ミルム日記 その11
 
 今日はセレナさんに「お前は最近暇なくせに手伝わなすぎだ」と怒られたので、
お店の手伝いをしました。
お店には様々な人が来ます。
 
「おうザナウ、今日は珍しく店の手伝いか」
「好きでやってんじゃねぇよ、追い出されたくないからだ」
「追い出されるような事態になったのはお前のせいだろ? 甲斐性無し」
「な!? それ誰から聞いた!!」
「セレナさん」
セレナおばさんは口笛を吹きながら料理をしていました。
「はは、まぁ頑張れよ」
「う〜」
 
「ザナウ、ビームライフル作らんと思わんか?」
「無理」
「チェ、お前なら分かってくれると思ったのに……」
そう言いながら英雄さんは外へ出て行きました。
「いや、気持ちは痛いほど分かるがな……」
 
何故お兄ちゃん関係の人が多いのでしょうか?

ミルム日記 その12
 
 今日はお兄ちゃん達は依頼を片付けに行きました。
お兄ちゃん曰
「ミルムはまだ戦場につれて行けん」
だそうです……
なので今日は留守番と共にセレナおばさんの手伝いをしていました。
お兄ちゃん達の騒ぎを見ないとちょっと一日が寂しい気がします。
…………
お兄ちゃんは私を戦場に連れて行ってくれるのでしょうか?
そんな日は来ない、どうしてもそう思ってしまいます。
今日はもう他に書く事が無いのでここまでにします。
 
何故だか最後にお兄ちゃんが「すまん、明日はまともな物を書く努力はするんで許してくれ」 と言っていました。
何の事でしょう?

ミルム日記 その13
 
 とても怖い夢を見ました……
お兄ちゃんのせふぃーが大きな蟲を剣で刺した状態で止まっていました。
せふぃーは左腕がなくて、傷だらけで体でたくさんの蟲に囲まれていました。
(ここまでか……?)
お兄ちゃんから諦めの感情が感じられます。
(くそ……まだだ!)
それでも心のどこかで諦めているお兄ちゃんがいます。
(このまま止まっていたら……!)
――人を……町を守れない……
 
《ミルム!》
 
 私はとても大きな声で起こされました。
目を開けると不安げなお兄ちゃんとお姉ちゃんの顔がありました。
「どうした? うなされてたが……」
「汗もびっしょりですよ?」
「……ん〜ん、なんでもない」
お兄ちゃん達に気遣いさせないように、なるべく普通に答えました。
「そうか? ならいいが……」
お兄ちゃんの顔を見て、私は夢のことを思い出しました。
「お兄ちゃんは……死なないよね?」
「ん? ……それは分からないな、人は死ぬ時は死ぬ」
「うん……」
 
私が質問した時、お姉ちゃんはとても悲しげな表情をしていました……。

ミルム日記 その14
 
 私達が普段から使用するソファーがある部屋。
お兄ちゃんはそのソファーで寝ています。
寝苦しくないのでしょうか?
お兄ちゃんに訊いてみたいと思います。
「いや、慣れると気持ちよく眠れるもんよ?」
一言でした。
言葉では分からないので、実際に寝てみようと思います。
とりあえず許可を取ってみます。
「別にかまわんよ」
一言です。
「あ〜、条件」
?
「も(不適切な発言のため削除させてもらいます)」
そこまで子供じゃありません……恥ずかしいです。
とりあえず寝てみることにします。
……私じゃピッタリでした。
ソファーと掛け布団からはお兄ちゃんの匂いがします。
よく晴れた日に干した匂いです。
 
気がつけば夜になっていました。
「そんなよく眠れたか? まぁ、気持ちよく寝るためにかなりの努力を注いでるがな」
私にとってはとても眠りやすい環境でした。
あ、お姉ちゃんの布団が寝づらいと言う訳ではないですよ?

