激闘編 〜抵抗〜 レグ「・・・ん・・・ん」 工房長「あ、目が覚めたかい?」 レグ「俺は・・・寝ていたのか」 工房長「仕方ないさ、連日の激戦だし。あんたの愛機だって、さ・・・」 そう言って、作業着を着た女性はレグニスのシャルVを見上げた。 機体はどこも傷だらけ、右腕など装甲が完全に剥がれ落ち、ぼろぼろになった小剣が装甲がわりにくくりつけてあるだけである。 レグニスのだけではない。同様にぼろぼろになった奏甲がいくつもたたずんでおり、その間を作業員らしき少女たちが忙しそうに走り回っている。 そのいずれの顔にも疲労の色が色濃く見えた。 工房長「まあ、寝れるときに寝ておきな。」 レグ「そうも言ってられんだろう。いつ次の襲撃があるかわからん」 工房長「だからこそ、今寝ておくんだよ。」 山間にある小さな町。この町の近くの森に奇声蟲が大量に出現している。 その事を知った町は、蟲を退治するために英雄達を呼び、幾人もの英雄がそれに応え、この町へと訪れた。 だが、蟲の数は予想をはるかに超えていた。 斬っても斬っても現れる蟲の群れにより町は包囲され、断続的に続く蟲達の攻撃を前に、住人や英雄たちは絶望的な篭城戦を強いられることとなったのだ。 作業員「工房長〜、やっぱりどう考えても部品が足りませんよ〜」 作業員らしき少女が一人、歩み寄ってくる。工房長は舌打ちすると、 工房長「半壊したブリッツがあっただろ。あれをバラして使いな。どうせ英雄も怪我してて乗れないんだ」 作業員「でも、規格が全然ちがいますよ〜」 工房長「かまうもんか。用は動きゃいいんだ。装甲も全部ひっぺがして使いな」 作業員「ふ〜。了解しました〜」 少女はふらふらしながら遠ざかっていく。 レグ「大変なようだな」 工房長「まあね。この町には元々たいした設備はないんだし、こう包囲されてちゃ補給もままならないし。・・・っとあんたの機体の話だったね」 レグ「どうなっている?」 工房長「奏甲そのものも大分ひどいけど、ダビング・システムがかなりいかれてるね。これじゃ無歌術起動時間は通常の半分以下だよ」 レグ「そうか。できる範囲でいい、修繕を頼む」 工房長「あいよ。・・・すまないね、あんたらは蟲退治に来たんじゃなく、ただ立ち寄っただけなのに・・・」 レグ「気にするな。ここで逃げたら、あいつに叱られる」 工房を出て、レグニスは町の病院へと向かった。病院は今、度重なる戦闘による負傷者であふれかえっており、治療の歌術を使える歌姫達を必要としていた。 ブラーマは病院の入り口に疲れきったように座り込んでいた。それでもレグニスに気付くと、疲労の残る顔に無理矢理笑顔を浮かべてみせた。 ブラ「・・・どうした? 顔色が悪いぞ」 レグ「それはお互い様だ」 両者とも、ここ数日ろくに眠っていない。レグニスは隣に腰を下ろした。 ブラ「・・・私達はこれから、どうなるのだろうな・・・」 レグ「さあな。生きるか、死ぬか。そのどちらかには違いないがな」 ブラ「・・・まったく、少しは気休めになることを言ってはくれないのか?」 レグ「気休めなど言ったところで、状況が改善されるわけでもない」 ブラ「それは確かにその通りだ。だが・・・」 不意に彼女は言葉を切ると、レグニスの肩にもたれかかった。 ブラ「たまには慰めてくれてもいいのではないか。さすがの私にも・・・くじけそうな時がある・・・」 レグ「・・・・・・」 レグニスは無言のまま、彼女の髪を撫でた。兵器とは思えぬ、優しい手つきで。 その時、町中に半鐘が鳴り響いた。寄り添う二人が、一瞬にして身を固くする。 それは蟲の出現を伝える、絶望的な音色だった。 続く。 シリーズ物に挑戦。あんまり長くなりすぎないようがんばりますんで。 それとこの話にクロスしたい人募集。この話、人が多いほど面白くなりそうなんで。 もちろんこの戦いを舞台にした、別の話を書いてくださってもかまいません。どんどん申し出てください。