「ザナウ」
「どうかした?」
ザナウはベッドの上でソードの呼び声に答える。
「明日、お前と俺で模擬戦をする」
「…………」
「早朝、町外れの平原で集合だ」
でわな、と片手を挙げながら部屋を出て行こうとする。
「…………って、ちょい待ち!」
ザナウは大声で呼び止める。
「……何だ?」
「今何て言った……?」
恐る恐る訊く。
「模擬戦をすると言った」
「俺怪我してるんですけど〜」
そう言いながら脇腹をさする。
「そうか、それは大変だな」
「そうそう、だから……」
「遅れるなよ」
また部屋を出て行こうとする。
「人の話は最後まで聞こうよ!!」
「……何だ? また錯乱か?」
「いたって正常だヨォ!?」
叫んだせいで脇腹が痛くなったようだ。
「じゃあな」
ザナウが脇腹を押さえている間に部屋の外に出る。
おいコラァ! 
との叫び声が聞こえてくるが、無視することにした。
 
そして翌朝。
『ちゃんと来たようだな』
ビリオーン・ブリッツTCの外部スピーカーから声が響く。
「そりゃ断る隙がまったくなかったからな」
無視、そのまま手に持っていた物をセフィーロ・フリューゲルの方に投げる。
セフィーは投げられた物を掴み、見る。
「木剣?」
投げられた物はブロードソードぐらいの長さの木の剣だった。
『ああ、模擬戦だからな、真剣はまずい』
「ソードさんは?」
ビリオーンは両手のマシンガンを掲げ
『俺はゴム弾を使う。本物じゃないと言っても衝撃はするから気をつけろ』
「はは、笑えねぇ……」
『当たり前だ、今から実戦感覚で戦ってもらう』
「!」
その言葉に体が一瞬強張る。
『お前の理想の壁は高く、そして険しい――誰一人失いたくないなら強くなれ』
沈黙。
静寂を破ったのはザナウの質問だった。
「一つ訊く」
自分でも分かるほど声が真剣になる。
『何だ?』
「本気か……?」
『ああ』
「わかった……なら俺も出来る限り全力で戦う」
ビリオーンは近くにあった奏甲の拳より少し小さい石を持つ。
『今からこの石を高く投げる』
ザナウは無言。
『石が地面に落ちた瞬間、戦闘開始だ』
「わかった」
ビリオーンは持っていた石を空高く放り投げ――
その広い大地に落ちた。
 
『ふっ!』
先に動いたのはビリオーンだった。
ビリオーンはまず右手のマシンガンを正確にコクピットに向けて撃つ。
同時にセフィーはホバリング・瞬間に左肩のブースターを吹かし右に飛ぶ。
放たれたゴム弾は大気を貫きながら先程までセフィーがいた位置を貫く。
(迷いがない……!)
ザナウは瞬間的に悟りながら、セフィーを全力加速で前へ飛ばす。
ビリオーンは今度は左のマシンガンでセフィーが通るであろう予測地点に撃ち込む。
『ちぃ!』
セフィーはそれを避けるために、急上昇する、が
読まれていたのか、銃身はすでに上へ向けられていた。
『くっ……!』
再度放たれる弾、ザナウはそれを《見る》。
(あの時の感覚を……!)
本来は高速で見ることの出来ない弾が、今のザナウには遅く感じていた。
だからといって、セフィーが速くなる訳ではない、だから
(避けられない物のみ……弾く!!)
セフィーは手に持った木剣を最低限の動きでゴム弾を弾く。
その瞬間、時間は正常に戻った。
セフィーの近くを何かが通った感じがする。
『なっ……!?』
ソードは驚愕の声を上げる。
『今だ!』
そのスキを狙ってセフィーはビリオーンに向かって全力で飛ぶ。
『っ!』
息を呑む声が聞こえる、予想外の事態に反応できなかったようだ。
ビリオーンは迎撃の為に両手のマシンガンを撃つ。
セフィーはそれを左肩のブースターを吹かすだけで回避、さらにビリオーンに接近し、
木剣を両手に握る。
『くっ……!』
当たらないからか、ビリオーンは撃つのをやめる。
『はぁぁぁぁぁぁ!!』
両手に握った木剣を一気に振り落とそうとして、
自分の中の何かが問いかけてきた。
 
パイロットハダイジョウブナノカ?
 
(!?)
動揺して振り落とすのが一瞬遅れる。
たった一瞬だった。
ビリオーンはセフィーの両手に左脚で回し蹴りを叩き込む。
『!? しまっ!!』
言い終わる前に足の裏からスパイクが射出される。
『ぐぁあ!』
セフィーの両手が木剣ごと撃ち砕かれる。
『ぐぅ……!』
両肩のブースターを吹かし急速後退、しかし
『逃がさん!』
ビリオーンの胸の両側からワイヤーが放たれ、セフィーに絡みつく。
『くっ!!』
さらに後退しようとする
『無駄だ』
両足のスパイクを地面に撃ち込み、その場から完全に動かなくなる。
ワイヤーから逃れようともがくが、外れる気配がない。
その間にビリオーンは右脇下からグレネードを伸ばし
『チェック・メイトだ』
その言葉と共にセフィーのコクピットに向けて発射した。
 
ザナウはとんでもない衝撃を感じた後、嫌な浮遊感を感じ
(完敗だ……)
その思考と共に地面に叩きつけられた。
 
薄れ行く意識の中、ザナウはソードの言葉を聞いた。
『お前の弱点は三つ。攻撃が単調な事、後先考えない事、そして――』
 
攻撃する瞬間躊躇いがあることだ……
 
そして意識が落ちた。
 
(ソードさん!)
ネリーの声が頭に響く。
「何だ」
(さっきの!)
「ああグレネードか。大丈夫だ、直撃する瞬間にワイヤーは外した」
(じゃなくて!)
「何なんだ……?」
(ザナウさん、怪我してたんですよ……?)
昨日の夜、脇腹を押さえていたのを思い出す。
「…………」
(…………)
「…ま、いいだろ」
(よくありません!)
 
目を開けると、そこには見慣れた風景があった。
(どこだっけ……?)
思い出そうとする。
(え〜っと、確かソードさんと模擬戦して…………!)
そこまで思い出して一気に目が覚める。
「はわぁ!?」
「きゃ!」
叫びと共に身を起こすと誰かの悲鳴が聞こえる。
隣を見るとビックリした表情で固まっている少女がいた。
「栞?」
「そうですよ……いきなり起きないでください」
栞は少し荒く息を吸う。
「ソードさんは?」
「別の宿にいます」
「そっか……」
ザナウはまた寝転がる。
「これ以上ないってくらいの完敗っぷりだったな」
そう言いながら苦笑する。
「悔しくないんですか?」
意外そうな顔をしながら訊いてくる。
「悔しいより、自分の力のなさを痛感してるよ」
(弱点……か)
ソードに言われたことを思い出す。
「そう簡単に直らんだろうなぁ……」
そう言った後に、ザナウはまた深い眠りに付いた。
 

あとがき〜
短! やるせな! ザナウ弱すぎ(泣)
がんばれザナウ! 負けるなザナウ! 明日はきっとグッデイさ!
 
そんな事はさて置き、本当に短い、戦闘も短い。
こんなんでいいのだろうか?

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