぐにゃりと歪み、俺はこの世界に戻る、そんな日がここ数日続いていた。
 
なんのカワリバエのない一日が今日も始る。朝起き、学校へ行き、ただ時間だけが流れて行く。
まるで、一つの歌が繰り返し流れているような。
そして俺はこの生活をもう18年も続けている。しかしそれは俺という一つの音符が、曲の中で自分の音を出していたに過ぎない。
多分俺が一人居なくなったとしても俺を取り巻くこの世界の曲というものは変わりはしないのだろう。
今にも消えそうな自分の存在はこことは違う世界を求めていたのかもしれない。
そしてその願いが、俺の夢の出てきた彼女を創り出したのではないか。そんな阿呆なことを考えながら自分の家の鍵を開け、誰も居ない家にただいまを告げた。
自分の部屋に戻ると、着替えもしないままベットに横になり天井を見上げる。そして俺は夢の中に沈んで行った。
不思議なことに今日は彼女は夢の中に出てこなかった、そのかわり俺が見た夢は、眩しいほどに光る空間を俺がその終着点に向って飛んで行く夢だった。
 
目を覚ますと俺はベットの上に寝ていた、しかし部屋の内装は自分のそれとははるかに違っていた。
なんの特徴もない現代の白の壁は木の壁に変わり、俺の部屋には無かった本棚がそこにはあった。
「これはまた俺の夢の続きか？」
困惑していたもののそこが自分が居た世界とは別の世界であることは直ぐに理解した。
「へっ。起きたようだな、しかしこいつは夢なんかじゃねぇぜ。」
ドアが開き、大柄の男と、華奢な女の子が入ってきた。その男の年齢は30代前半だろうか。特徴的な金髪が朝日に当たってきらきらと輝いていた。
また、女の子のほうは16歳くらいに見える。ブロンドの長い髪の毛をなびかせながら
「ルリルラへようこそ英雄さん。」
と、可愛らしいちょっと高い声で俺に微笑みかけた。そして、男の低い声がそれに続く。
「俺の名前はリチャード・アルファード。で、こいつがリィーナだ、まぁリッチとでも呼んでくれや。で、あんたの名前はなんって言うんだ？」
「あ・・・。俺の名前は冬音　春。よ、よろしく。」
困惑しながらも二人に挨拶をした。だが、心なしか安心している自分が居ることに気が付いた。
「いやぁ、俺らが明日ポザネオに行く準備をするためにこの家に帰ってきたらあんたが前で倒れてた時はびっくりしたぜ。」
「あの、ポザネオってなんですか？」
次々と湧き上がる疑問におもわず俺は口をはさんだ。
「ああ、あんたはまだこの世界に来たばかりだったのか。リィーナ説明頼むわ。」
リィーナは俺の隣にすわると、うれしそうにこの世界のことを話し始めた。
「つまり、奇声蟲っていうのを倒すために、パイロットの俺たち英雄を外の世界から呼び出したわけだね。それで今ポザネオが決戦の場所になってると。」
「そうだ、そこで俺は明日その蟲どもを倒すためにポザネオに乗り込もうって訳だ。」
リッチは右腕の握りこぶしを左手の手のひらに打ちつけながら誇らしげに言った。
「そうだ！春くん、明日一緒に奏甲を選びに行かない？一人よりみんなの方が良いだろうしね。」
リィーナは丸くてくりくりした可愛らしい目をさらに大きくして俺に提案した。
「うん、リッチさんがよければ御一緒して良いかな？」
「ああ、もちろんだとも！仲間が増えて俺もうれしいぜ。」
リッチは俺の肩をたたきながら、大声で笑った。その口元からは白く綺麗にそろった歯が見え隠れしていた。
「あ、春お腹減ってるでしょ。ハイ、これ夕食ね。」
そういうと、リィーナはは俺にバスケットを手渡してくれた。その中にはとてもおいしそうなサンドイッチが3つ入っていた。
「あ、ありがとう・・・。こんなに親切にしてもらって。俺、何もお礼できない。」
気が付くと俺の頬に熱いものが眼から流れていることに気が付いた。
「お、おいおい泣くなよ。困った時はお互い様だ。その代わり俺らが困ってる時は助けてくれよ。」
「はいっ！」
止めどなく溢れてくる涙のせいでその言葉を言うことしかできなかった。
「それじゃ、また明日ね。寝坊したら追いてっちゃうぞ。」
リィーナはまるで、俺を慰めるかのように優しい声でドアの陰から顔をヒョコッと出しながら言った。
ばたん、という扉の閉まる音。
俺が食べたサンドイッチは涙でしょっぱかったけど、今まで食べた中で最も美味しいと思った。
明日から俺のなかで今までとは違う曲が旋律を刻むだろう。これが夢の中の彼女が言っていた俺の世界なんだろうか。
それはこれから見つけていけば良いさ。俺は一人じゃないから。
そして、俺は知らぬ間に眠りに落ちていた。
 
あとがき
はじめまして。かな？シュンというものです。
最後まで御付き合いいただきありがとうございましたｗ
文章能力がないのはこれから精進していきますのでお許しを〜。
これからもよろしくお願いします。