書き始めに後書き♪

さて、やっと後半で悠然や柊さん達が出てくる訳なんですが、、なんとまだ続きます。
まだ書き終わりません(汗。
しかも、どんどん登場人物は増えていきます・・・だらだら(汗
次は『長い夢の始まり 後編(それぞれの終演へ?)』・・・うん。そんな感じです

主に奏甲中心になるかと思いますので、、では♪






ヒュウ・・ヒュォ・・・・、





空は暗雲が立ちこめ
雲薄い場所からは薄くも陽が漏れて、地上に光が差している。
そのため見渡す限りの荒野は辺り一帯が薄暗く
夜明け前のような風景。

しかし、荒野の奥だけは違く、異様だった。
赤々と点滅しているのだ。
それは天候による影響でもなく、天変地異が起きたというわけでもない―――
激しい閃光。
多分、命を奪う戦場の響きと光。

朱を塗りつぶすように、強い光が覆ってゆく




・・ヒュォォォォ・・・・・、

そんな遠く異様に赤い光景をふたりの英雄が静かに見つめていた―――

そのうちの英雄のひとり・・・
『村上 悠然』は座って静かに荒野の奥が赤く輝くのを見つめていた。
それもいつになく真剣な顔で手を強く握りしめながら――
なにかに苛ついているのか、力を込めすぎて拳は血が通わず真っ白になるほどだった。
「くそっ・・」
悠然は悔しそうに、ゆっくりと立ち上がりながら呟いく。
その言葉に対して
「まだ、、合図はないのか・・」
と付け加えるように言ったのは、悠然の隣に立っていたもうひとりの英雄・・・『柊 和十』だった。
その言葉に応えるように悠然は頷く。
「そうか。なにも問題がおこってないと良いのだが、、」
「はい。しかし、あの光は・・・・」
「ああ、あの赤い光か・・俺もあの光は気掛かりだ。どう思う?、悠然・・」

「俺は・・多分良い状況に動いては居ないと思います。むしろ悪く・・いえ、あくまで自分自身の直感なんですが・・」
「別に構わない。俺もあまり状況が良いとは考えていないからな・・」
和十は首を振って真っ直ぐ、そう答えた。
「え・・?じゃあ和十さんも・・・・」
「ああ・・多分な。あのフィアロート部隊・・・全滅する可能性も、もしかしたらあるやもしれん・・・」
「・・・・そうですね。覚悟しておかないと・・」
悠然は静かに地面を見つめながら呟く。
「まあ、そう卑屈になることもないだろう――
――俺たちは俺たちの役割をこなさなければならないのだからな」
それに答えながら和十は振り返り、後方の荒野に膝をつく三機の絶対奏甲・・プルプ・ケーファに向かって歩き出した。

それに習うように悠然も歩き出し始める。
前方を見ると・・前を歩く和十さんよりもっと前方の奏甲近くから二つの人影がこちらに近付いてくる。
低めの背に茶色いセミロングヘアー、、どうやらひとりは自分のパートナーの由宇羅(=リール)のようだ。
もうひとりは・・・たしか自分や和十さんと同じくこの予備部隊の英雄の歌姫で・・名前はリュン・・といったか。
背は信じられないほど低かったのを覚えている。
その二人が・・一体どうしたのだろう?
と悠然は思った。

そう考えているあいだに、由宇羅は小走りに悠然の前まで来て止まる。
「ッゥ・・ハァハァ・・ハア・・」
「おいおい、大丈夫か、、?」
「あ、はい。大丈夫です、ハアハ、、ア、それよりも悠然さんっ・・」
そんなことそっちのけで、由宇羅が言う。
「じ、じつはさっき、戦況報告の――、ったが来たんですけど」
「落ち付けって。ちょっとうまくきこえなかった・・・もう一度、言ってくれる?、」
「戦況報告のかたっ・・戦況報告の方が来たんですよ・・っ」と念入りに二回むくれたようにいうと由宇羅は話を続ける。

