激走!愛憎馬車編 〜その2〜 走り続ける四頭だての大型の馬車。広いはずのその荷台が、なぜか今は狭く感じる。 ブラ「ふふふふ・・・」 笑うブラーマから発せられる、どす黒いオーラのようなプレッシャーが荷台の中の空間を圧迫しているのだ。 ベルティ「・・・・・・」 シュレット「・・・・・・」 桜花「・・・・・・」 みんながみんな、そのプレッシャーの前に無言になる。触るな危険。そんな雰囲気を女性陣は敏感に感じ取っていた。 レグ「・・・よし、終わったぞ」 そんな中、唯一プレッシャーをものともしない(と言うより気付いていない)レグニスが、桜花の足の治療を終え、顔を上げた。 それからふと、荷台の真ん中で笑っているブラーマに気がつく。 レグ「? どうしたブラーマ、なにを笑っている。愉快なことでもあったか」 ブラ「ああ、そうだな・・・腹の底から湧き上がるようにな・・・」 笑顔をまったく崩さず応えるブラーマ。プレッシャーが一層濃くなる。桜花が後ずさるようにしてレグニスから離れた。 レグ「そうか、まあいい」 ブラ「うむ、気にするな。別にお前には関係ないからな。はっはっは・・・」 ブラーマの渇いた笑いが荷台に響く。はっきり言って、怖い。 ベルティ「・・・やばい、かな」 シュレット「かも知れない」 もはや一触即発だ。笑い続けるブラーマの頭部に憤りが血管となって姿を現しはじめた。 (この際、盗賊でも何でもいいからこの状況をなんとかして・・・) ベルティが祈った、その時だった。 一機のケーファが脇の森から飛び出してきたのは。 盗賊「お前らだな、薬を運んでいるってのは! そいつをおとなしくよこしやがれ!」 叫びながら、ケーファは馬車を追いかけるように走ってくる。 シュレット「そうはいかないよ、っと!」 シュレットが叫び、手綱を振るう。馬車が一気に加速を始めた。 桜花「盗賊がこんな時に、こちらは奏甲がないというのに・・・」 レグ「問題はない、と言ったはずだ。ブラーマ」 ブラ「なんだ?」 レグ「直接攻撃のできる歌術は使えるか? それで奴らの装甲表面を破壊したのち、俺が爆薬で・・・」 ブラ「・・・知らん」 レグ「・・・ブラーマ?」 ブラ「知らんと言っている! そんなに歌ってほしければ桜花殿に歌ってもらえばよかろう!」 レグ「? 何をいってるんだ、お前は」 (こ、こじれてる・・・) 思わず顔が引きつるベルティ。レグニスは少し困ったような顔になると、ベルティへと視線を向けた。 ベルティ「わわ私も使えません!」 レグ「そうか、なら仕方ないな」 それだけ言うと、レグニスは追いかけてくるケーファへと向き直った。どこからか爆薬を取り出すと、頭部目がけて投げつける。 爆発 だが爆風は拡散し、ほとんど傷ついていない。 レグ「やはり直接は無理か、なら・・・」 レグニスはもう一つ爆薬を取り出すと、地面に転がすように放った。まるで示し合わせたかのように、ケーファがそれを踏みつける。 再び爆発 盗賊「おおおっ!?」 足元からの爆風に、盗賊のケーファは姿勢を崩して転倒する。 シュレット「わお、やるじゃん!」 レグ「このまま町まで突っ切れ!」 シュレット「了〜解・・・、って急カーブ!? みんなつかまって!」 馬車が急カーブを猛烈な勢いで走り抜ける。 つかまる暇のなかったベルティとブラーマは遠心力で荷物へと叩きつけられ、桜花は唯一微動だにしなかったレグニスに抱きとめられた。 桜花「あ・・・す、すいません」 レグ「気にするな」 桜花が慌てて身を離す。ぶちっと音を立ててブラーマの血管が巨大化した。ベルティの顔が青くなる。 盗賊「くそっ、てめぇらもうゆるさねえ!」 盗賊が叫び、追いすがってくる。その声に素早く向き直ったレグニスは、驚愕に目を見開いた。 レグ「マシンガンだと・・・」 続く レグニスよ、お前が悪い。すべてにおいてお前が悪い。