ミルム日記 その15
 
 今日も依頼が無いので、セレナさんの食堂での手伝いです。
お兄ちゃんは何故かテーブルを拭いているの途中で震えていました。
「何で奏甲乗りがこんな事やってんだ〜〜〜!!」
そのまま手に持っていた布巾を床に叩きつけました。
「依頼が無いから」
サク
「お金がないから」
サクサク
「そして何より宿泊代を払わないから、払ってれば客にそんな事はさせん」
ザク
「まぁなんだ、依頼が無いってことは最近は平和なんだろ、
 よかったな、ザナウ」
お兄ちゃんの震えがさらに強くなりました、
手を乗せているテーブルの上の調味料がガタガタ鳴っています。
「ア〜イラ〜ヴピ〜ス!!」
 
お兄ちゃんが壊れました

ミルム日記 その16
 
 今日も依頼はありません、お兄ちゃんは食堂の隅で変な歌を歌ってました。
 
依頼が無い(依頼が無い)
依頼が無い(依頼が無い)
ホントのこ〜とさ〜
 
皆がまだ寝ている朝に
そっとポストの中を見ると
とてもすご〜い〜物〜を〜
見たんだ!!
 
『ザナウ、毎日栞ちゃんといちゃいちゃしているお前が憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い肉い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎(以下略)憎い!!』
 
「わざわざポストに投函しなくていいよ!!」←ツッコミらしいです
 
仲間は皆笑いながら
『お前は謙虚だ』と言うけど
僕は絶対に〜絶対に〜
嘘なんて言ってない!
 
常識とゆ〜う〜眼(まなこ)で〜
分からな〜い〜世界を〜
忘れちゃ〜いけないよ〜
こんのぉ! 変態ロリコン野郎共がぁ!
 
「うるさいぞザナウ!!」
「こんな日常は嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
お兄ちゃんが壊れました。

ミルム日記 その17
 
 今日は久しぶりに休みをもらいました。
お兄ちゃんはさっそく熟睡していました。
 
「ねぇ、ミルムちゃん」
「?」
「ザナウさんとお姉ちゃん、どっちが好き?」
「ん〜……両方」
「え……いや、そうじゃなくって。どっちが一番好き?」
「お兄ちゃん」
「くっ……即答ですか……あの人の何がいいんでしょうねぇ」
「お兄ちゃん優しいよ?」
「あ〜、あの人子供には優しいからきっとロリ!?」
いつの間にかお兄ちゃんはソファーから起き上がり、お姉ちゃんの頬をつねってました。
「いひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! ひゃにひゅりゅんでひゅか!?」
(痛たたたたた!! 何するんですか!?)
「だ〜れ〜が〜ロリコンかぁ!!」
「ひょ、ひょんなこひょいっへまひぇんひょ!!」
(そ、そんな事言ってませんよ!!)
「い〜や聞いたぞ、言い掛けてたのをこの耳でばっちりと」
「いひゃい! いひゃいでひゅ! はにゃひへひゅだひゃい!!」
(痛い! 痛いです! 離してください!!)
「…………はぁ」
お兄ちゃんはため息を吐きながらお姉ちゃんの頬を離しました。
「これに懲りたらもう言わない事」
そう言って再びソファーに寝転がりました。
「ひどいです……ザナウさんは私の事を何だと思ってるんですか?」
「…………ぐぅ」
「もう寝てるし……」

ふぅ……っとため息を一つついてお姉ちゃんはお兄ちゃんをしばらく見つめていました。
何だか複雑です。

ミルム日記 その18
 
 今日はとても天気がよく、運動するのにはとても最適でした。なので
 
『機奏英雄(のみ)運動会 賞金100万G(山分け)』
 
競技場で何か始まってました。
 
「さ〜ザナウ君にはうちの溜まった宿泊代金を微量でも払っていただきま〜す」
「ふざけんな!! 何で俺が出なきゃいけないんだよ!!」
お兄ちゃんは半袖体操服、下はジャージで青いハチマキを付けていました。
「ザナウさん、頑張って賞金を手に入れてきてくださいね!
「お兄ちゃん頑張れ〜」
「ほれ、二人はもうやる気だ。頑張って来い」
「うぅ〜」
お兄ちゃんが青いハチマキを付けている集団に向かう途中で、
スピーカーから雑音がしてこんな事を言ってました。
『青軍代表のザナウさん、至急本部に来てください』
「何で俺が代表になってるんだよ!!」
「あ〜、代表が急病で出れなくなって困ってたからお前を推薦しといた」
「俺の意見は無いのかよ!?」
「無い」
「呪ってやる〜〜〜!!」
お兄ちゃんは叫びながら本部に走っていきました。
 