リュンの方はというと、ゆっくりと歩いて和十さんの前までいって、状況を冷静に説明している。
・・・む、、たいしたものだな。あんなに小さいのに・・・

悠然は由宇羅もああいうと所を見習って欲しいな、と思いつつ視点を戻す
「とにかく・・報告があったんです。・・・こちらの劣勢だ、そうです」
「えっ・・・そ、それは本当かっ!?」
「はい・・外側のフィアロート部隊が全滅に近い状態だそうです・・・悠然さん。だから・・・」
その言葉に、由宇羅の顔色を心配して前屈みになった姿勢を真っ直ぐ立てなおして
「ああ、もちろんっ。,,今すぐ助けに行こう!!」
とはっきりと悠然はいった。
それに対して嬉しそうに由宇羅はにっこりと嬉しそうに「はいっ」と頷く。

見れば、和十とリュンもそれと同じ思いを抱いているのか――同意するように頷いていた。

リュンはワンテンポ早く奏甲のちかくにいる自分の英雄――たしか、女性の方でリーリアさんっと言ったか―に向かって元気に走り出す。
少女の髪が――腰に達するほど長いロングヘア――が風に流がれるように揺れる。
和十さんは和十さんでパートナーのユリアナさんと(アジト強襲部隊に欠員がでたためそっちに参加しているらしく)互いに情報交換している・・っぽい
その証拠に頷いたその後。
振り返り、右手を頭に当てずっと無言で立ちつくしている(ちょっと怖い)。


さっきの夜明け前のような黄昏の空から段々と陽が落ちて青々と変化し、暗雲が流れるのが早くなっていく。
これは嵐の前触れ。
そしてこれから、俺たちは戦火の嵐の中へと出向く。

ヒュゥ・・  ヒュォォォッ


風が静かに、そして深く唸った。


*




風が吹く・・一条の風が吹き抜けてゆく―――

少女はガレキの上に立っていた・・・・空を見上げるように。

そっと風が彼女の髪を凪ぐ―――

少女の少し端のハネた黒のセミロングヘアーと小柄な背丈が、活発で元気な事を自然と連想させる。
そんな小柄で細々とした彼女の腰には不釣り合いな長剣が二刀、両脇に携えられていた。
それは特注の剣で刀身が細く、従来の長剣より少し短く軽量化されたもの。

つまり双剣として使うことを前提として造られた長剣――。
だが、いくら軽量化しているからといっても長剣を双剣として扱うのは至難の業だ。
剣裁きの問題や、戦闘条件上の問題の事もある。
それを抜いたとしても、この双剣が扱える人間、使おうとする人間はほんの僅かだろう。

その中のひとりといえる少女・・
ティアス・ティアリアは風の吹き抜けてくる方向に顔を向けて、真剣な表情で自分の周りに広がる状況を確認する。
吹き抜けていく風の先・・・つまり自分の後ろの床に昏倒している男達―
そして、吹き抜けてくる。
荒野へと大きく口を開いた目の前の空洞を――。

その空洞は高さが裕にかるく10数メートルを超していた。
建物自体のの壁が破壊され、貫通して中からにして荒野が見えている。
流れ弾でここまで壊れるのはまず無いだろう・・ということは、故意に誰かがしたことになる。
壊れた壁に面した部屋・・つまり今ティアスがいる場所は天井がなく吹き抜けで、広さも50m四方の非常に大きな部屋だった
多分、奏甲の格納庫かなにか。
しかし、今はこちらの陽動作戦によって敵奏甲は一機も残らず、すべて戦場と化した荒野へ赴いているはずだ。

・・・この部屋の広さと状況といい・・まさか・・予想外の奏甲がいるの・・?
    そうだとしても、この様子なら居たとしても一機。計画上は・・なんの問題もない・・・かな・・・、

