激闘編 〜消耗〜 町中に響く半鐘の音。誰かの叫び声が蟲の襲来を告げる。 レグ「来たか・・・出撃する」 ブラ「わかった。行こう」 立ちあがるレグニスにあわせてブラーマも身を起こす。 レグ「・・・・・・」 不意にレグニスは振り返ると、彼女の肩に軽く手を置いた。 ブラ「・・・レグ?」 ブラーマがつぶやく。次の瞬間、レグニスの拳が彼女の鳩尾へと叩き込まれた。言葉を発する間も無く、ブラーマの体から力が抜ける。 レグ「お前は少し、休んでいろ」 レグニスはぐったりとしたブラーマの体を壁にもたれかける。 レグ「心配するな。サポート無しでもこの一戦ぐらい乗り切ってみせる。俺は奏甲ほどヤワじゃない」 そう言って、ブラーマの頬を撫でると、レグニスはその場を走り去っていった。 町の外。多数の蟲の死骸と、奏甲の残骸が討ち捨てられた、まさに修羅場とも言うべきそこは、戦場だった。 英雄「第三波、くるぞ!」 どこかの英雄の叫びにレグニスは舌打ちで応えると、目の前の蟲の死体から小剣を引き抜いた。 すでに刃こぼれは刀身全体に及んでおり、切断力は無きに等しい。もはや突くか殴るかするだけの鉄塊だ。 周囲を見回す。どの奏甲も、無事なものは一つもない。すべてが傷だらけであり、寄せ集めたパーツでそれを補っていた。動きも鈍い。 蟲の第三波が迫る。数はそれほど多くはないが、この傷ついた奏甲たちで退けられるか。 (しかしこの蟲の動き、どこかおかしい。衛兵種ばかりなのに妙に統率がとれている・・・) 思うに、どこかに蟲たちの指令塔がいるのだろう。そいつを見つけることが出来れば、この戦いにも活路が見出されるのだが・・・ (今は目の前の敵だ) 間近に迫る脅威へと意識を切り替えると、レグニスはぼろぼろの小剣で蟲へと斬りかかった。 刃は叩き潰すようにして蟲を砕く。だがその隙に数匹の蟲がシャルVへと飛びついてきた。 レグ「ぐっ・・・!」 引き剥がそうともがく。が、その時シャルVのパワーががくりと落ちた。そのままなすすべなく蟲に組み伏せられる。 レグ「ちっ、ダビング・システムが・・・」 ダビング・システムは本来歌姫が力尽きたときに奏甲の稼働時間を延長するためのものである。 レグニスはそれを歌姫を使わずに奏甲を動かすものとして使用していたのだ。 当然、本来とは異なる使用には無理が生じる。 レグ「もう時間切れか、確かにカタログの半分以下だな。だいぶガタがきているということか」 悪態をつきつつ、レグニスはほとんど言うことをきかない奏甲を無理矢理動かし、自分の機体の上にのしかかる蟲達を切り払った。 蟲の死骸を押しのけ、立ち上がろうとする。だが、もはや奏甲は全く反応しない。 レグ「・・・アウト、か。よくもったほうというべきか・・・」 ブラ『諦めるのか? お前らしくないな、レグ』 突如ケーブルを通して声が響く。それと同時に、奏甲が歌姫の歌をうけて力を取り戻していく。 レグ「ブラーマ・・・」 ブラ『まったく。ひどい奴だな、私を置いていったあげく、負けて諦めるとはな』 レグ「・・・俺は諦めたことなどない」 ブラ『わかっている。お前のことだ、奏甲を捨ててでも戦おうと思ったのだろう』 レグ「・・・・・・」 ブラ『図星か。やれやれ、世話の焼ける英雄だ。・・・さあ立て、まだ戦うのだろう? 私も付き合うぞ』 レグ「無論だ」 歌の力だけではない、何か不思議な力が湧き上がるのを感じつつ、レグニスは奏甲を立ち上がらせる。 その時だった、森の中から咆哮が響き、木々を割って巨体が飛び出してきた。 レグ「あれは・・・」 衛兵よりも明らかに大きい。だがその外観は貴族種とも異なっている。まさにそれは新種というべき蟲だった。 続く なかなかに大変な展開。あと一回ぐらいでなんとかおわるかな。とにかく、がんばります。