少年は、呆然とその光景を見つめていた。
　ー爆炎が舞い、大地をえぐり、そして・・・真っ赤に染める
目の前の事実を肯定するように、、
　ー戦場のそこらじゅうから、爆音と悲鳴が響く
爆煙と炎に呑まれた、、赤と黒の戦場を。
　ー目に前の渦巻く爆煙の中から、ナニかがこちらに吹き飛んでくるのが見えた。
まっすぐ、、、。、
　ーその大きなナニかは、地面をえぐりながら目に前に来て、そして止まった
ただ、まっすぐ、、
　ーソレは、、炎をまとう、こわれかけのきょじんだった
驚嘆の意を瞳に宿しながらも
　ー腕や片足が無く、爆炎をまとっていても。紛れもなく、ソレは人間の姿を模したものだった
ひたすらに、、。




その少年、ヴァーゼル・フィーレスは戦場まっただ中のだだっ広い荒野にいた。
目に前には炎上する巨人。

なおも、あたりから爆音は止め処なく響き続いている。

・・・ここはドコだ？・・俺は何でこんな所にいる？
確か、さっきまで自分の部屋にいて、、ちょっと気分転換をしようと思って、ドアノブをひねって外に出たはずだ・・・

・・・それから、、俺は。それから、、俺はどうしたんだ、、？・・・

手を頭にあてながら考える。
ふと、目に入ったのは燃えさかり倒れている巨人の下の赤いもの、、

・・・！？、、、・・・

生と死を意味する赤。
ソレは紛れもなく、赤き血の水たまりだった。

死のにおいが漂ってくる。

ー人間とは戦場では全くの無力ー
そんな言葉が頭をよぎる。
ヴァーゼルは今まで気づかなかった焦燥感に煽られて、とにかく視野を広めようと後ろに振り向こうとした、、

その瞬間。

目の前の巨人が爆発した。
世界が赤く一変し。
爆音が鼓膜に響くより先に、津波のように爆煙が迫ってくる。
ソレを俺は無表情に見つめ続けていた、、　

　ーとても長い一瞬だった。頭のどこかで終演のベルが鳴ったような気がしたー　　　　　

黒煙に包まれてゆく。
ヴァーゼルは爆煙に呑まれていった。


　　　　　

　　　　　　『長い夢の始まり　　　前編（ティアス編）』

、、、ドゴォォォン、、、

何処からか、爆音が空に響き渡った、、、。

「始まった、、か、、」

そう呟いたのは荒野に立つ、一人の少女。
音が響いたのを確認するように空を仰き、そして戦場と化した遠くの荒野をみわたす。

すると、遙か高い空から四機の翼を生やした紅き巨人、、おそらくフィアロート・シュワルベがマシンガンと思われる銃器を使って、
地上の数機の黒き巨人（プルプァ・ケーファ）を建物から遠ざかるように、旋回しながら威嚇を繰り返す。
見る見る地上が、舞い立つ黒煙もって戦火を帯びてゆく、、。

地上のケーファも負けじと、銃器を持った二，三機が空へと射撃を繰り返し続けている。

・・・この陽動に、この天候。吉と出るのか・・
「もしくは、、、凶の場合も、、」
その顔は天候が悪いことに悪い予感を覚えたのか、緊張と不安が混ざっていた。
肌寒い荒野の風が、少女のロングヘアを揺らす。

荒野からゆっくりと視点を変え、３０ｍ先にそびえる３つの建物を見上げる。
この建物は荒野の高い所に位置しており、まるで要塞。しかも、６機の絶対奏甲が警戒に当たっているとなればなおさらだ。
きっと、まだ建物の中には２，３機以上のの奏甲が待機しているだろう。

・・・陽動になってる彼らには悪いが、できるだけ建物内の警護は薄くなってほしいなと思う。
　建物の警護が薄くならないとなると、奏甲に乗れない私には分が悪い。だからなんとしも、引きつけてもらわないとっ・・