そう考え、ティアスは顔をしかめる。
何故か胸騒ぎがする。
かなりの確率的で何の問題もないはずなのに―――。
そう、嫌な予感―――
そう考えたくない。

だけれど―――――  

「もしも、この奏甲が計画を揺るがすものだったとしたら、、、」

ティアスはそう小さく呟いて、
とにかく冷静になり心を落ち着かせようと、
そのまま目を閉じる
しかし―――
その瞬間。

・・・!!・・・この部屋に誰かが近づいてくる・・しかも、この威圧感っ・・・!・・・

それどころじゃなくなったティアスは目を見開き、
経験からくる咄嗟の判断で、この部屋のドアの奥から近付いてくる殺気に向かって身体の方向をを翻す
それと同時に左手は用意していたように鞘から引き抜た長剣を既に構え、
そして右手の方はというと首元のチョーカーに添える。
ガレキの上で直立姿勢を保つと、
ティアスはいきなり歌の冒頭を紡ぎ出した。

独特の唱法に基づいた「歌」をもってなされる“織歌(おりうた)”

その歌に答えるように首元のチョーカーが幻糸を帯びて光り出し――
宙の・・ティアスの周りの幻糸を自由に織り上げ――

そして奇跡を現出させる。 
・・・いけぇ・・風痕の波動よっ!・・・
その歌術は数秒の時間を持って成された。


それは蒼い衝撃波だった。
ティアスの周りから部屋のドアに向かって180度・・衝撃波が四散する。

ガガァガガガッ・・・ビキ!!

それは―――部屋の地面を剔るように切り裂き、ドアや壁を貫いて・・

ベキギギギッ・・ ゴォオン!!

繋がった向こうの部屋をも吹き飛ばした――


砂埃が舞い立ち・・視界が悪くなった部屋をティアスは見渡す
パラパラと細かいガレキも降ってくる。
衝撃波によって、この部屋と隣の部屋は既に半壊しているのだろう。
「あちゃーやりすぎちゃったかなー。いや・・でもきっと手加減できる相手じゃなかったよね・・」
ティアスが手を頭に当てて、余裕を見せるようにに呟く。
挑発とも取れるその言葉は、なんなく砂埃の中に溶けていった。


それでも、ティアスは集中力を高め、ゆっくりガレキの上を移動しながら攻撃を警戒する。
・・・ まだ、だよね。反撃は何処から来るかな・・延長戦は・・・まずいよねぇ ・・
内心、そう思いながら。


*

 

相手が何か言葉を喋った。
、、うまく聞こえなかったが挑発のようだ――
そして、ガレキを踏みしめる音――

これだけで十分――
狙いを定めて手に持った複数の鋭利な輪―チャクラム―を力の限り放った―――。


    バシュッ   

 バシュッ           バシュッ!

煙の中ををかき分けて無防備に立つ相手を、左右上下と複数のチャクラムが宙に弧を描き
――襲う。


ギャキンッ     キャンッ
               キンッ

チャクラムのはじかれる音――

高速で相手に向かいながら、その音を聞き取る。

叩き落とされても構わない、・・・どうせ効かないと分かっている――
隙をつくる布石でしかないのだからっ――

両手に携えた片刃のグレートソードを体を止めることによって旋回させ――
目の前に立っているだろう相手に向かって薙ぎ払った。



      


                『長い夢の始まり 後編その1(それぞれの戦場)』




旋律が旋律を喚び・・・その激しさを増していく――
     

    バシュッ   

なおも続く攻防――
 
バシュッ           バシュッ!

上下左右から、、得体の知れない物――ブーメランみたいな――が自分に向かって飛んでくる
どうやら挑発に乗ったようだ

――くっ・・くぅ・・・、

ギャキンッ     キャンッ
                 キンッ

どうにか、ティアスは左手の長剣で連続でたたき落す

――多分・・これは布石っ・・私に致命的一撃を与えるための・・・!
   なら、・・ここっ!!