『宣誓〜我々〜青軍は〜スポーツマンシップに乗っ取って〜
 最後の最後まで正々堂々競技をやりきる事を誓いま〜す』
 
「何かやる気がない上に間違ってる気がします」
「ああ、微塵もやる気がないな」
 
体操は特に変なところは無かったので省略します。
 
『第一競技は徒競走です、出場選手は準備をしてください』
「なぁセレナさん……」
「何だ?」
「どうして俺……全部出場なの?」
「お前は普段から怠けてるからな、私が頼み込んだ」
「大きなお世話だ!!」
『ザナウさん、競技が始まりませんとっとと来てください』
「畜生!! こうなったら優勝してやる!!」
「お兄ちゃん頑張って〜!」
 
お兄ちゃんが位置に付きました。
お兄ちゃん以外は普段から体を動かしている人達なので、とても体格がいいです。
「位置に付いて、よーい……」
パァン!!
火薬鉄砲が音を鳴らした瞬間、皆さんが一歩踏み出しました。
ズパァン!!
「……え?」
先程の火薬鉄砲とは比べ物にならない音の爆発がお兄ちゃんの足元から放たれました。
しばらくすると爆発で舞い上がった砂埃が晴れました。
選手の方々は皆気絶していました、が
「げふ、げふ、なんじゃこりゃあ!?」
お兄ちゃんだけ普通に立ってました。
『え〜、言い忘れました。このコースには地雷が仕掛けてあります』
「何故に地雷が!?」
『大丈夫です、殺傷能力は無いです』
「そんな問題か!?」
「地雷って殺傷能力を無くせるものなのか?」
「私に訊かないでくださいよ……」
 
『第二競技は障害物競走です』
「わ〜い、何か普通のコースに見えて絶対なんか仕掛けてる〜」
 
『第三競技は玉入れです』
「あ〜、まともそ〜……ってピンポン球がかよ!?」
『風に流されないように気をつけてください』
「いや! それ以前の問題だろ!?」
 
他にもいろいろありました。
何故か銃弾が飛び交っていたり、
所々で爆発が起こったりと、別の意味で戦場を見た気がします。
 
『え〜、最終競技はバトンリレーですが。選手がザナウさん以外気絶しているので、
 優勝は青軍!! もといザナウさん!!』
「よっしゃあ!!」
『賞金は競技場の修復に使うので無しです』
「おいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「何であいつあんなぴんぴんしてるんだ?」
「だから私に訊かないでください……」
 
この町は何かに飢えてるのでしょうか?

ミルム日記 その19
 
 今日はお兄ちゃんは昨日のダメージで動けませんでした。
 
「あ〜、結局なんだったんだろうな。昨日の」
「私は昨日のが何だったかより、あなたの体がどうなってるか気になりますね……」
その言葉が言い終わった瞬間、お兄ちゃんが自分を抱くように腕を組みました。
「私の体が目当てなのね!?」
「え? あ、違います!! それにそれ立場上逆ですし!!」
「拝啓、現世のお母様お父様。ザナウは大人への階段を一歩踏み出せられます……」
「私の話を聞いてください!!」
 
やっぱり二人は仲が良い……のでしょうか?

ミルム日記 その20
 
 今日はお兄ちゃん達と夜に神経衰弱をやりました。
 
「う〜んと……」
「ザナウさん、早くしてください」
「ちょっと待て……ん〜これだ!」
「はい違います。確かこれとこれが合いますね」
「うげ!」
「あとこれとこれ」
「後は……これとこれ。っと違いました」
「それじゃ私だね。これとこれが合って、それとこれも合って。他には……」
「…………」
 
結局お兄ちゃんは十戦中一度も勝てませんでした。
もうちょっと頑張って欲しいです。

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