そう思った矢先、建物の裏方から応戦の為に銃器を持った一機のケーファと建物の中からも同じく一機のケーファがでてくる。
その二機は戦場と化した荒野を目指して駆けながらも銃口を、空に向けて引き金を絞った。

ズバババババァァ、、

弾幕が厚くなる。
敵のマシンガンの弾幕が一機のシュワルベを捉えた。片足に被弾して、膝からしたが吹き飛ぶ。
何とか耐えたが、片足が無くなったことによりバランスの制御に狂いが出て高度が下がってゆく。
落ち行くシュワルベは、バランスをとってその赤い体を空中で静止させる。

しかし、安堵と共にその奏甲を次なる被弾による衝撃が襲う。
結果的に高度を下げて、格好の餌食となってしまったからだ。
今度はマシンガンを持った片腕と片翼が大破し、とてもじゃないが落ちるのを食い止めることが出来なそうもない。

中の英雄は忌々しげに「俺も運がなかったな、、」と呟いた。

炎をまといながら、大破したシュワルベが地面に向かって斜めに落ちてゆく。地面を削るように滑って、静止。
そして爆発。

ドゴォォォォォン

はやくも一機削れて、リミットが近づき始める
きっとこれでは、かなりの死闘となるだろう。だが、少女はその戦場に背を向け、目の前の建物へと駆けてゆく。

ーなぜならこの作戦は私、、、、。
ティアス・ティアリアが陽動で警護の薄くなった建物を他数名で叩き、最近荒れている盗賊団の頭を抑えることによって成功とされるからー

ティアスは軽やかに、一番手前の建物の窓から内部に飛び込む。
薄暗い、、。
どうやら、古くは倉庫とされていたようだ。
瞬間目に入ったのは、警護に当たっていたと思われる二，三人の人影。いや、、盗賊。

・・多分、剣や銃を手にしているっ！！・・・

盗賊は一瞬ひるむが、ハッとしてそれぞれ武器を構えようとする。

ーきっと薄くなったと言っても、きっと武器を所持した二十数名の盗賊が居るだろうー

ティアスはひるんだ隙を見逃さず、両手を廻し、左右の腰に携えたソレを、体を旋回させながら抜き放つ、、！。
左手と右手でそれぞれ抜き放ったソレは、長剣。
双剣とも呼べる、二刀の長剣。

ーだが、問題はなかった。なぜなら、建物を制圧する者に望むべき技量は二つ。

戦闘は数ｍの間合いを一気に詰めて、接近戦となる。　　　

ーひとつは作戦か人数が少ないため、単独行動でも問題ないほど技量があること　　　

ティアスは右手の剣で、詰めた目の前の盗賊の剣をたたき落とし、ソレと共に左手の方で左側の盗賊の剣線を受け止める。
その反動を使って両手を広げるように旋回。
左右の盗賊の首筋に同時に峰を打って、もの凄い速さで気絶させる。

ーそして二つ目は、俊敏に建物を制圧するためのスピードだ。　　　

そして、倒れた二人が気絶するのを横目で確認しながら、
先を読むように、振り向きざまに銃を構えた残りのひとりへと右手の剣を投合する。
その剣は一直線に相手の手めがけて飛んでいき、狙いをそらして、結果的に男に手を離れて地面に転がる。

あまりの出来事に呆然とする盗賊を尻目に、ティアスはゆっくり近づいてにっこりと微笑むと。
あいた右手で、、、、、ドゴォ。

あまりの激痛に耐えられなくなって、無様に盗賊は地面に崩れてゆく。

ーそんな者には十、二十は関係ない。雑魚が少し増えたくらいじゃ何の問題もないのだ。

そのまま放った剣と左手の剣を腰の鞘に納めると、彼女は何事もなかったかのように鼻歌を交えながら建物の奥に進んでいった。


後書き〜
一番最初なので、、奏甲すら乗りません（泣。この次からは冒頭にキャラ紹介を載せます♪
さて、俺の技量でどこまでかけるか、、、。
ちなみに次回は、ゼル編でお送りします！よろしくー