すかさず、旋回して右手の方の長剣も引き抜き、刀身を横に倒して二つの長剣をクロスさせて防御に走る。

狙い通り、剣に強い衝撃が走る。受け止めることに成功したようだ――しかし
剣戟の重さの違いを考えることを欠いていた

長剣は剣戟に耐えられず、ティアスの右手を離れていった
    
    ザスッ         
      ―――そして、宙を描いて、後方の地面に突き刺さる

「これでゲームセットだ・・」
目の前の相手――少女のような声で――が言った。

その声に反応して(内心・・相手が女性と驚きながらも)
相手の顔を見ることなく残った左手の剣で
        
            ギャキンッ  ――再び相手の斬撃をはじく、、

そのまま、受けた反動でティアスは後方に、
                               、ザアァァァァー  
               
                                     バック宙を繰り返して距離を取る―― 
                                       

しかし、距離を詰めるような足音――はしてはこなかった。

その代わりに
「・・・む?」という素っ頓狂な声が上がった。
ティアスも距離を取ったあと、顔を上げて目の前の相手を見る
「・・え?・・・・・」
同じく素っ頓狂な声を上げて、答える

「って・・・ユリアナさん!?」「・・・・ってティアスさんじゃないか」

向かい合った少女達は互いにはハモるように言った。



「・・・・・・・・・・・ユリアナさんは確か、予備部隊の方にいたのでは?」
数秒間おいた後、ティアスは再び問いかけた。
その問いに対してユリアナはグレートソードをしまいながら答える。
「ああ・・アジト強襲部隊に欠員がでてな。こちらに配属された始末だ」
「そうだったのですか・・・。」
「元はといえば・・ティアス殿が・・・」
「とっ、とにかく、・・お互いに討ち死にしなくて良かったですね・・♪」
ティアスにしては珍しく、取り繕うように自分の言葉で流そうとする―――
「ああ、、そうだな」
―――しかも、難無く成功・・・
「それよりも今は――和十の・・いや、予備部隊の援護に回った方が良いようだ・・」
「どういうことですか・・・?」
ティアスは背を向けて振り返ると、
後方に刺さった剣を引き抜き自分の鞘に収めながら、ユリアナを見て言った。
「どうやら・・旗色が悪いらしい。劣勢だ・・」
「まさか・・あのアーヴェ達が・・!?」
自分でも表情が苦痛にゆがむのが分かった。
「うむ・・予備部隊の奏甲達はもう向かっているそうだ・・私も出向こうと思う」
そういってユリアナは身を翻し、
「和十のパートナーとして」と付け加えるように呟く。

そして、別れ際を惜しむように離れてゆく
「ティアス殿・・・貴方はこの場所にしばらく居た方が良いようだ・・」
「え・・・それは何故?」
「ふふふ・・単なる直感だ・・予知とでもいうか。では、良いことがあると願っているぞ?」
そう言い残して、ティアスの前から去っていった。

一方、ティアスは「いったい・・何だったのよ?・・」
呆気にとられてそれだけ呟くと、
遠ざかってゆく台風娘の姿が見えなくなるまで、ついつい見送ってしまった。




●次への序曲


戦場に一機の奏甲が降り立った

黒い奏甲・・・黒いマリーエングランツだった・・・、

それはマリーエングランツであってマリーエングランツではなかった。

なぜなら――その黒いマリーは異様な腕をしていたからだ。
本来何もない・・腕の装甲の上に銀色で長い管(銃身)を束ねたような物が両腕に取り付けられていた。
まさにガトリングのような形だった。
しかし、両腕会わせて合計12本の管の中には丸っこい弾など入っていなかった。
入っていたのは・・一言で言って大きな槍状の十数mの矢。
そう――奏甲をも軽く貫きそうな、強力な牙。

そんな凶悪な黒い悪魔はゆっくりと四肢を駆動させて、
体勢を低くしたあと、
もの凄い速さで駆けはじめる。
 
獲物を見つけたかの如く――
              マリーの瞳が深紅に光った――。


ゴロゴロ・・・ヒュウォォー

既に暗雲は空を覆い尽くし、太陽もしずんだ・・
ポツポツと大地に雨が降り注ぎ始める・・

――激しい冷たい嵐になりそうだった

戻る