英雄:レグニス・ハンプホーン 17歳 研究所で肉体改造をうけた軍事用生体兵器 人嫌い 歌姫:ブラーマ 15歳 知的で一言多いが本質的にはやさしい その男は、手に持っていた資料を次々とめくっていた。資料に書かれているのは、英雄たちの情報だ。 ここ最近に活躍した英雄の名や、かかわった事件などが事細かに記されている。 ふと、資料をめくる手が止まった。 ??「こいつは・・・そうか、ここにいたのか・・・」 男は薄く笑みを浮かべる。その手にある資料には、『第16回絶対奏甲バトル優勝者:レグニス・ハンプホーン』と記されていた。 存在編 第1幕〜月光の対峙〜 とある町の夕暮れ時、レグニスとブラーマは商店街にてのんびりと買い物を楽しんでいた。 ブラ「・・・きれいな手鏡だな」 レグ「買いたければ買えばいいだろう」 ブラ「それは・・・そうだが、たまにはもう少し気の利いた言い方を・・・」 レグ「今までの仕事の報酬はすべてお前が管理しているだろう? 好きに使え」 いつもながらの言い方、デリカシーの欠片もない。ブラーマは小さくため息をつき、 ブラ「もういい、宿に戻るぞ」 レグ「買い物はこれで全部だな」 両腕一杯の荷物を掲げてみせた。 宿に着く。だがそのままフロントを通り過ぎようとした時、そこに座っていた女将が声をかけてきた。 女将「ちょっと待った、あんたたしか・・・レグニスって名前だったね?」 レグ「いかにも俺はレグニス・ハンプホーンだが」 女将「あんた宛てに手紙を預かってるんだよ」 レグ「俺に手紙だと・・・」 荷物を降ろし、女将から手紙を受け取る。 レグ「・・・名が無いな。女将、これはどうやってここに?」 女将「なんか昼ごろにフードをずっぽりとかぶった人が来てね、『これをレグニス・ハンプホーンという男に渡してくれ』って」 レグ「ふむ・・・」 不審な顔つきをしつつも、レグニスはナイフを使って封を開け、中身を取り出した。 しばらく黙読する。 レグ「・・・・・・っ!!!」 レグニスの顔色がはっきりと変わった。そのまま手紙をぐしゃりと握り潰す。 ブラ「レグ?」 ブラーマが恐る恐る声をかける。レグニスがここまで感情の色をだすことなど、今まで一度もなかったことだ。 しかしレグニスは応えようとはせず、手紙を机の上に叩きつけるように置くと、 レグ「出撃だ。奏甲の準備をしてくる」 ブラ「レ、レグ!」 そのまま宿から出て行ってしまった。 (いったいなんだというのだ・・・?) ブラーマの胸に湧き上がる不安。と、その目が机に叩きつけられたくしゃくしゃの手紙に留まる。 悪い事とは知りつつも、ブラーマはそれを手にとってみた。 ブラ「なになに・・・『レグニス・ハンプホーン殿 第16回絶対奏甲バトル優勝者である貴殿に勝負を申し込みたい。 日時は今夜、場所は町の北にある平原。得意の奏甲に乗って来られたし』・・・なんだ、ただの挑戦状か」 内心ほっとしつつも続きを読む。 ブラ「ん?・・・『追申 なお貴殿は必ず来なければならない。以下の言葉の意味がわかるならば』・・・こ、これは・・・?」 そこに記されていたのは名前だった。グリア、ナオキ、ルニル、ディブト、レグニス、リリス。 ずらずらと連なる名前。レグニスのそれも含まれている。奇妙なことに、レグニス以外の名前すべてに×印が付けられていた。 ブラ「いったい・・・これは何を意味しているのだ、レグ・・・」 胸に広がる不安の雲が、大きくなっていくのを彼女は感じていた。 レグ「ここか・・・」 指定された場所。すでに日は落ち、空には無数の星と二つの月が輝いている。 ??「あんたは、月は好きかい?」 待ち構えるように立っていた一機の奏甲・・・メンシュハイト・ノイから男の声が響く。レグニスは油断無く間合いの外で愛機シャルVを停止させた。 レグ「好きかどうかと訊かれれば、好きだな」 ??「そうかい。けっこうなことだ」 レグ「こちらからも質問がある。貴様は何者だ、なぜあの名前を知っていた?」 ??「教えてやってもいいぞ。おれに勝ったら・・・というのは少々酷だから、三分間生き残れたら教えてやろう。すべてな」 小馬鹿にしたような物言い。 レグニスは小剣を一本ずつ、両手に構える。 ブラ(レグ、気をつけろ。奴は得体が知れない) レグ「言われるまでも無い。・・・いくぞ」 一気に機体を前進させると、双剣でメンシュハイトに切りかかる。メンシュハイトは自身も剣を抜くと、 ??「スタートか、三分だぞ。それい〜ち、に〜、さ〜ん」 ふざけた口調でカウントを始める。レグニスは一片の容赦も無く連続で切りかかった。だが、 ??「にじゅ〜はち、にじゅ〜く。ほらほらどうした? もっとがんばれよ」 繰り出した斬撃はことごとくかわされ、受け流されていた。暗闇にかみ合う刃が火花を散らす。 レグ(なんだ、こいつは・・・) こちらの攻撃をすべて見切り、驚くべき速さで反応してくる。とても常人の動きとは思えない。 ??「ひゃくじゅ〜いち、ひゃくじゅ〜に、そろそろこっちからもいくぞ」 その言葉を皮切りに、メンシュハイトからの猛攻が始まった。剣が空を裂いてうなり、シャルVへと牙をむく。 襲い来る刃の雨にレグニスはあっという間に防戦一方となった。 ??「ひゃくななじゅうなな、ひゃくななじゅうはち、ひゃくななじゅうきゅうっ!!」 その瞬間斬撃がさらに鋭さを増し、シャルVのコクピットへと襲い掛かった。 ブラ(レグっ!!) レグ「!!!」 金属音 斬撃は、コクピットぎりぎりの位置で双剣に受け止められていた。メンシュハイトが間合いを離す。 ??「三分経過か。まあそんぐらいやってくれなきゃわざわざ来た意味がないしな・・・さて、何が聞きたい?」 レグ「貴様・・・何者だ」 レグニスは荒い息をつきながらたずねた。全身からはいやな汗が噴き出している。 レグ「その動き、反応速度、常人とは思えん・・・そしてなぜ『俺の昔の仲間』の名を知っている」 メンシュハイトはわずかに肩をすくめた。 ??「いいだろう、教えてやる。おれの名はブレッグ。ブレッグ・ロックホーン」 月明かりに、メンシュハイトの装甲が不気味に照りかえる。 ブレッグ「お前と同じ存在だ、ハンプホーン」 続く 新見さん 話がリンクするとかいっときながら、ほとんど繋がってません。でもこれから繋がるんで、どうか少々お待ちを。 ではこちらも次回予告 レグ「ロックホーン・・・こんなところで会うとはな」 ブラ「どういうことだ、奴は何者なんだ!?」 レグ「俺では・・・奴に勝てない」 ブラ「レグ、まさかお前まだ私に黙ってることが・・・」 レグ「次回 存在編 第2幕〜兵器の証明〜」 ブラ「できれば楽しみに待ってくれ!」